スマホ料金は「ポイ活」と「中容量強化」が進み、通信品質の重要性も増す――2024年のモバイル業界を振り返る:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
2024年は官製値下げの影響も一段落し、各キャリアともメインブランドでは金融・決済連携が進んだ1年だった。キャリアによっては、サブブランドやオンライン専用ブランドで獲得したユーザーがメインブランドへ上昇する動きも顕在化し始めている。こうした料金プランはデータ容量が無制限に設定されていることもあり、通信品質が以前にも増して注目される1年になった。
増え続けるトラフィックを支える5G、ネットワーク品質の重要性はさらに高まる
一方で、楽天モバイルが伸びた前提には、エリア拡大が進んだ上に「通信品質が相当改善して、ご満足いただけるところまできている」(同)ことも大きい。無制限のデータ容量を快適に使えることもあり、同社にはヘビーユーザーが集まる傾向がある。11月に開催された決算説明会では、平均データ使用量が30GBにまで拡大していることが明かされた。こうしたトラフィックを支えるため、同社は5Gのエリアを拡大。衛星の地上局との干渉条件緩和を受け、関東の5Gエリアは11月時点で1月の2.1倍まで広がった。
もっとも、データ使用量が伸びているのは楽天モバイルだけではなく、4キャリアの共通項。先に挙げたahamoのデータ容量拡大も、背景にはトラフィックの増加があった。また、各社の決済連動料金プランは、ahamoポイ活を除くといずれもデータ容量は無制限のため、ユーザーのデータ量が増加しやすい。2024年は、その競争が過熱した1年でもあった。
中でもネットワーク品質の強化に前のめりだったのが、KDDIだ。同社も、衛星通信事業者との干渉条件が緩和されたことで、5GのSub6の出力を増加。より遠くまで電波が飛ぶよう、アンテナの角度を浅くしたことも相まって、関東でのエリアは2.8倍にまで拡大した。KDDIは、5Gに割り当てられたSub6の周波数帯が合計200MHz幅と多く、その帯域幅はドコモと並ぶ。干渉条件緩和を見越して3万8000以上の基地局を建てた結果、スループットが大きく拡大した。この改善を受け、同社はOpensignalの「一貫した品質」部門で10月に1位を獲得している。
この「一貫した品質」に強かったのは、比較的エリアの広い700MHz帯や1.7GHz帯の転用と、帯域幅の広い3.4GHz帯を組み合わせて使っていたソフトバンクだ。宮川氏は能登半島地震による3G停波の延期でネットワーク構成の変更に遅れが出ており、それがOpensignalの調査結果に波及したと語っている。一方でソフトバンクに5G用として割り当てられたSub6は、3.7GHz帯の100MHz幅のみ。12月に4.9GHz帯も追加されたものの、その基地局数はKDDIに及んでいない。12月末までのチューニングでどこまで巻き返せるかは、2025年に持ち越された課題といえそうだ。
2社とも4Gからの周波数転用でエリアを作った後、3.4GHz帯の転用やSub6でキャパシティーを稼いだことが功を奏し、高いネットワーク品質を実現できたが、逆の方針を取っていたドコモはその改善に苦戦している。前田氏が社長に就任した記者会見でも、取り組むべきテーマとしてネットワーク品質の向上を真っ先に挙げていたほどだ。
一方でドコモも「品質対策に設備投資や通常のコストもだいぶ振り向けている」(前田氏)としており、4Gからの転用とSub6の拡大を同時に進めていく。また、ネットワーク改善に必要なアプリからのデータ取得や、決済サービスを担当する部門との連携も強化しているという。ユーザーのデータ使用量が増加し、5G SAの本格展開も控える中、ネットワーク品質の重要性は以前にも増して高まっている。キャリア選びの指標にもなりうるため、2025年以降も各社のつばぜり合いは続いていきそうだ。
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