KDDI高橋社長、「大規模通信障害が最も印象に残った」 苦難を乗り越え、ネットワーク品質評価へ
2025年2月5日、KDDIが決算会見直後に社長交代を発表した。その発表の中で、高橋誠社長が社長就任から7年後の現在に至るまでを振り返る場面があった。「長時間の通信障害がやっぱり一番印象に残っている」という。
2025年2月5日、KDDIが決算会見直後に社長交代を発表した。現在CDO(最高デジタル責任者)を務める松田浩路常務が、4月1日付で社長に昇格する。高橋誠社長は、代表権のある会長に退く。社長交代は7年ぶりとなる。
その発表の中で、高橋氏が社長就任から7年後の現在に至るまでを振り返る場面があった。高橋氏はまず「7年間、本当にあっという間だった。いろんなことがありすぎた。本当にこんないろんなことが起こるんだな、と思った」と話した。
「僕が社長になったとき(2018年)の北海道胆振地方地震に始まり、去年(2024年)の能登半島まで、本当に災害が多かったし、コロナもあった。いろんなことを経験してきたなと思う」と続ける。
高橋氏は、最も印象に残る出来事に「長時間の通信障害」を挙げた。「長時間の通信障害がやっぱり一番印象に残っている。それは本当に皆さんにご迷惑かけて申し訳なかった」と高橋氏。
KDDIの大規模通信障害では、2022年7月2日未明の発生から約86時間が経過した4日目の7月5日15時36分に完全復旧宣言が出された。
大規模通信障害の原因は、VoLTE交換機と加入者データベースの負荷の高まりにあった。復旧に必要な作業は、7月3日17時30分までに完了したものの、VoLTE交換機と加入者データベースの負荷が想定よりも下がらず、音声通話がつながりづらい状況が続いた。発生から復旧までの間、緊急通報が行えなかったケースもあった。
それから約1年後の2023年6月30日、KDDIは「安全大会」を開催。大規模通信障害を未然に防止するための意識啓発や、安全に関する情報、知識共有を目的に、高橋氏をはじめ、社内および関連会社の約3200人が参加した。
通信障害が社会に与える影響の大きさを改めて認識するとともに、再発防止に向けた改善取り組みの共有、それに最高のネットワーク品質を目指すことを誓ったという。あわせて、この1年で以下の内容を共有し、通信障害の再発防止を徹底するとの考えを明らかにしていた。
- 早期の被疑箇所特定や、復旧に必要な手順の準備など
- ユーザーに対して、正確な情報を速やかに伝える
- 設備監視強化のためのツールや、それに関する人財の育成
- 通信障害の再発防止を目的としたネットワーク品質の強化
高橋氏によると、「そこから技術陣と一緒になり、ネットワークとして一番になりたい」という思いが芽生えたそうだ。
それからさらに約1年3カ月後の2024年10月16日、KDDIは英Opensignalによる日本のモバイル通信品質の調査レポートで高い評価を得た。全18部門のうち13部門で1位を獲得。国内MNOではKDDIが最多受賞となった。
「やっと去年(2024年)、Opensignal(の調査)で一番が取れたところまで、技術陣が頑張ってくれたのは、僕としても非常に嬉しかったなと思う」(高橋氏)
KDDIは2024年7月23日、東京・多摩市にある通信ネットワークの設備を報道陣に公開。この設備では、通信ネットワークの状況を巨大モニターで監視したり、通信障害が起きた際に対応したりする。いわばKDDIの通信サービスを24時間365日守る場所だ
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「災害時に携帯つながる」目指し、NTTやKDDIら8社が訓練 移動基地局車の稼働に向け、給油拠点を共用
国内の通信事業者8社は2025年1月28日、神奈川県平塚市で給油拠点の共同利用訓練を実施した。実施したのは日本電信電話、東日本電信電話、西日本電信電話、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルだ。移動基地局車が被災地へ出向いた際に、燃料不足で移動できなくなったり、電波を発射できなくなったりするのを防ぐ。
携帯4キャリア8社、災害時の協力体制を強化 首都直下地震や南海トラフ地震への備えも視野に
NTTドコモやNTT東西を含むNTTグループ5社と、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの国内通信事業者8社は12月18日、大規模災害時におけるネットワークの早期復旧に向けた新たな協力体制を発表した。
4キャリア8社が災害時に“呉越同舟”の協定 25年度末の事業者間ローミングはどうなる?
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯電話キャリア4社とドコモ以外のNTTグループ4社が、大規模災害発生時の協力体制を強化することを発表した。具体的には、各社が持つアセット(資産)を共同利用することを定める他、能登半島地震で効果を発揮した船上基地局の活用も推進していく。これと並行する形で、緊急時には事業者間ローミングを実施する検討も進んでいる。
ドコモとKDDIが「船上基地局」を運用 能登半島地震を受け、海上から通信を復旧
NTTドコモとKDDIは能登半島地震に伴い、船舶上に携帯電話基地局の設備を設置する「船上基地局」を共同で運用する。両社が1月6日、発表した。具体的には、NTTドコモグループのNTTワールドエンジニアリングマリンが運用する船舶「きずな」に、ドコモとKDDIの携帯電話基地局の設備が設置される。
KDDIは通信障害をどのように検知してインフラを守っているのか ネットワークセンターに潜入
KDDIは7月23日、東京・多摩市にある通信ネットワークの設備を公開した。名称は「多摩第5ネットワークセンター(多摩第5NC)」で、常にネットワークを監視・運用する。当日、説明されたことをまとめてお伝えする。


