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「通信が安いだけの国でいいのか?」「PayPayはまだ『一合目』」 ソフトバンク宮川社長が語る好調と不安(2/3 ページ)

ソフトバンクが2月10日、2024年度第3四半期決算を発表した。増収増益で好調に見える宮川潤一社長は「世界で一番強かった通信が、ただ安いだけの国になってしまった」と述べ、値下げ継続による投資抑制への強い危機感を示した。

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金融事業はPayPayに寄せることでさらなる成長を目指す

 PayPayを主軸とするファイナンス(金融)事業では、連結売上高1837億円(前年同期比+18%)を達成。GMV(決済取扱高)は11.3兆円(+23%)と大幅成長を継続し、連結EBITDA(利息/税金支払いと各種償却前の利益)は353億円で2年連続の黒字を達成。営業利益も四半期ベースで3期連続黒字となり、黒字定着が鮮明だ。

ソフトバンク決算
PayPayの累計GMVは前年同期比で23%増となった

 宮川社長は「PayPayはまだ『一合目』で、これからさらに登っていく余地がある」と表現する。PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)PayPay証券を2025年4月付けでPayPayの直接子会社化するなど、グループの金融サービスをPayPay傘下に集約していく方針だ。

 「(金融サービスについて)『複雑な資本構成や複数ブランドが混在していて分かりづらい』と、投資家の皆様に言われていた。PayPayに集約することで決済と金融サービスをシームレスに強化し、さらなる成長を目指す」(宮川社長)

ソフトバンク決算
ソフトバンクグループの金融領域はPayPayに集約される

 宮川社長はPayPayについて「IPO(株式の新規上場)は考えているが、まだ“改造”する余地がある。PayPayは決済に関して相当いいポジションにいるが、これは『1階建て』の部分だけ。『2階建て』『3階建て』の部分をしっかり作ってから次のステージに行きたい」と説明。「競合他社との比較ではなく、PayPay自身がまだ登りかけた山の一合目くらいの気分。山頂まで色々な知恵を使って、PayPayがやりたいことを全て完成させた上で親離れをしてもらいたい」と展望を示した。

自律型AI「Cristal」をソフトバンクはどう扱うか?

 ソフトバンクといえば、2月3日に親会社であるソフトバンクグループ(SBG)と共同で米OpenAIと提携することを発表した。合弁企業「SB OpenAI Japan」を設立し、次世代AIソリューション「Cristal(クリスタル)」の日本企業向け独占販売権を得る。SB OpenAI JapanはソフトバンクはSBGと共同で設立する中間持株会社とOpenAIで折半出資となる。

ソフトバンク決算
ソフトバンクグループとソフトバンクはOpenAIと合弁企業を設立し、「Cristal」を開発する

 OpenAIのソリューションに対して、SBGは年間30億ドル(約4500億円)を支払う契約となっているのだが、子会社であるソフトバンクは「Pay for Use(従量制)」負担となっている。その理由について宮川社長は「収益が上がる構造と紐付いた支払い(方法)となり、得るものはあっても失うものはない契約を目指した」と説明する。OpenAIへの支払いは一旦SBGの子会社が受け取り、グループ会社における改造/開発費として流れる仕組みだという。

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SBGは4500億円の開発費を負担することになるが、子会社のソフトバンクは利用した分だけ負担する仕組みとなっている

 宮川社長は、AIの発展段階について自動運転車のレベルに例えて説明する。「『ChatGPT(レベル2)』や『Copilot(レベル3)』までは人間の助手だが、Cristalはレベル4の自律型AIだ。その後、レベル5まで進化していく」と説明。「ハンドルのない完全自動運転車のように、企業のシステムの自動化を実現する」と期待を示した。

 「当社が先陣を切ってCristalを導入し、企業変革の成果を示していく。かつてiPhoneを全社員に持たせ、社内のペーパーレス化やデジタル化を進めた経験を活かし、まずは自社が“モルモット”となる」(宮川社長)

 展開にあたっては約1000人規模の体制を構築。自社とグループ300社から人材を集め、各企業担当者とエンジニア/営業のペアで導入を進める。OpenAIの技術者が1700〜1800人規模と限られているため、まずは大企業から順次展開し、その後中小企業や自治体への導入も視野に入れるとのことだ。

 なお、SB OpenAI Japanは半年以内の設立を目指すという。

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