「Nothing Phone (3a)」の実力検証 予想外に使えたAI機能、処理能力やカメラも進化した“本気”のデバイスだ:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
4月15日に発売された「Nothing Phone (3a)」は、Qualcommのチップを採用して処理能力を底上げしただけでなく、カメラ機能を強化。AIを活用した新機能の「Essential Space」や、それをワンプッシュで呼び出せる「Essential Key」も搭載する。発売に先立ち、Nothing Phone (3a)を試用できたので、その実力や投入の狙いを解説する。
処理能力が上がりカメラも進化、ついに本気を出し始めたNothing
Essential SpaceのようなAI機能は、プロセッサに「Snapdragon 7s Gen 3」を採用したことで実現したもの。他にも、Nothing Phone (3a)では、オンデバイスAIをドロワーの自動ジャンル分けや、撮影などに使用しているという。他社のAIのように文章や画像を自動で生成する派手さはないが、AIによってスマホの基本的な機能を進化させている点が面白い。「テクノロジーを再び楽しくすること」(Nothing Japan マネージングディレクター 黒住吉郎氏)を掲げているNothingらしいAIの使い方といえる。
カメラも、Nothing Phone (3a)で強化された機能の1つだ。センサーに機械学習を取り入れた他、Snapdragon 7s Gen 3を搭載したことで、ISP(Image Signal Processor)も刷新されており、8枚のRAWフレームを1枚に合成して明暗差の大きな場所でも白飛びや黒つぶれをなくす「ウルトラHDR」に対応する。仕上がりは、ウルトラHDRも効いているのか、かなりパキッとした絵になる印象。夜景にも強く、明るい写真に仕上がる。
スペック的により分かりやすいのは、2倍の望遠カメラを搭載していることだ。望遠カメラの画素数は5000万画素と高く、ピクセルビニングでピクセルピッチを拡大できるため、やや暗い場所でもキレイに撮れる。また、ピクセルビニングを解除した5000万画素から切り出すことで、劣化の少ない4倍ズームが可能。デジタルズームとの組み合わせで、最大30倍まで被写体に寄れる。
さすがに30倍まで拡大してしまうと、ぼんやりとした写真になってしまい、あまり実用的ではないが、8倍程度であれば劣化も少ない。望遠カメラを搭載することで、撮影の幅が広がった格好だ。以前のモデルから搭載されている機能ではあるが、背面のLEDを点灯させ、手元の被写体を照らすことができる機能もNothing Phoneらしい。また、あらかじめ設定したプリセットを簡単に呼び出すことができる。このUIもしゃれた仕上がりになっており、利便性とも両立している。
もちろん、背面が光って通知などを知らせる「Glyph Interface」はそのまま。着信などが分かりやすいだけでなく、タイマーにも使える。これを設定しておけば、画面を下にして置いておき、何かお知らせがあったときだけスマホを手に取ることが可能だ。進捗(しんちょく)状況が分かるアプリが、日本だとUberぐらいしかないのが残念だが、Nothing Phoneシリーズとしての個性は健在だ。
また、Nothing Phone (2a)で対応したおサイフケータイにも、引き続き対応しており、モバイルSuicaやiD、QUICPayなどを利用できて便利だ。FeliCaチップを搭載しているため、マイナンバーの「スマホ用電子証明書」に対応する要件も満たしている。現状では、デジタル庁の対応機種リストにNothing Phone (3a)の名前は挙がっていないが、先代の2aでは利用できる。検証が終了すれば、これも利用できるようになる可能性は高い。
機能のバランスがよく、独自のAI機能も面白いNothing Phone (3a)だが、128GBを5万4800円に抑えてきた点は高く評価できる。Nothing Phone (2a)までを「日本でのソフトローンチ」(黒住氏)と定義してきたNothingだが、裏を返すと、3aからが日本での“本気”といえる。楽天モバイルを通じた販売に乗り出したのも、そのためだ。グローバルで順調に規模を拡大する中、日本でも同社がより幅広いユーザーに訴求するフェーズに入りつつあることがうかがえる。
(製品協力:Nothing Japan)
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