povo2.0の「トッピング多すぎる問題」はAIで解決、サブ回線でも価値に磨きを――濱田達弥新社長に聞く(4/4 ページ)
povo2.0を運営するKDDI Digital Life(KDL)の新社長として濱田達弥氏を迎えた。2025年4月からpovoは濱田氏がかじ取りをしており、「povo AI」やペイディでの分割払いへの対応など、矢継ぎ早にサービスをアップデートしてきた。AIの活用法やパートナー戦略についてお話を聞いた。
eSIMはウェアラブル端末とも相性がいい
―― 訪日外国人観光客向けのサービスも始めました。
濱田氏 インバウンドでお越しになられている方向けのサービスをやっています。1つが「Osaka eSIM」、その次が「Japan SIM」です。Osaka eSIMは大阪観光局と一緒に進めたもので、Japan SIMはローソンで販売しています。最近では、オンラインでの販売も開始しました。同時に、JR東日本さんとのコラボで、彼らが持つSuicaアプリの中に導線を作っていただき、購入できるようにしています。
Suicaアプリのダウンロードは外国でもできますが、Suicaそのものの販売は国内でないとできない。ダウンロードして日本にトラベルで来る方は、かなりの確率でSuicaを使います。ところが、空港だとWi-Fiの影響もあってなかなかダウンロードできない。その際に、Japan SIMを使っていただければSuicaのダウンロードができます。
欧州ではクレジットカードのタッチが主流になっていますが、鉄道系と組む日本のビジネスモデルは、アジア圏に売れやすいと思っています。そういったモデルをどんどん立ち上げていければいいと考えています。
―― 最後に、eSIMについて教えてください。iPhoneの発売イベントで4人に3人がeSIMで申し込むというお話がありましたが、この比率は相当高いと思います。将来性をどのように見ていますか。
濱田氏 物理SIMをご利用の方は一定数いるのでそのままご提供はしますが、eSIMはもっと増えると思っています。例えば、eSIMだと、ウェアラブルに直接回線を入れるようなこともできます。最近、Metaさんがグラスを発表され、今後モバイルがいらなくなるのではとおっしゃっていましたが、そういったものにもeSIMは入れられます。通信機器に代わるとなると、汎用(はんよう)性が高いし、可能性も高い。そういったときには、月額固定の料金ではなく、バリアブルなタイプのパッケージがフィットするんじゃないでしょうか。たまに使うウェアラブルやゲームはpovoでとなればいいと思っています。
取材を終えて:サブ回線として磨きをかけていく方向性が面白い
非常にパワフルなKDLの新社長。インタビューの内容も多岐にわたったが、その筋は1本しっかり通っていた。コンシューマー向けのpovoは、AIを活用することでよりトッピングの多様性を増せる方向性にしていくという方針のようだ。唐突に導入され、狙いがはっきり分からなかったpovo AIだが、最適なトッピングの選択が可能なコンシェルジュを意図していたことがうかがえる。確かに、こうしたAIの使い方はpovoのサービスにもフィットする。
無理なメイン化は狙わず、サブ回線として磨きをかけていくという方向性も面白い。だからこそ、より販路を広げて、外部企業とのコラボを増やしているというわけだ。ここまでサブ回線に振り切ったサービスは今までなかっただけに、特筆したい動きといえる。一方で、収益の安定性は月額料金を取っている通常のキャリアには劣る。そのバランスをどう取っていくのか、濱田社長の手腕に注目したい。
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