「古いiPhoneでLINE使えなくなる」ポスターに批判殺到 掲示元の「ノジマ」に意図を聞いた
家電量販店ノジマの一部店舗で掲示されたポスターが、利用者の誤解を招くとして批判を受けている。問題の文言は「一部機種でLINEが使えなくなります」というもの。実際には即時に使えなくなるわけではなかった。
家電量販店の「ノジマ」が一部店舗で掲示したポスターが、利用者の誤解を招くとして批判を集めている。問題となったのは、「一部機種でLINEが使えなくなります」という文言だ。実際には、OSやアプリを最新の状態にすれば引き続き利用できるにもかかわらず、あたかもLINEが即座に利用不可になるような印象を与えていた。
本誌(ITmedia Mobile)が関東圏内店舗の販売員に確認したところ、次のような回答を得られた。
── これ、どういう意味ですか?
ノジマ店舗販売員 2025年11月上旬から一部機種でLINEが使えなくなります。このままアップデートをしないまま放置しておくと使えなくなる、という意味です。
── ポスターの文言だけでは誤解を生みませんか?
ノジマ店舗販売員 はい。誤解を招く表現です。お客さまから問い合わせがあれば、詳しくご説明します。
── なぜこのようなポスターを掲示しているのですか?
ノジマ店舗販売員 古い機種をお使いのお客さまの目にこのポスターが触れることで、LINEをきっかけに新しい機種へ買い換えていただくためです。
── さらに下には「トーク閲覧」「バックアップ」「アカウント引き継ぎ」の文字が並んでいますが、これはどういう内容ですか?
ノジマ店舗販売員 サポートをご希望のお客さまに対して、有料でサポートを実施しております。価格は内容によって異なります。
2025年11月18日20時11分追記
ノジマ広報は、ポスター「2025年11月上旬から一部機種でLINEが使えなくなります」について、一部店舗での掲載であると回答した。全店舗にポスターは共有しているが、掲示の有無は各店舗に任せており、現在はブラックフライデーセールの装飾が優先されているため、ほとんどの店舗では展開していないという認識であるという。
また、アップデートを行えばLINEが使用可能な機種があるにもかかわらず「一部機種でLINEが使えなくなります」と記載した理由については、アップデートを行わない場合に使用できなくなることを示す意図で掲載したと説明した。しかし分かりにくい表現であったため、景品表示法を踏まえ「上記機種でお使いのLINEを継続して利用するには、OSのバージョンアップ(iOS 15以上)が必要です」という文言を10月上旬より追記したとしている。
ポスター掲示の意図については、「お客さまの困りごとをサポートするために作成した」と回答。ポスターの文言のみでは誤解を招く可能性があることについては、「店頭の案内表示(POP)が一部誤解を招く表現となり、お客さまに不安や不快な思いを与えたことを深くお詫びする」と謝罪した。
「トーク閲覧」「バックアップ」「アカウント引き継ぎ」の一部有料サービスの具体的な料金については、「設定価格が流動的であるため、詳しくは店頭で問い合わせるよう案内している」と説明した。
誤解を生むポスターの掲示意図は?
LINEは公式サイトで「2025年11月4日をもちまして、スマートフォン版LINEアプリ バージョン13.20.0以下のサポートを終了しました。端末のOSやアプリを最新の状態にすることで、今後もご利用いただけます」と案内している。つまり、サポート終了は旧バージョンのアプリに限られるもので、端末やOSを更新すれば引き続き利用できる。
しかし、ノジマのポスターで「一部機種」として挙げられたiPhone 8(2017年)、iPhone X(2017年)、iPhone XR(2018年)、iPhone 11(2019年)、iPhone 12(2020年)は、いずれもiOS 15以降に対応しており、LINEの利用に支障はない。アップデートを怠った場合にのみ使えなくなる可能性があるが、その点を明記せず「使えなくなります」と断言した表現は明らかに不正確だ。
(※)機種名語尾のカッコ内は発売年
Appleの公式サイトによれば、iPhone 8(2017年)、iPhone X(2017年)、iPhone XR(2018年)、iPhone 11(2019年)、iPhone 12(2020年)は、いずれもiOS 15以降に対応している。iOS 15のサイトはすでに通常の手順では閲覧できないが、Internet Archiveが管理しているWebサイトのアーカイブを閲覧可能な「Wayback Machine」を利用して確認できる(出典:Apple)
このような掲示が行われた意図には、買い替え促進を目的とする販売戦略があると思われる。販売員の説明によれば、古いスマートフォン利用者に「LINEが使えなくなる」と注意喚起することで、機種変更を後押しする狙いがあるという。だが、その文言は事実を省略し、消費者に誤った印象を与える危険性が高い。
ノジマの店舗に掲示されたポスター。「一部機種でLINEが使えなくなります」という内容が明記されている。アップデートを怠った場合にのみ使えなくなる可能性があるが、その点を明記せず「使えなくなります」と断言した表現は明らかに不正確だ
ネット上では「大丈夫か?」「ひどい」などと批判殺到
SNS上ではこのポスターに対して批判が相次いでいる。「ノジマ、大丈夫か」「掲載内容がかなり間違えている」「システムを扱っている立場からすると、この宣伝はひどい」「これは悪質だ。OSのバージョンを上げれば使える機種ばかりを挙げて錯誤を誘っている」「景品表示法に抵触するのではないか」
実際、ポスター上部では「使えなくなります」と断定的に記載している一方、下部には「使えなくなる可能性があります」と小さく補足しており、矛盾を指摘する声もある。こうした表現手法は、消費者の不安を煽り購買行動を促す「誤認商法」として非難されるケースも少なくない。
景品表示法の観点からも問題視の可能性
消費者庁によると、「誤解を与える」表示は景品表示法が禁じる「不当表示」に該当する恐れがある。景品表示法では、事業者が商品やサービスの取引に関して、一般消費者に誤認されるおそれのある表示を行ってはならないと定めている。これは、優良誤認表示や有利誤認表示に限らず、あらゆる誤解を誘う表現が対象となる。
今回のケースが実際に違反と判断されるかは今後の対応次第だが、販売現場でこうした誤解を招く広告が放置されていること自体、問題といえる。ノジマ側がどのような社内指導を行うかは明らかになっていないが、今後は販売現場の誤情報が消費者の信頼を損なうことのないよう、正確な説明と透明性のある販促が求められる。
消費者庁によると、「誤解を与える」表示は景品表示法で禁じられた「不当表示」に該当する恐れがある。事業者は商品やサービスの取引で、消費者に誤認されるおそれのある表示をしてはならないとされ、優良誤認や有利誤認に限らず、あらゆる誤解を誘う表現が対象となる。今回のケースが違反にあたるかは今後の対応次第だが、誤解を招く広告が販売現場に放置されていること自体が問題といえる。今後は正確な説明と透明性ある販促が求められる(出典:消費者庁)
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