なぜ今、小型スマホなのか? 5.3型「Mode1 Pocket」誕生の舞台裏 あえて本体を厚く、5G非対応にしたワケ(1/2 ページ)
P-UP Worldが11月11日、独自ブランドの新型スマホ「Mode1 Pocket」を発売した。全国のテルル等で販売され、主流とは一線を画すコンセプトで注目を集める。商品開発を担当した梅澤俊之氏への取材を通じ、異彩を放つ本機が誕生した背景と開発への執念に近いこだわりをひもとく。
モーターバイク事業のMoto-UPや、全国に展開する携帯電話販売店テルルを運営するP-UP World(ピーアップワールド)が、11月11日に自社オリジナルブランドの新型スマートフォン「Mode1 Pocket」を発売した。価格は6GB/128GBモデルが3万5200円、8GB/256GBモデルが3万8280円となっている。
この端末は、全国のテルル店舗や家電量販店で販売されており、近年のスマートフォン市場における主流とは一線を画すコンセプトで注目を集めている。本稿では、商品開発を担当した梅澤俊之氏へのインタビューを通じて、この異彩を放つ端末が誕生した背景と、そこに込められた“執念に近いこだわり”を解明していく。
5.3型のTFT液晶を搭載したコンパクトなボディーが特徴。あえて厚みを持たせることで、手の大小に関わらず落としにくいホールド感を実現している。4G特化による電池持ちのよさや、ストラップホール、イヤフォンジャックの搭載など、実用性に徹した設計だ
開発コンセプトと市場背景 大型化するスマートフォンへの疑問
現在のスマートフォン市場を見渡すと、画面の大型化と高機能化が止まる気配を見せない。しかし、その進化の代償として端末は大きく重くなり、片手での操作は困難を極めるようになった。梅澤氏は、こうした状況を「年々重たくなり、もはや道具としての軽快さが失われている」と危惧する。
ユーザーが進化を実感できるのはGoogleレンズや翻訳機能といった一部のソフトウェア面に限定されており、ハードウェアとしての進化は停滞しているのではないかという強い危機感が、Mode1 Pocketの開発の原動力となった。
グローバル市場における標準サイズは今や6型から6.5型であり、供給される部材もこのサイズに最適化されている。そのため、5型クラスの液晶や筐体部材を調達しようとすると、かえってコストが跳ね上がるという逆転現象が起きる。それでも同社があえてこのサイズに挑んだのは、大手メーカーが効率重視で切り捨ててきた「小さくて持ちやすい端末」を求める切実な声に応えるためだ。Mode1 Pocketは、単なる小型版ではなく、大型化に疲弊したユーザーに対する1つの回答として設計された。
「小型化」と「操作性」へのこだわり 10.8mmの厚みが持つ意味
Mode1 Pocketの筐体設計において、最も議論を呼ぶのは約10.8mmという厚みだろう。スマホの薄型化がトレンドとなりつつある中で、この数値は時代に逆行しているように見える。しかし、ここにはユーザー検証に基づく合理的な理由がある。開発段階で4歳から60代までの人に試作機を持たせたところ、薄すぎる筐体は指の引っ掛かりがなく、かえって落としやすくなることが分かった。
試行錯誤の末に行き着いたのが、1cmを超えるこの厚みだ。手の小さな子供から大きな手を持つ成人男性まで、誰が持っても手のひらの中で「引っ掛かり」を感じ、安定して保持できる形状を目指した。梅澤氏は、多くのユーザーがiPhone等にケースを装着して使用している点に着目した。ケースを装着したiPhoneの幅と厚みを計測し、Mode1 Pocketの素の状態のサイズをそれに近づけることで、ケースなしでもラフに、かつ確実に操作できるグリップ感を実現した。これは「じわじわと手に馴染む」感覚を重視した結果であり、カタログスペック上の薄さよりも安心感を優先した。
また、過去モデルのユーザーからのフィードバックに基づき、ディスプレイのアスペクト比を変更。「iPhone 13 mini」に近い比率になったという。梅澤氏によると、こうしたサイズが支持され、iPhone 13 miniや12 mini、iPhone SEから乗り換えているユーザーもいるという。
スペックと機能のバランス あえて4Gと旧プロセッサを選んだ理由
内部構造においても、数値上の最高性能を追求するのではなく、実用的な安定性を最優先している。プロセッサにはMediaTekの「Helio G99」を採用した。より新しいG100などの選択肢もあったが、タブレット等で豊富な採用実績があり、エンジニアがその特性や制御方法を完全に把握しているG99を選ぶことで、動作の安定性を担保した。日常的なSNS利用やブラウジング、動画視聴において、処理能力不足によるストレスを感じさせない最適解としての判断だ。
通信方式を4Gに特化した点も大きな決断だった。5Gの試作機も制作したが、最大の課題となったのがバッテリーの持続時間だ。5.3型という限られたサイズでは、搭載できるバッテリー容量は2900mAhが限界に近い。この容量で消費電力の大きい5G通信を常用すれば、バッテリーの消費は早くなる。5Gエリアでも実効速度が上がらない「パケ詰まり」が起きている状況を鑑み、通信の安定性とバッテリー持ちをてんびんにかけた結果、あえて4Gに特化することでモバイル端末としての信頼性を高めた。
実際のバッテリー持続時間を確認したところ、「バッテリー使用量」の項目には1週間の推移が表示されており、約1週間使い続けてもバッテリーが維持されていることが分かった。ただし、持続時間は使用状況によって異なるため、あくまで目安として捉えておきたい
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