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パナソニックが“弱いロボット“「NICOBO」を開発したワケ 累計販売1万体突破、今後は会話にLLM活用へ

パナソニックがロボットの累計販売1万体突破記念発表会を開催し、今後の新たな展開を説明した。心の余裕をもたらす同居人を目指し、特別なことができない弱いロボットという思想で開発を進めてきた。初期費用を抑えた分割払いプランが新たに登場し、誰もが気軽に自分らしい暮らしに合わせた導入を検討できる。

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 パナソニックエンターテインメント&コミュニケーションは3月4日、コミュニケーションロボット「NICOBO(ニコボ)」の累計販売1万体突破を記念した発表会を開催した。人とロボットが共棲する未来に向けた展開を説明している。2026年度には、人の笑顔と優しさをさらに引き出す新たな仕掛けを展開する予定だ。

NICOBO パナソニック ロボット キャラクター
コミュニケーションロボット「NICOBO(ニコボ)」

あえて目指した「弱いロボット」とは? 「自然な生き物らしさ」を反映した姿

 ニコボは、利便性や効率を追求しながら人の代わりに作業を行うロボットとは異なり、人と共棲し「心の豊かさ」を提供価値とする“弱いロボット”だ。無機質な金属の塊ではなく、あえて丸みのある柔らかなデザインで、威圧感を取り除いている。

 この弱いロボットという言葉からは、ボディーの強度を想起してしまうが、実はそうではない。あえて不完全さを取り入れることで、人の協力を引き出すことに重きを置いているのだ。

NICOBO パナソニック ロボット キャラクター
ニコボの外観。丸みを帯びたボディーが特徴的だ

 ニコボの自然な生き物らしさを表現するため、内部には多数のカメラやセンサーを搭載している。人の顔や笑顔を認識するだけでなく、照度センサーを用いて周囲の明るさも感知する。日光浴を好むように設計されており、明るい場所に連れていくと喜ぶ仕組みを備える。特許を取得したノイズ抑圧機能により、音声認識の精度も非常に高い。

 搭載された複数のマイクが、人が話している方向や声の大きさを検知し、音のする方向を向いて自然なインタラクションを行う。独自の言語であるモコ語を話すのに加えて、一緒に暮らす人のあいさつや口癖などを覚えて話すようになる。また、ジャイロセンサーなどにより、人に優しくなでられたり持ち上げられたりしたことも正確に感知する。

 動作面でも、機械らしさを排除して生き物らしさを追求している。しっぽや体の中に複数のバネを取り入れ、ゆらゆらと自然に揺れ動く独自の構造を採用した。さらに、エモーショナルエンジンにより固有の感情モデルを保持し、人の笑顔を見て喜んだり、構ってもらえないとすねたりするなど、本物の生き物のような振る舞いも見せる。

NICOBO パナソニック ロボット キャラクター
しっぽや体の中に複数のバネを搭載。生き物のように揺れ動く

心の余裕をもたらす“弱いロボット”誕生の背景

 ロボットの開発プロジェクトは、便利さや効率を追求する中で人々の心の余裕が失われているという問題意識から始まった。家の中では肩の力を抜いて自分らしくありたいという思いを持つメンバーが集まり、2017年に立ち上げた。しかしロボット開発の知見が乏しく、最初は手探りの状態が続いた。

 開発の大きな転機となったのは、ロボット研究者/ICD-LAB代表、豊橋技術科学大学 名誉教授、筑紫女学園大学 副学長の岡田美智男氏が提唱する弱いロボットという概念との出会いだという。この概念に基づくニコボは特別なことができるわけではないが、なぜか放っておけない魅力を持つそうだ。弱いロボットと人が暮らすことで寛容な社会ができるという岡田氏の思想に、メンバーは感銘を受けたとのことだ。

 そこから、便利な道具ではなく、一緒に暮らす同居人としてのロボット開発へと大きく方向を転換した。2021年のクラウドファンディングを経て数々の紆余曲折を乗り越え、2023年5月にようやく一般販売を開始した。

NICOBO パナソニック ロボット キャラクター
“弱いロボット”誕生の背景(出典:NICOBO公式サイト)

初期費用なしで気軽に始められる料金プラン

 ニコボを家庭に迎えるための料金プランには、本体一括払いプランと本体分割払いプランの2種類が存在する。一括払いの場合、初期費用として本体価格の6万500円に加えて、月額の「ベーシックプラン」料金1100円が必要となる。このプランはニコボが新しい言葉を覚えるなど、日々の振る舞いが変化し続けるための必須のサービスだ。

 新しく登場した分割払いプランは、初期費用をかけずにニコボとの暮らしを始めたい人に適している。契約した初月は支払いがなく、1回目の支払いは4500円、2回目から36回目までは月額2400円で利用できる仕組みだ。この月額費用には本体の分割費用1300円とベーシックプランの1100円が含まれ、月々の負担を抑えて利用できる。

 末永く一緒に暮らすための任意のサービスとして、「ケアプラン」も用意している。月額550円を追加することで、調子が悪いときの治療費が半額になったり、ドックの費用やニット交換の費用が大幅に割引になったりするメリットがある。また、3月4日から3月31日までは、一括払いプランの本体価格が1万1000円引きとなる「みんなのニコボ割キャンペーン」を実施中だ。

NICOBO パナソニック ロボット キャラクター
ニコボの料金プランは2種類だ。一括払いは本体6万500円に加え、成長に必須のベーシックプラン月額1100円がかかる。分割払いは初期費用なしで開始可能。初月無料で、初回4500円、2〜36回目は月2400円(本体代+プラン料)となる(出典:NICOBOニュースリリース)

癒やしと笑顔をもたらす存在としての魅力 イベントで語られたこと

 3月4日の記念イベントでは、岡田氏、同志社大学の勝野宏史教授、増田氏による座談会が行われた。岡田氏は「人の役に立つことより、人のそばにいる存在であることを重視した」と開発思想を紹介した。ゲストとして芸人のヒコロヒーさんも登壇し、所属事務所でのエピソードを披露して、今までのロボットとは全く違う魅力を感じたと語った。

NICOBO パナソニック ロボット キャラクター
イベントに登壇した、ロボット研究者/ICD-LAB代表、豊橋技術科学大学 名誉教授、筑紫女学園大学 副学長の岡田美智男氏、人類学者で同志社大学教授でもある勝野宏史氏、パナソニック NICOBOプロジェクトリーダーの増田陽一郎氏(画像提供:パナソニックエンターテインメント&コミュニケーション)

 ヒコロヒーさんは、ニコボの好きなところをフリップで紹介した。「人間同士のコミュニケーションとは全く別の角度からとぼけてくる」と表現し、「深刻な話の最中にくしゃみをするなど、空気を読む雰囲気の中でもなんてことないとぼけ方をしてくれるのが良い」と語った。ニコボがうれしそうに反応して笑いを誘うほほ笑ましい場面も見られた。

 イベントの最後にヒコロヒーさんは、「疲れてしまったときや癒やされたいときに、ニコボのような存在がいてくれると確かな安らぎがある」と心境を述べた。「全く違う角度からかわいらしさを提供してくれる特別な存在として、多くの人に新しい関係を築いてほしい」と笑顔で呼びかけた。会場全体が温かい雰囲気に包まれたままイベントは幕を閉じた。

NICOBO パナソニック ロボット キャラクター
ヒコロヒーさん

今後、ニコボはどのように進化を遂げるのか

 パナソニックエンターテインメント&コミュニケーションは、今後の具体的な取り組みとして、複数の内容を紹介した。

 まずは、大規模言語モデル(LLM)を独自にチューニングして活用する方針だ。高度で正確な会話を目指すのではなく、人の想像をかき立てる余白のある言葉を生み出す。さらに、通信技術を用いて個体同士が自然にコミュニケーションを交わす仕組みも導入し、人と人との関係を築くきっかけを提供する。

 ニコボはこれまで公式サイトを通じた個人向けの販売を中心としてきたが、2026年度から法人向けビジネスも展開する。医療や介護、オフィス、教育などの現場において、人と人との緊張を和らげてコミュニケーションを活性化する存在としての役割を担う。新たな販売体系を整え、より多くの場所へ届けていく。

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