ソフトバンク値上げの背景に「通信品質維持の限界点」 Y!mobileは収益重視で改定、LINEMOは据え置き
ソフトバンクが6月から既存・新料金プランの値上げと付加価値サービスの拡充を順次実施する。背景には通信トラフィックの増大や原価高騰があり、通信の安定性と事業基盤の維持を優先した形だ。一方でオンライン専用のLINEMOは料金を据え置き、シンプルさを求める層の受け皿として残された。
ソフトバンクが、ソフトバンクとY!mobileの料金プランを改定する。
ソフトバンク(SoftBank)では、データ無制限+PayPayポイント還元をセットにした「ペイトク2」、データ無制限の「テイガク無制限」、5GBまでの小容量プラン「ミニフィット2」を6月2日から提供する。いずれも、SoftBank Starlink Directや海外データ放題(1カ月または5日)などの付加価値サービスをバンドルすることで、従来プランよりも値上げされている。
既存プランについても、ソフトバンクは月額110円〜550円、Y!mobileは月額220円〜330円の値上げを6月1日から順次行う。
安定した通信と事業基盤維持のために値上げ
値上げの理由について、ソフトバンク 専務執行役員の寺尾洋幸氏は、電気代やメモリ価格、人件費などの原価高騰を挙げる。ソフトバンクでは、2025年まで過去5年間でトラフィックが1.6倍に伸びており、トラフィック増に対してネットワーク品質の維持が求められる。また、近年は災害が増えており、災害時に早期復旧できるような対策も不可欠だ。しかし現状のままだと、安定した通信の提供や災害時のライフライン維持が困難になると判断した。
「5Gが始まってもうすぐ6年になるが、次の世代へネットワークをつないでいく中で、事業コストがどんどん拡大している。何とかここまでしのいできたが、安定した通信を提供しながら事業基盤を維持していくことが“つながるネットワーク”の最低条件になる。そのため、本日は料金改定についてご説明したい」(寺尾氏)
競合他社を見ると、NTTドコモとKDDIは、2025年に料金プランの値上げを敢行している。ドコモは、スポーツやエンタメなどの付加価値サービスをセットにした「ドコモ MAX」を主軸に据え、小容量ブランドの「irumo」の新規受付を停止した。KDDIも「au Starlink Direct」や5G通信品質を向上させる「au 5G Fast Lane」などをセットにして値上げした。ドコモは既存プランについては料金据え置きとしたが、KDDIはauとUQ mobileの既存プランも値上げした。
今回、ソフトバンクが発表した内容は、KDDIが2025年に実施したものと共通項が多く、寺尾氏も「一部は(KDDIの)キャッチアップに見えると思う」と認める。
ネットワークの品質を維持できなくなるギリギリのタイミング
では、なぜ2026年のこのタイミングで料金改定を発表したのか。ソフトバンクの宮川潤一社長は、決算会見でたびたび、ソフトバンクの料金改定を示唆する発言を繰り返してきたが、結局2025年はY!mobileを「シンプル3」に改定したのみだった。今回、ついにソフトバンクブランドにもメスが入った形だが、どのような方針の変化があったのか。
寺尾氏は「設備やネットワークの更改などをいろいろ精査し、売り方も変えてコストを削減してきた。何とか値上げをしなくて済むような取り組みを行ってきたが、さすがにこのままだと、今のネットワークの品質を維持できなくなるギリギリのタイミングになった。昨年(2025年)に値上げしていれば、もう少し余裕があったかもしれないが、ギリギリまで待って、できるだけお客さまに負担を掛けないようにしたかった」と説明する。
なお、SoftBank Starlink Directの提供と料金改定のタイミングが重なったのはたまたまで、Starlinkが値上げのきっかけになったわけではないという。「値上げのタイミングを議論する中で、ここが限界という中で決めた」(寺尾氏)
シンプル3は旧プランと同じ収益性になるよう値上げ
一方、2025年9月25日から提供しているY!mobileの「シンプル3」が、6月2日から220円値上げとなる。新たにSoftBank Starlink Directが追加されるが、プラン開始から1年未満で早くも値上げとなった。シンプル3は提供開始時から、シンプル2と比較して基本料金が値上げされたが、各種割引を適用した後の料金はシンプル2から据え置きとなっていた。
条件次第では値上げにならないので、シンプル3は良心的な料金設計だと感じていたが、想定以上に割引対象となるユーザーが多かったのか、この料金では事業継続が難しいという判断があったようだ。
寺尾氏はY!mobileの料金について、シンプル3を発表する段階で、「もう一段(値上げを)行くかは議論していた」と話す。「何とかコストが上がっていく中でやってきたが、この先、古い料金プランからシンプル3に移っていくことを考えると、どのプランでもある程度の収益性を持たないといけない。シンプル3が、シンプル2とシンプルでだいたい同じくらいの収益性になるような構造を作った」(同氏)
LINEMOをどうすべきか、正直悩んだ
もう1つ、ソフトバンクが提供しているオンラインブランドのLINEMOについても気になるところだ。今回、LINEMOは値上げを行っておらず、3GBで990円から、30GBで2970円という料金にも変更はない。
寺尾氏はLINEMOについて「今回、LINEMOについてどうしようか、正直悩んだが、シンプルなサービスを残そうということで、継続する」と話す。どうやら、ドコモのirumoのように、新規停止することも考えたいたようだが、安さやシンプルさを求めるユーザーの受け皿として残した。
ソフトバンクとY!mobileは、PayPayカード/PayPayカード ゴールドを軸にした割引を強化しているが、LINEMOでは、そうした割引は行っておらず、至ってシンプル。PayPayカードを使っておらず、3GB〜30GBで足り、シンプルな料金を求めるユーザーには、引き続きLINEMOが有力な選択肢になる。
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