News | 2002年8月26日 09:17 PM 更新 |
最近、「静かなコト」が、PCの“売り”になっているようだ。
高クロック化や小型・軽量化が進む最近のPCだが、これらの“ホットなトピックス”の代償としてきょう体内部がどんどん“熱く”なっている。Intel製CPUの熱設計電力(TDP)は上昇する一方なのに、部屋(きょう体)の中はどんどん狭くなっているからだ。
“真夏の満員電車状態”となっているPCのきょう体を冷やすのに、安価でしかも確実なのが「空冷ファン」を使って放熱することだ。現在のPC冷却システムは、ほとんどがファンによる空冷方式を採用している。しかし、ファンは風とともに、あのブーンという耳障りな騒音(風切り音)も生み出してしまう。
以前、VIAの省電力プラットフォーム「Eden」を使った静音PCの組み立て記事を掲載した。この中で、PCの動作音を図書館並みにするためにしたことは、騒音の元凶である空冷ファンをできるだけ排除することだった。つまり、PCの構成部品で、最も大きな騒音源が空冷ファンなのだ。
日立製作所が先日発売した話題の水冷PCは、自作PCユーザーがクロックアップの際に行うような“熱対策の手段”というよりも、むしろ“静音化”のために水冷システムを取り入れている(水冷PCについては、別記事1、2、3を参照)。
また、今年5月に発売したNECの企業向けPC「Mate」の液晶一体型モデルは、発熱量の少ないTransmetaのCrusoeを採用することでCPUをファンレスにし、電源ユニットのACアダプタ化、流体軸受けHDDの採用などで「木の葉が触れ合う音程度」(同社)という約20デシベルの騒音レベルにまで静音化した。
音量 | 環境基準による音のめやす |
20デシベル | 木の葉が触れ合う音 |
30デシベル | 人のささやき声 |
40デシベル | 図書館の音 |
60デシベル | 乗用車・普通の会話 |
70デシベル | 電話のベル・騒々しい事務所 |
80デシベル | 地下鉄の車内 |
そのほか、吸気スリットやCPUヒートシンクの形状改善、低騒音型HDDの採用などでノイズを28デシベル以下に抑えたコンパックのデスクトップPC「Evo Desktop D500 USシリーズ」や、SFF(Small Form Factor)向けの「低消費電力版Athlon XP」を採用することでファンを小型化した日立製作所の「FLORA330サイレントモデル」など、PCの静音化は着実に始まっている。特に日立は、先日発表したネット経由でプロ棋士との指導対局ができる“将棋PC”にもサイレントモデルを用意するなど、PCの静音化には非常に熱心だ。
HDDのトレンドも“静音”
PCの構成部品の中で、空冷ファンの次にうるさいのが「HDD」。その騒音源は、モータの回転音とヘッドを動かすアクチュエータのシーク音だ。特に、定常的な騒音となる回転系よりも、時々「カリカリ」と音を発するシーク音の方が、静かな場所では空冷ファン以上に気になる。HDDメーカーは流体軸受けモーターを採用したり、回転数を低くしたモデルを投入するなど、静音対策を施したHDDの開発に力を入れている。
HDDの静音化が求められてる背景には、ゲーム機器やHDDレコーダへの搭載など、PC以外の用途の拡大がある。これら家電向けには、安定した品質や安価で入手しやすい点とともに、静音性が望まれるからだ。例えば、Seagate Technologyの家電向けHDD「U Series X」には、「SoftSonicモーター」と呼ばれる流体軸受けモーターを使用し、図書館の中よりも静かな動作音(26デシベル、アイドリング時)を可能にした。このHDDは、当初MicrosoftのXbox向けとして開発された同社の戦略商品だ(別記事を参照)。
今後は、ホームサーバをリビングに置くというケースが増えてくる。このとき、単に現在のPCをサーバに仕立てたようなホームサーバでは、うるさくて常に電源を入れておくことなどできない。また、インターネットだけでなくAV機能の充実などPCの高機能化で、その利用シーンが増え、常時接続の普及とも相まってPC利用時間も長くなっている。つまり、これからはPCにも、家電製品並みの静音レベルが求められてくるのだ。
PCの最新トレンドに敏感なユーザーが多いDIY市場でも、静音化はちょっとしたブームとなっている。ファンレス電源を搭載したベアボーンが売れ筋だったり、動作音が静かといわれている流体軸受けモーターのHDDや、静音をうたった高価な電源が人気商品となっているのだ。
PCが“真の家電”となるためにも避けて通れない静音化は、間違いなくこれからのPCのトレンドの1つとなっていくだろう。
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[西坂真人, ITmedia]
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