通信業界・禁断の謎に迫る(前編)
クローン携帯の可能性(2/2 ページ)
携帯電話は、自分の位置を基地局に登録しておかないと、発信はともかく着信ができない。ユーザーの移動に応じて、間欠的に電波を一瞬出して、細かく位置登録を行っている(これを“間欠受信”と呼ぶ→NTTドコモのホームページ参照)。そのため、移動が多ければ電池が早くなくなるし、1日中移動しなければ、電池のもちも良いとされる(1月29日の記事参照)。
ここで、仮にクローン携帯があったとしたらどうなるか。同じID(電話番号)を持つ携帯電話が、2台同時に物理的に異なる場所に存在するという、異常事態が存在するわけだ。こんな基本的なところを、キャリアが見逃すわけはない。クローン携帯は、確実に発見されるだろう。
しかし、上記のシステムをすり抜ける方法がないわけでもない。例えばもし、本物とクローンが、同一の基地局のセルの中にあったらどうだろうか?
本物とクローンを同一基地局内にそろえれば、クローン電話が位置登録のために電波を出したとしても、基地局側は「一瞬圏外に入った」「バッテリーが抜かれた」ための電波発信と区別がつかない可能性がある。そして、“同一IDの端末が複数ある”という事実は、見逃されるだろう。
また、クローン携帯を「パケット通信モードに固定する」という手も考えられる。
一般に、PDCの携帯電話では、通話に利用する回線交換モードのほかに、“パケット通信モード”がある。友人に電話をかけた際に、「相手先の電話が、パケット通信中です」との案内を受けた経験のあるユーザーもいるだろう。
パケット通信モードでも、もちろん間欠受信は行う。ただし、インターネットを利用する以上、日本全国どこにいても“サービスエリア内”にいれば通信は可能なため、通話の時ほど厳密には位置情報を管理できない。
そのため、クローン携帯を製造した上で、パケット通信モード専用端末として利用すれば、前述のネットワーク検知のシステムが、有効に機能しない恐れがあるのだ。相手もプロなので、システムのどこにスキがあるかは熟知している。
クローン携帯は恐ろしい存在か?
世間では、クローン携帯の恐怖が取りざたされている。確かに、自分の携帯名義で迷惑メールの大量送信に悪用される可能性もあれば、“足がつかない携帯電話”として、麻薬など非合法な商品の闇取引に利用される可能性もある。
これまでに書いてきたことを読めば、実現可能な恐怖として、強い不安を感じるユーザーも少なくないだろう。
ただ、これまでに実際にクローン携帯が世間にあふれ、多数のユーザーに被害を及ぼしている……かというと、この点は立ち止まって考える必要がある。次回は、クローン携帯の真相について、より深く考えてみたい。
- 細田時弘氏は、電子技術が絡む複雑な事件・事故を、一般人にも理解できるように独自の視点から解説する「自称:ハイテク解説者」。「ネットって何?」「携帯電話って?」などの講演多数*
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