クルマの廃熱で電力不足解消――東芝の熱電モジュール
内燃機関を動力にした自動車は“熱”のカタマリだ。
走行後のエンジンまわりは、真冬でもボンネットを開けただけでムワッと熱気がくるほどで、エンジンはもちろん周辺のパーツにうっかり触ったら間違いなく火傷してしまう。近年の自動車の大半を占める水冷エンジンでは、熱くなったエンジンを冷却水とラジエーターによって冷却している。エンジン以外にも、排気ガスを通すマフラーもかなりの高熱になるが、これは大気中に熱を放出しているだけだ。
つまり自動車の排熱は(一部暖房などに使われるものの)ほとんどムダに捨てられているのだ。
この熱エネルギーを電力に変えて有効利用しようという提案が、5月19日からパシフィコ横浜で始まった「自動車技術展」の東芝ブースで行われている。
東芝の社内カンパニー、電力・社会システム社が出展していたのは、今年3月に発表した熱電モジュール「Giga Topaz」。2つの異なる金属に温度差を与えると金属間に電圧が発生して電流が流れるといういわゆる「ゼーベック効果」を応用したもの。CPUの冷却手法として有名なペルチェ効果の逆の原理だ。モジュールに内蔵された熱電変換素子の上面と下面の温度差によって発電する。
このような熱電モジュール自体はすでに実用化されており、腕時計や惑星探査船の電源やゴミ焼却施設の廃熱発電などさまざまな製品・場所で応用されている。駆動部分がないため静かで故障が少ないというメリットがあり、次世代の発電手段として期待されている技術だ。
Giga Topazは、熱電変換素子(p型半導体とn型半導体)に、従来に比べて耐熱温度を大幅に向上した半導体材料を採用。モジュールは約500度の高温に耐えるなど従来の熱電モジュール(300度以下)の約2倍の耐熱温度を実現した。「耐熱温度の大幅向上で、エンジンやボイラーなどの300度を超える廃熱が利用できるようになった」(同社)
さらにGiga Topazは出力密度が1ワット/平方センチと発電効率も従来の熱電モジュールに比べて約3倍に向上。加熱面が500度で冷却面が20度(室温)という温度差が480度の場合、モジュール1個(約14.4平方センチ)で約15ワットの発電が行えるという。「モジュールを70個並列接続すれば1キロワットの出力が確保できる。出力密度が高いため、70個ならべても設置面積は小さくて済み、自動車へも応用しやすい」(同社)
自動車では、排気ガスの温度が800度前後(ガソリン車)で安定している。排気ガスと冷却水とを組み合わせてGiga Topazで発電させることで、今まで廃熱として捨ててきた熱エネルギーを有効利用できるというわけだ。
以前、自動車の42ボルト化の記事でも触れたが、電装品や電子制御システムなどが増えた最近の自動車は“慢性的な電力不足”に陥っている。Giga Topazのような熱電モジュールを効果的に使用すれば、今後ますます増加するとみられる“車内の電力消費”にも、42ボルト化などせずに対応できるかもしれない。
「発表以降、自動車メーカーから多数の問い合わせをもらっている。自動車だけでなく、発生する高温廃熱を冷却水で温度を下げている工場などでも、廃熱処理システムにモジュールを挟むだけで電力を生み出すことができる。モジュール自体は技術的には実用段階にきているが、出力密度の向上や具体的な商品化・提案方法などが今後の課題。Giga Topazは7月からサンプル出荷を行う予定」(同社)
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