「Winnyの否定は、IT立国自体の否定」
「Winny開発者逮捕は、国策であるP2P技術の進歩を止めてしまい、経済・産業分野にまで悪影響が出る」――東京電機大学で6月28日に行われたWinny事件を考えるワークショップで、Winny弁護団事務局長・壇俊光弁護士はこう主張した。
2004年度のIT政策大綱で総務省は、公共分野でのP2P技術活用を掲げている。全国に散在するデータを簡単に検索・利用するためにP2Pを活用するというものだが、現在のP2P技術はセキュリティ・品質面で問題があるとしている。
この問題をクリアできるのがWinnyだと壇弁護士は言う。Winnyならプライバシーを守りながら効率の高いファイル交換が可能だからだ。「Winny開発の否定は、IT立国自体の否定だ」。
「海外では同種のP2Pファイル交換システムが適法とされており、開発競争が始まりつつある。Winnyを否定すれば、国際P2P競争で敗北は必至。経済的損失は計り知れない」。
さらに、Winnyの否定はインターネット自体の否定につながると壇弁護士は主張する。「ネットでの情報伝達はコピーによって成り立っている上、違法ファイル発信を防ぐ手段はない。Winny問題の本質は、ネットが法律の概念を超えたことにあり、立法で対応すべきだ」。
「ほう助」の定義があいまい
著作権法では、公衆に自動複製装置を提供した場合、営利性がなければ不可罰、営利性があれば可罰となる。Winnyを自動複製装置とみなした場合、開発者は何の利益も受けていないとされるため、不可罰で当然のように思われる。
しかし、公衆送信可能化権(著作物を自動的に公衆に送信し得る状態に置く権利)に限っては不可罰規定がないため、同権侵害をほう助したWinny開発者も可罰になってしまうという。「営利性がなくても罪になるのは著作権法の規定に反しているのではないか」。
著作権法違反の罰則規定も矛盾していると主張する。著作権法違反ほう助罪は、1年半以下の懲役か150万円以下の罰金。コピーガードキャンセラーなど、技術的保護手段を回避する装置を提供した場合の罰則(1年以下の懲役か、100万円以下の罰金)よりも重い。「違法・合法両方に使えるソフトを、違法利用しかできないソフトよりも重い刑に処するというのはおかしいのではないか」。
加えて、「ほう助」の定義があいまいなのも問題だと指摘する。「あらゆる技術は悪用の危険がある。正犯との面識がなく、実行行為がわからない状況でのWinnyの提供がほう助となるなら、例えば、制限速度以上で走れる車を販売している自動車メーカーなど、処罰範囲は無限に広がる。どこまでがよくてどこまでがダメかというガイドラインを作らないと、誰もP2Pソフトを開発できなくなる」。
Winnyは産業革命をもたらす?
Winny開発者の逮捕は、インターネットから生まれた新しい可能性を封じ込めると壇弁護士は言う。
「Winnyが課金システムを装備すれば、産業革命をもたらす可能性すら秘めている。大容量データをサーバ不要で配信できるWinnyなら、サーバを立てる余裕のない個人でも、自主制作映画や自作の音楽などを流通させられる。加えて、ユーザーと発信者が直接ファイルをやりとりできるため、流通業者への中間マージンが不要になる」。今回の事件が、ファイル交換による新しい市場の可能性をも否定する危うさを指摘した。
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