レビュー:コードレスサラウンドヘッドフォン小特集
五輪観戦もナイトシアターも“高音質コードレス”――オーテク「ATH-DCL3000」(1/2 ページ)
ソニーと並ぶ国内ヘッドフォンメーカーの雄といえばオーディオテクニカ。多彩な製品ラインアップと音質・装着感などには定評がありファンも多い。
ヘッドフォン作りには一家言ある同社が今年3月に発売したのが、同社初のコードレスサラウンドヘッドフォン「ATH-DCL3000」。実売8万円強という価格から、製品紹介などでも一般ユーザー向けではないような取り上げられ方が多いが、実は初心者からマニアまで幅広いユーザーに使ってもらえる“一家に一台”的な製品でもある。そんなATH-DCL3000の魅力を、レビューを通じて探ってみた。
オーディオテクニカの高級ヘッドフォンというと、天然木ハウジングのATH-Wシリーズが印象的で“密閉型”のイメージが強いが、開放型(オープンエアー)でもファンは多く、エアーダイナミックヘッドフォンシリーズなどは人気商品となっている。
ATH-DCL3000はエアーダイナミックシリーズのノウハウを生かしたオープンエアー構造を採用。コードレス化のためにどうしても赤外線受光部/回路基板/バッテリーの分だけ100グラム前後は重くなってしまい、ワイヤードの通常ヘッドフォンよりも装着感が犠牲になってしまう恐れのあるのがコードレスサラウンドヘッドフォンの欠点。ATH-DCL3000も例外ではなく、ハウジングを持たない独自開放型で軽量化を図りながらもバッテリー込みで360グラムになっている。
だが頭頂部を圧迫しない同社独自の3D方式ウイングサポートを装備して、軽快な装着感を生み出しているため、今回のレビュー小特集の3機種の中では一番重量があるにもかかわらず、装着感では文句ナシにナンバー1。耳当て部に布製パッドを採用していることもあり、長時間の視聴でも最後まで心地よさが続いていた。
装着感だけでなくサウンドも“上質”
今回のレビューでは、オーディオテクニカから未開封の新品貸出機が送られてきた。これは一見喜ばしいようで、レビュワーにとっては実は困ってしまうことなのだ。
車の慣らし運転と同様に、オーディオ機器は工場出荷状態の新品から少し使い込んだ方が良い音になるといわれている。この慣らし作業を「エージング」というのだが、特にスピーカーやヘッドフォンなどはその傾向が顕著で、さほどオーディオ機器を聴き込んでいない筆者でもエージングする前とした後では音の良し悪しがはっきりと分かるほどだ。
余談だが、発売前の新製品レビューでよく「思ったほど音の伸びがない」と本来の実力より低い評価が下されることがあるが、これは編集サイドでエージングを満足にせずに試聴している可能性が高い。書き手から言うのもなんだが、音響機器の(特に新製品)レビューには注意が必要だ。
案の定、できたてホヤホヤのATH-DCL3000は、高音域で伸びがなく全体的にも明瞭感がなくて濁った感じ。エージングに用いるサウンドは、そのオーディオ機器で普段聴くものを鳴らすのが一番いいので、BSデジタル放送(WOWOW)を一日中流しっぱなしで3日目でやっと音がこなれてきた。エージングの時間は「100時間以上やった方がいい」とか「24時間で十分」とかさまざまだが、明らかに音の変化が分かったらOKということでいいと思う。
本来の実力を発揮したATH-DCL3000は、“コードレスサラウンド”を抜きにして純粋にヘッドフォンとして高性能。“上質”という言葉が相応しいサウンドは、さすが開発チームを組んで設計しただけのことはある。コードレスの無線方式はパイオニア「SE-DIR800C」と同様にデジタル赤外線伝送方式を採用しており、非常にクリアな音質を聴くことができる。
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