モバイル放送、スタートしてみて分かった新たな利便性(3/3 ページ)
モバイル放送とは何かを説明しようとすると、どうしてもテレビを持って歩けるようになったことのアピールから始めざるを得ない。だが、実は衛星による全国一波で、移動体向けの音声多チャンネル放送もエポックであることを強調すべきであることに気付かされる。モバイル放送の用途は自動車内に限ったものではないのだが、もはや立派な自動車社会となった日本では、音声放送の強みは一度使ってみたら手放せないものである。
ワンセグ放送はあくまでもテレビの世界であるし、携帯電話でFM放送を聞くことが出来るようにもなっているが、映像・音声の総合サービスとしてのモバイル放送の優位性が崩れることはないと考えられるのは、これまで述べてきたようなエポックがあるからだ。
有料放送であることから、マーケットサイズも限られていくだろうとの見方もあるが、それは杞憂というものだろう。テレビの世界でも、WOWOWやスカパーの発足当初には、日本ではテレビは無料で見られるのが常識だからということで、有料に対する厳しい批評があったと記憶している。
だが、今では有料放送は珍しいものではなくなった。それだけに、移動体向けという特長を持ち、映像・音声をセットで提供するモバイル放送が有料であることは、やがて当たり前に思える時期が来るに違いない。
新潟での被災が未だ復旧してはいない時期に、モバイル放送のエンターテインメント機能を強調することは不適切であることは承知しているが、ある意味では、こうした状況にある時だからこそ、その優位性を評価してみる意味があるのではないかと考えた。技術の進歩の速い中で、新たなサービスの新規性に着目し得るチャンスは少ない。
被災地の方々には、事態が一日も早く復旧し、元の平和な生活が送れる日が来ることをお祈りして筆を置かせて頂きます。
西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、(株)オフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「モバイル放送の挑戦」(インターフィールド)、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。
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