背水の陣の三洋、事業再編と大規模リストラを発表
三洋電機は7月5日、経営再建に向けた事業再編計画を発表した。環境への配慮を軸とした事業ポートフォリオの再編と、3年間で社員の15%削減や有利子負債6000億円の圧縮などが骨子。三洋は2005年3月期、1715億円の最終赤字を計上。硬直化した事業の大胆な再編と聖域なきリストラで再建を目指す。
同日、野中ともよ会長兼最高経営責任者(CEO)と井植敏雅社長兼最高執行責任者(COO)が大阪府守口市の本社で会見して公表した。
事業再編では、新経営ビジョン「Think GAIA」を打ち出し、環境への配慮を軸にして既存事業ポートフォリオを組み替える。
具体的には、二酸化炭素を冷媒としたコンプレッサー技術や発電効率の高い太陽電池技術、高シェアを誇る二次電池技術などを核に、「共生・生態系ソリューション」「循環型環境ソリューション」「グローバルエナジーソリューション」といったくくりでドメインを再定義する。「中小企業の集まりのようだ」(野中会長)という事業部単位の発想を転換し、強みを柔軟に組み合わせてシナジーの発揮を目指していく。
一方で事業の絞り込みも進める。具体的な撤退分野は現段階では明らかにできないとしたが、「トップをねらえる事業かどうか」(井植社長)などの基準をもとに、「必達」を公約した2008年3月期の営業利益率目標・5%を達成できない分野を対象とする。野中会長は「不要なDNAは聖域をもうけずに切る」と宣言し、過去5年で5940億円を投じてきた研究開発費も見直し、集中投資でコスト効率を上げていく。
一方、改革の前提となるのは待ったなしのリストラだ。本年度から2007年度までの3年で(1)国内工場の20%(面積ベース)を閉鎖、売却、(2)全社員の15%(国内8000人、海外6000人)を削減、(3)国内社員20%の異動、(4)物流や調達の共通化などで700億円のコスト削減──などを断行する。
本年度は構造改革費用として900億円を計上。まず社員3800人を削減するほか、子会社の整理などを含む事業再評価などが含まれる。
1兆2000億円に上る有利子負債の削減も急務だ。事業売却益などリストラによるキャッシュインで4000億円、債権の流動化や不動産売却など財務施策で2000億円を削減し、3年で半分に圧縮する計画だ。
ガイアで生き残るために
「その事業を始める際、地球が喜ぶのか、生命が喜ぶのかをまず胸に問うてみよう」──ジェームズ・ラブロックの「ガイア仮説」から名付けた新経営ビジョン「Think GAIA」を説明する野中会長は、さながら環境番組のナレーターのようだった。
だが語り口は柔和ながら「ベンチャースピリットを忘れた製造業ほどみっともないものはない」と厳しい指摘も飛び出した。野中会長は、NHKやテレビ東京の報道番組でキャスターを務めたジャーナリスト。社外取締役からの代表取締役就任は業界を驚かせた。
力量を不安視する向きも多かった中、野中会長は大勢の社員と向き合い、三洋の問題点を洗い出してきたようだ。三洋ブランドの弱体化について「端的にはCMが多いとブランドを認識される。三洋のブランドは露出が少なかった。時代の半歩先を行く製品や、『これは三洋だね』とブランドを誇れる製品もなかった」と指摘してみせた。
新潟県中越地震による半導体工場の被害、一時は“世界最大のデジタルカメラメーカー”だったがOEM・自社ブランドともに不振──2005年3月期、同社は業績予測の下方修正を2回出した上、5月には決算発表後に最終赤字額を約340億円も修正。2期連続で決算発表後に数字を修正するという失態に、市場の信頼は失墜した。
同社株価は1年前には400円台前半で推移していたが、失望を受けて今年6月3日には269円の安値を付けた。7月5日の終値では経営再建策への期待から297円にまで回復したが、それでも1年間で時価総額が2000億円以上吹き飛んだ計算になる。
新経営陣は事業ポートフォリオの大胆な再編策を打ち出したが、現時点では具体性に乏しいのは否めない。新コンセプトに基づく製品は「第1弾は2006年春モデルから企画している。具体的な内容は最大の秘密」(井植社長)として明らかにされなかった。今期はリストラ先行で経営のスリム化と体質強化を優先し、新ビジョンの具体化は来期以降に本格化するとの説明だ。しかし事業部単位で動いてきた企業文化の変革には困難も予想されよう。
地球を1つの自己調節体と見るガイア仮説。だが母なる地球上に出現した生物のほとんどは、環境変化などに耐えきれずに絶滅したと言われている。三洋が生き残りに残された時間は多くない。
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