西正
「コピーワンス見直し」で留意すべきこと(2/2 ページ)
あってはならないことだが、コピーワンスの見直しを求める人たちの心の中に、根本のところでコンテンツという知的財産物に対する認識が欠けているのではないかと危惧される。
放送局が無料で放送している物を、ユーザーがどう使おうが自由ではないかという考え方がベースにあるのではないか。だから何回録画しようが、それを録りためてアーカイブにしようが、そんなことはユーザーの勝手だろうと思われているのでは困る。
あるいは好き勝手に編集して、好きなタレントのシーンばかりを集めたって構わないではないかという考え方が発想のベースにあるとすると、結果として優良なコンテンツが出てこないことになり、それこそ本末転倒な話になる。
今までアナログでできたことが、どうしてデジタルでできなくなるのかという点については、アナログ時代はそれを抑止する技術がなかったし、抑止しなくても4回、5回とコピーをしていけば画質が劣化して、商品価値がなくなったから許された、と考えるべきだ。
デジタルになって、コピーしても劣化しないようになったことから、複製品が商品として売られて違法再流通していくという事件が一方で起きている。そもそも私的利用の範囲という制約はあったのだから、それを超えて使うことについては、アナログであろうとデジタルであろうと、問題視されるべきであったことに変わりはない。
いきなり中間答申の中に出してくるようなことはせずに、まず放送事業者とメーカーの話合いの場を持って、放送事業者の運用で何とかするとか、あるいはメーカーの商品企画のルールをもう少し変えるとか、そういう努力で十分改善できるはずのことである。
すべてのメーカーがコピーワンスに反対しているわけではない。メーカーによっては、コピーワンスでも構わないし、もっと利便性の高い使い方をしたい人は、有料で契約をしてサーバ型みたいなサービスを受ければよいという考えのようである。
これから先、ハードディスクレコーダーが本格的に普及してきたら、ホームネットワークに流すような展開にも広がっていく流れだった。それだけに、「デジタル放送の普及に支障を来たす」などという理由を付けてあのような形で出すと、かえって事業者間の話合いの場を持ちにくくしてしまっただけのようで、まことに残念な限りである。
コピーフリーなどにしてしまったら、著作権処理にかかるコストも巨額なものになってしまい、結果として民放ですら無料では視聴できなくなる恐れさえある。今の無料で見られる民放の番組でも制作コストはかかっているわけであり、それを別のところから取っているだけのことである。コンテンツが無料であるなどいう考え方は誤解も甚だしい。
日本が知的財産立国を目指すと言っている割には、コンテンツという物に対する配慮が足りなさ過ぎることが懸念される。コピーワンスを見直すのであれば、上記のような点を十分に理解した上で議論を進めていくべきであろう。
西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、(株)オフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「IT vs 放送-次世代メディアビジネスの攻防」(日経BP社)、「視聴スタイルとビジネスモデル」(日刊工業新聞社)、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
2
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
3
GMO、不正アクセス実行犯の手がかりに懸賞金 1億5000万円規模
-
4
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
5
GMO、攻撃者の公開情報に「アクセスは絶対に控えて」 悪質な拡散者には法的措置を準備
-
6
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
7
So-net、会員情報約259万件が漏えい 一部メールサービスではパスワードも流出
-
8
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
-
9
「自分の個人情報が漏えいした……どうすれば?」 IPAが対処法公開
-
10
GMO不正アクセス、犯人側は「27日に顧客のPC攻撃」予告 GMOが端末回収、ホワイトハッカーが解析中
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR