第1回
フロントサラウンド市場幕開けへのカウントダウンを告げたBOSE「3・2・1」
高度な理論をシンプルな構成に収めたBOSE「3・2・1」は、フロントサラウンドを本格的に取り入れた製品の先駆け。2002年の誕生以降、革新的かつ着実な進化を遂げ、最新機種の「3・2・1GSX」へと結実した。ここでは「3・2・1」シリーズの基本コンセプトと製品の変遷を見ていこう。
いまでは、「フロントサラウンド」という言葉も一般的になった。多くのAV機器メーカーでは、ドルビーバーチャルスピーカーのライセンスを受けたホームシアター向け製品を発売し、さらに各社でも独自の技術を研究・開発している。
フロントサラウンドの手法は多岐にわたるが、すべてに共通するのは最小限のスピーカー構成(多くの場合は2ch)で、臨場感溢れるシアターサウンドを再生するということだ。スピーカーの配線が複雑にならず、また、リア(サラウンドch)スピーカーの置き場所に悩む必要もなくなるため、家庭でシアターサウンドを構築するための有力な手段の1つとなっている。
そのフロントサラウンドを、いち早くホームシアターシステムとしてパッケージングしたのが、2002年5月10日に発売されたBOSEの「3・2・1」だ。スピーカーを中心とするオーディオ機器メーカーとして長い歴史を歩んできた同社は、ハイエンドオーディオからエントリー向け製品まで幅広く手がけているが、いずれの機器にも「実践的な理論に裏打ちされた技術」「シンプルかつユニークな製品デザイン(コンセプト)」という主題が根底に流れているように思える。そして「3・2・1」も、まさしくそのイメージを体現した姿といえるだろう。
“箱を開けて15分”で本格的なサラウンド環境を手に
この製品を導入したユーザーは、まず箱を開けたとき、梱包されているケーブルの本数の少なさに驚いたに違いない。「3・2・1」では、たった“3”本のケーブルを接続するだけで、基本構成のセットアップが完了する。
「ベースモジュール」(パワードウーファー)へ電源ケーブルを接続し、さらにそこから、「メディアセンター」(DVD/CDプレーヤーとプリアンプ、4chパワーアンプの役割を果たす)へと電力供給/データ送受信を行う専用ケーブルをつなぐ。そして、「メディアセンター」から“2”個のサテライトスピーカーへ、Y字型スピーカーケーブルを延ばすだけでいい。
設置だけではなく、インタフェースも非常にシンプルだ。DVDでの映画鑑賞から、CDやラジオのリスニングに至るまで、さまざまなエンターテイメント体験に、付属のユニバーサルリモコンから“1(ワン)”タッチでアクセスできる。
つまり「3・2・1」とは、どんな部屋にも無理なく設置可能で、配線や設定もほぼ不要、さらに操作もシンプルで、誰にでも簡単に本格的なシアターサウンドを楽しめる、という意味を込めて与えられた名称なのだ。しかし、いま改めて考えてみると、この製品の登場こそがフロントサラウンドの先駆けとなり、本格的な市場の開花を導いたわけで、「3・2・1」とは“幕開けのカウントダウン”でもあったのかもしれない。
しかし、そんなシンプルな構成で、本当に臨場感のある音響が得られるのだろうか?
至極もっともな疑問である。実は「3・2・1」に導入された「スーパーフロントサラウンド」方式は、音声の信号処理だけでフロントサラウンドを実現しているわけではない。「イメージアレイ」と呼ばれるサテライトスピーカーには、各々に2個のスピーカーユニットが内蔵され、実質的には独立4ch構成となっている。
具体的には、まず、ドルビーデジタル、DTSなどを5.1chデコードするのみならず、ピュアステレオ、マトリックスサラウンドなどの2chアナログ音声も、すべて独自のアルゴリズムによりいったん5.1chに変換。その後、「3・2・1」専用に開発された「4×4BDプロセッサー」が、2本のイメージアレイ内の4つのスピーカーに対して、個別の音声信号を出力している。
左右の耳に入る音の相互の時間と強さの差によって方向性を感じる、人間の聴覚特性を利用したという点では、かなりの正攻法といえるアプローチで、目新しさはないともいえるが、いわば、ソフトウェア面とハードウェア面の両方から攻めることにより、より高度なフロントサラウンドを実現したわけだ。
また、このスーパーフロントサラウンドと呼ばれる方式では間接音を利用しないので、左右の壁への距離、あるいはその有無すらも関係なく、サラウンド効果を提供可能だ。さらに、リスニング空間内にはほぼ均等に音のエネルギーが充満するため、聴取位置も比較的自由にとれる。
超小型の“ジュエルアレイ”を採用した「GS」、メディアセンターを一新した「Series II」
高度な内容を持たされ、なおかつ、シンプルな構成に収められた「3・2・1」シリーズは、幅広い層から人気を得て、以降も手堅くラインアップの追加、および、バージョンアップを続けている。まず、初代モデル登場から約1年半後の2003年11月1日には、音響性能が大幅に強化された「3・2・1GS」がリリースされた。
同モデルでは、サテライトスピーカーの小型高性能化を果たした点が最大の特徴で、これは最新機種の「3・2・1GSX」にも引き継がれている。「3・2・1」のイメージアレイと比較すると容積は約半分の、“ジュエルアレイ”と呼ばれるユニットを採用した。もちろん、1個のスピーカー内に2つのユニットを収めている点は変わらない。非常に強力な磁気回路を有する50ミリ径の超小型ドライバーを導入することで、出力性能を高めつつ、同時に、小型化も実現したのである。
さらに「3・2・1GS」では、新たに開発された「TrueSpace DSP」を搭載。これも現在まで継承される「3・2・1」シリーズの重要な要素となっている。同DSPは「4×4BDプロセッサー」をベースに、サラウンドアルゴリズムを強化したものだ。ドルビーデジタルやDTSに加え、アナログ音声も「BoseDigital」デコーダーでデジタル5.1ch化され、「TrueSpace」により4.1チャンネル変換が行われる。
そして、2005年4月21日にはDSPを強化しAAC対応を果たした「3・2・1 Series II」「3・2・1GS Series II」が登場。スリムなデザインのまったく新しいメディアセンターを導入し、さまざまな面で機能が大きく向上した。この時点で「3・2・1」シリーズはその性能面で現行の完成形をすでに確立させていたことになる。
BOSEではホームシアターシステムとして、ハイエンドのピュア5.1chシステム「Lifestyle」シリーズ、「3・2・1」から派生したシンプルフロントサラウンドシステム「FreeStyle」シリーズも提供しており、選択肢は非常に多彩だ。しかし、その中でも「3・2・1」シリーズは、“オールインワン”“シンプル”の双方を兼ね備えている点で、幅広い層に魅力を感じさせる製品だ。
しかも、エントリーモデル「3・2・1 Series II」とスタンダードモデル「3・2・1GS Series II」に加え、今回「Lifestyle48」からデジタル音楽プレーヤー機能「uMusic」を譲り受けたプレミアムモデル「3・2・1GSX」も登場し、「3・2・1」の現行ラインアップはさらに輝きを増したといえるだろう。
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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年3月31日