第3回
CD約200枚分を収録できる“音楽ロボット”――BOSE「3・2・1GSX」のuMusic機能を試す
BOSEの最新製品「3・2・1GSX」は、ホームシアターシステム「3・2・1」シリーズのフラッグシップというべき存在。新たに追加された機能は、音楽をより気軽に楽しめるもの――すなわち「uMusic」である。
スーパーフロントサラウンド方式により、臨場感溢れる映画音響のみならず、音楽もバランスのいい音場で聴かせてくれるBOSEの「3・2・1」シリーズ。その最上位機種となる「3・2・1GSX」では、ユーザーがより快適に音楽を楽しめる機能が新たに追加された。同社のホームシアターシステム最高峰モデル「Lifestyle 48」と同じ、独自のデジタル音楽プレーヤー“uMusic”システムを搭載したのである。
具体的なディスク容量は明らかではないが、「3・2・1GSX」のメディアセンターには、CD約200枚分が保存可能なHDDが内蔵されているという(「Lifestyle 48」は約350枚分)。ただ、uMusicはジュークボックスのように、単に膨大な曲を貯め込むことだけを目的にはしていない。その真の姿はまさしくデータベースであり、保存された曲への属性づけ、曲どうしの関連付けが最も重要な要素となっている。
つまり、uMusicではさまざまな条件をもとに、自動的に曲をピックアップして再生を行ってくれるわけで、BOSEでは同機能を“ジュークボックス・ロボット”と表現している。ソムリエ、あるいは、コンシェルジェという捉え方もアリかもしれない。
uMusicを機能させるためには、まずCDの取り込み作業が必要だ。作業は特に難しくなく、手持ちの音楽CDを入れ、「Store」ボタンを押すだけでいい。取り込まれた楽曲は自動的に内蔵の「Gracenote CDDB」とのマッチングが行われ、各トラックに対し、アルバム名、アーティスト名、曲名、ジャンルなどが入力される。取り込みにかかる時間は(CDによってばらつきはあるものの)、1枚あたり約5分程度だ。
取り込み済みの音楽を聴くには、リモコンの「Stored」ボタンを押せばいい。すると、自動的にuMusicモードによる再生が始まる。最初のうちはまったくのランダムで選曲が行われるのだが、提示(再生)された曲に対するユーザーのアクションに応じて、そのユーザーの好みが学習されていき、各曲の出現頻度に変化が生まれてくるという仕組みだ。
ユーザーのアクションには、リモコンに用意された「+」「-」ボタンによるレーティングに加え、「何もせずに最後まで聴く」、あるいは「曲のスキップ」といった行動も当てはまる。曲の評価は、「+」ボタンを押した場合が最も高くなり、続いて「最後まで聴く」でもやや上がる。逆に、「曲をスキップ」では評価がやや下がり、「-ボタンを押す」では最も低くなるという具合だ。
ただ、この評価のみをもとに、単純に選曲基準が変化するわけではない。uMusicではCDを連続して10枚程度格納すると、その後しばらく時間を置かないと、取り込みができなくなる。これは取り込んだ楽曲に対し、関連付けの作業を行っているためだ。しかも、単なるアーティストやジャンルによる分類ではなく、それに加えて、関連アーティスト、影響を受けたアーティスト、曲のスタイルやトーンなど、多彩な側面から分析および関連付けを行う。
10枚分のデータに対する処理が完全に終了するまでには、電源を切った状態で約6時間が必要だ(1枚分の処理が完了すれば、取り込みの再開は可能)。しかし、裏を返せば、それほどの時間をかけて、実行される複雑な関連付けこそが、uMusicの勘所といえるだろう。
そして、この関連付け情報はレーティングにも活用される。ユーザーのアクションに応じた評価は、再生中の曲だけでなく、その曲に“近い傾向を持つ”曲に対しても適用されるわけだ。すなわち、最小限の評価作業で、より多くの曲に対するレーティングがすませられることになる。
選曲を委ねるのではなく、積極的に使いこなしたい
uMusicモードでは、レーティングなどによる学習の結果をプリセットとして保存する。プリセットは9個用意されており、名前(アルファベット8文字)もつけられるので、家族ごとにプリセットを持たせたり、あるいは、1人で利用している場合なら「仕事中に聴くためのプリセット」「就寝前に聴くためのプリセット」などといった使い分けをしてもいい。
また、取り込み済みの曲(Stored)を再生する際には、uMusicモード以外にもいくつかのモードが利用可能だ。リモコンのボタンに用意されている「CD#」「Whole CD」「Playlist」「Encore」を押せば、各々のモードへ切り替えられる。「CD#」「Whole CD」はアルバム単位で聴くためのモードで、「CD#」はCD管理番号を直接指定して再生、「Whole CD」は現在再生中の曲が収録されているCDを1曲目から再生する。「Playlist」はその名のとおり、あらかじめプレイリストに登録しておいた曲を順番どおりに流すものだ。
注目に値するのは「Encore」だろう。これはその曲をアンコールするためのボタンではなく(それだとリピートと同じだ)、現在再生されている曲と、雰囲気や曲調が似ているものをピックアップしてくれるという、Encoreモードを呼び出すためのものである。
気分に合った曲を聴きたいという場合、前述のプリセットを利用する方法もあるのだが、あらかじめ多くのプリセットを準備しておくのは面倒だと感じる人もいるかもしれない。ならば、このEncoreモードを利用するといいかもしれない。
つまり、まずuMusicモードで曲をピックアップさせ、そのときの気分に合った曲が出てくるまでスキップする(このとき、単にスキップすると、「いまは聴きたくないが、普段は好きな曲」の評価も下がってしまうので、そうした曲に対しては「+」を押してからスキップを行えばいい)。そして、気に入った曲に当たったら、「Encore」ボタンを押して、似た傾向の曲を連続して聴き続ければいい。同様に、uMusicモードから、Whole CDモードへ移行するというのもいいだろう。
奇しくも、こうした利用法はインターネットブラウズに似た部分がある。リンクをたどって、関連したページを次々に閲覧したり、ニュースサイトや検索で偶然見つけたページが気に入れば、そのトップページへと移動し、サイト全体を順に眺めてみたり、という流れと同じだ。
個人的には、音楽はアルバム単位で聴くものという考えなので、シャッフル再生や自動選曲の類には、正直言ってかなりのアレルギーを持っていた。しかし、uMusicでは「Whole CD」ボタンが用意されているため、自動選曲(uMusicモード)で予期せぬ曲を発掘し、アルバム単位での再生(Whole CDモード)へ移行という流れがスムーズに行える。これは新鮮な体験であり、こういう聴き方もいいかもしれないなと感じさせてくれた。
しかも、「3・2・1GSX」には200枚にも及ぶCDが格納可能だ。単にアルバム単位だけで聴いていては、結局、一部の曲しか聴かなくなってしまう可能性も十分にありえる。そういう意味でも、uMusicは積極的に活用すべきだろう。さらに、EncoreモードやWhole CDモードを組み合わせることで、uMusicはより大きな効果を発揮してくれる。
uMusicは能動的でも受動的でも無い、まったく新しい音楽体験を実現してくれる画期的なメディアとなる可能性を秘めているといえるだろう。
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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年3月31日