小寺信良
中古販売実質容認報道の罠(4/4 ページ)
仮に販売店に善意がなく、PSEマークを最終的に貼らないつもりであっても、販売する前提としてはあとで検査してPSEマークを貼る約束をしなければならない。つまり、中古販売でも結局はPSEマークを付けるという前提が壊れていない限り、やっぱり中古販売業者は製造業者としての届け出をして、製造業者にならなければならないのである。
電器製品を扱う中古販売業者は、全国に30万件あるとされている。この事業者がこの措置に則って4月1日からも営業を続けようとすると、この1週間の間で製造業者がいっぺんに30万件も増えることになる。
こんな国があるか。
製造業者には製造業者で、背負わなければならない重い法律が沢山ある。その代表がPL法だ。もし中古製品で事故が起こった場合は、販売店が製造業者として損害賠償責任を問われる可能性もある。いくら経産省が、それは元祖製造メーカーの責任と主張しても、実際に裁判になればそれを判断するのは裁判所だ。
もしこれが「経過措置期間の延長」というのであれば、中古業者は製造業者の届け出をしなくても、これまでどおりにPSEマークなしの製品を販売できる。だがそうではなく、単に検査機器の不足を理由に、検査する時期を後回しにしただけ、というカラクリに気がつかなければ、一見4月からもこれまでどおりPSEマークなし中古品を販売できるかのように錯覚する。
今回の容認報道は、大手マスコミがみごとに経産省の腹芸に踊らされている形となっている。もしこれで世論が沈静化してしまうのであれば、日本の世論というのも所詮はここまで、ということであろう。
ただ大手マスコミの取材力によって、実際の販売店の状況もだんだん見えてくるようになってきたのも、また事実だ。そしてそれを元にもう一度PSE法中古介入の是非を考えてみると、やはりこれは1月に、中古市場を甘く見て法対象と明言してしまった、事務方の負けであろう。
すでに流通してしまった商品を、新品と同レベルの検査基準に乗せるのは無理だ。製造業とは違い、中古のしかも販売業では、あまりにもいろんな事情が違いすぎる。やはり中古品とPSE法は、いったん切り離すと方針を改めるべきである。
そして今回の騒動で中古市場というものがどういうものであるか、その規模も含めて学習できたことを財産に、もしどうしても必要とあらば中古電器製品のみを対象とした安全性確保のための別法を作る、というのが筋ではないかと考える。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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