本田雅一のTV Style
復調の兆しが見え始めた? デジタル放送対応PC
かつては“テレビチューナー内蔵以外のデスクトップPCは全く売れない”といわれるほど、いわゆる“テレパソ”(テレビパソコン)へのニーズが高かった。しかしここ数年、デジタル放送への移行が進んできてからは、以前ほどテレビ機能を重視する風潮は後退したといわれていた。
その背景には、PCが得意としていた録画・編集の機能などが、デジタル放送への移行で以前ほど至便なものではなくなったこと。そしてレコーダーの価格が下がり、普及率が高まったことで、PCで録画する必要性が下がったという事情もある。
しかし一番の理由は、やはりWindows Vistaが日本のデジタル放送を標準でサポートできなかったことが大きい。もちろん、OSに頼らなければデジタル放送録画は可能だが、マイクロソフトは当初、Vistaで日本のデジタル放送もサポートすると案内し、その後、その計画を延期。さらに出荷が遅れ……と続き、やっと今年の年末向けに発売される製品に、デジタル放送を扱える新しいWindows Media Centerが投入される。
Windows VistaではMedia Centerが標準機能になり、PCメーカーはMedia Center搭載を前提にデジタル放送もサポートしようと考えていたため、延期になったからといって簡単に自社開発へと路線変更もできなかった。これにより、テレパソは中途半端な位置付けのまま、混沌(こんとん)とした市場で中途半端な存在になってしまったのだ。
もちろん、2011年まではアナログ放送が続けられるのだから、それまで使えればいいのだが、消費者は数年で使えなくなる機能には投資してくれない。そこで本格的なデジタル放送のサポートは新OS対応で……となったのだが、今となってはVistaのアップデートスケジュールとは別に、独自開発を行う方が良かったと思っているメーカーが多いだろう。
と、思われたのも数カ月前の話。夏モデルとして登場した富士通の新型「FMV TEO」と、ソニーの「VAIO TP1D」は、いずれも独自に開発したソフトウェアを基盤に、見事な地上デジタル放送対応をやり遂げた。
新型TEOは、AV機器ライクなスッキリとしたフェースデザインとともに、ダブルデジタルチューナーを採用。独自に開発した「おすすめ番組」や、PCならではのインテリジェエンスを感じさせる「おすすめコンテンツメニュー」などを搭載。750GバイトHDDと記録型Blu-rayドライブを内蔵する上位モデルでも実売20万円ほどで購入できるということや、コンパクトなサイズ、比較的静かな動作音などもあって、レコーダー代わりに使いたくなるPCに仕上がった。
一方のVAIO TP1Dは、ハードウェアとしては従来から存在した製品だが、2008年夏モデルからは「Giga Pocket Digital」が新たに投入されている。これは名前の通り、テレビパソコンの元祖ともいえる「Giga Pocket」の機能をデジタル放送で実現したものだ。といっても、単にデジタル化しただけではない。
自動録画機能の「おまかせ・まる録」はもちろん、番組タイトルで追跡録画する「シリーズ録画」機能など、家電製品のプラットフォームよりもCPU速度、メモリ容量でずっと強力なPCの高性能ハードウェアを生かすインテリジェントな機能が魅力だ。しかし何より注目したいのは、これまでアナログ放送録画でしか実現できていなかった「VAIO Video Explorer」がデジタル放送対応したことだ。
筆者自身は、放送がデジタル化してから、PCで録画を行うということに否定的だった。なぜなら、デジタル放送によってダビング回数が制限されていることを考えると(コピーワンスでも、ダビング10でも本質的には同じだ)、やっぱり専用レコーダーを使った方が確実で、余分なことを考えなくていいぶん、楽だと思うからだ。
ところがここで挙げた2製品は、いずれもレコーダーとして使った場合の振る舞いや機能性について、実にマジメに作っている。デザイン面でも、リビングルームなど家族がリラックスする場に相応しくない、なんてことはいえなくなってしまった。しかも、両製品ともBDドライブを搭載しながら、レコーダー上位機に近い価格設定がされている。
画質や音質といった品位の面では、まだ多少の壁も感じるが、これだけの価格でダブルチューナーのデジタル対応機となれば本格的にも評価したくなる。
ならば両製品を書斎などパーソナルな部屋ではなく、薄型テレビが導入されたリビングルームで本当に使い物になるのか? 実際にリビングのAV環境に、両パソコンをつないで生活の中で使ってみた。
以下、次週。
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