本田雅一のTV Style
H.264エンコードとトランスコードに関する誤解
前回までパナソニックとソニーのテレビ新製品について、年末向け製品ラインアップを見てきた。先週はパイオニアが新製品を発表し、これで大規模な年末向けテレビ製品の発表は3社までそろってきたことになる。
ただ、私は8月に長期の出張をしていたこともあり、パイオニアの新ラインアップをまだ子細には見ていない。10日ほど自宅でテストした「KRP-600M」の仕上がりの良さは強く感じているが、それが“テレビ”となった場合に、価格帯が近いソニー「XR1シリーズ」とどのような位置関係になってくるかについては、少し時間をおいてリポートすることにしよう。
ということで、年末の新テレビラインアップに関する話は一休みし、勢いよく売り上げが伸びているBlu-ray Discレコーダーについて、いくつかテーマを立てて話をしていきたい。今回はH.264エンコーダーを用いたHD映像の長時間録画についてだ。
ご存知の方も多いと思うが、H.264はデジタル放送で使われているMPEG-2よりも符号化効率の高い圧縮方式である。H.264には細かな仕様を定義したプロファイルが複数あるが、HD映像の圧縮に向いているのはHigh Profile。「H.264HP」などと略して表記されることも多い。ならば全部がH.264HPなのだろうと思いがちだが、実はHigh Profileは規格策定終了間際に追加されたものなので、対応していないLSIも多い。
パナソニックはH.264HP開発の中心になったこともあり、昨年来、ずっとHigh Profileを採用しているが、メーカーによってはプロファイルを公開していないことが多い。その理由は開発が間に合わなかったからだ。とはいえ、今年に入ってからはHigh Profile対応LSIも増加しており、AVCHD対応カムコーダーなども含め、H.264対応機器の画質は底上げされてきている。
レコーダーに搭載されているH.264圧縮機能は大きく分けるとシャープ型、ソニー型、パナソニック型の3タイプがある。シャープ型はMPEG-2を元映像に戻さず、直接、H.264へと変換するトランスコードが特徴だ。ほかの2社は一度、MPEG-2をデコードしてからH.264で再圧縮する。
が、ここで大きな誤解が生じているようなので触れておきたい。
一部では再エンコードよりもトランスコードの方が高画質になるとの誤解が広がっているようだが、一般論として(あくまで一般論であって、最終的には結果がすべてだ)トランスコードは再エンコードよりも符号化効率は落ちる。なぜなら、トランスコードはMPEG-2の符号化ツールをH.264のものに置き換えることで実現しているからだ。
技術的で分かりにくいかもしれないが、H.264では符号化、つまり圧縮エンコードを実現するための“道具の数”や“道具そのものの機能”が増えており、これらを使いこなすことで符号化効率を上げている。したがって、MPEG-2の符号をH.264の符号に変換するだけでは、H.264の性能を生かしきることはできない。
実際のところシャープ型のエンコーダーはノイズ感、精細感のいずれもほかの2つに比べて落ちるように感じる。また5倍記録モード(約4.8Mbps)で、想定通りに4.8Mbps程度のビットレートになることがなく、平均5Mbpsを超えていることが多いという問題もある。
結局、ソニー型とパナソニック型が、H.264圧縮機能において、優れているという状況に今年も大きな変化はない。両社とも画質向上を実現しているが、今年のモデルで比べるならばパナソニックが圧倒的に良いという印象を持った。
ソニーのH.264圧縮機能はノイズ感が少なく見やすいが、輪郭が甘くディテールがなくなる。H.264の機能であるデブロッキングフィルターを強くかけ過ぎているのではないだろうか。
比較する上で最も分かりやすいのは、低ビットレートのLRモード時(約4Mps)だろう。パナソニックのDIGAには、ほぼ同ビットレートのHLモードがあるが、両者を比べるとパナソニックの方がコントラスト感、精細感、情報量ともに優れている。
ノイズっぽさはソニーの方が少ないが、パナソニックも昨年モデルの反省からノイズっぽさを抑え込むチューニングを行ったようで、トータルの画質はパナソニックに軍配が上がると思う。
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