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AIに200万円渡してネットショップを1年運営させてみた──Alibabaの研究者らがシミュレーション 資産14倍の例も

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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2

 中国AlibabaのQwenチームや香港科技大学(HKUST)などに所属する研究者らが発表した論文「E-Commerce Bench: Evaluating LLM Agents on Long-Horizon Autonomous Business Operation」は、AIモデルに1年間のネットショップ経営を任せ、その長期的なビジネス運用能力を検証した研究報告だ。

 研究チームは、AIモデルが長期にわたって自律的にビジネスを運営する能力を測るベンチマーク「E-Commerce Bench」を開発した。

E-Commerce Benchの概要

 実験では、AIモデルに10万元(約235万円)の初期資金を与え、365日後の最終的な総資産をどこまで増やせるかを競わせる。AIモデルは、商用とオープンウェイト含む18種類(GPT-5.6 Sol、Fable5、Gemini 3.1 Pro、Qwen3.8-Max-Preview、DeepSeek-V4-Pro-Previewなど)で行う。

 AIモデルは最大4つの店舗を同時に運営でき、6886点の商品と576社のサプライヤーが存在する市場で、市場調査、価格交渉、仕入れ、価格設定、発送、返品処理、資金管理まで18種類のツールを使って自律的に業務を回す。

 実際のECサイト(淘宝・天猫)のデータに基づく市場モデルと、数式ルールによる交渉エンジンを組み合わせることで、1年間の店舗経営を高い再現性で評価できる環境を構築した。

 市場ではセールや自然災害などのイベントで需要が常に変動するうえ、サプライヤーの約4分の1は「相場より高く売りつける」「注文数をごまかす」「返品率が跳ね上がる粗悪品を送る」といった詐欺業者として設定されている。

 仕入れ代や運営費は銀行口座から即座に引き落とされる一方、売上金は発送から9日間エスクロー(売買に際し、信頼できる第三者が契約当事者の間に入り、代金決済等取引の安全性を確保するサービス)口座に留保された後にウォレットへ入る仕組みのため、計画的に銀行口座へ出金しなければ黒字でも資金ショート(銀行口座のマイナスが10日連続で破産)に陥る。

 また、一定量を超えた古い会話履歴は自動的に消去されるため、AIは最大20件のメモリを活用して取引情報を記憶し続けなければならない。

 18種類のAIモデルでテストした結果、最終資産でトップに立ったのは「GPT-5.6 Sol」で、初期資金を平均約14.3倍(約143万元)に増やした。だが、詐欺業者への支出割合は18モデル中16位と悪かった。

 2位の「Fable5」(約8倍)はGPT-5.6 Solと比べて半分以下のツール呼び出し回数で手堅く稼ぎ、1手あたりの利益効率で1位となった。また、「Claude Opus 4.7」は値引き交渉力と詐欺回避率の両方で全モデル中トップの緻密さを見せたものの、取引規模を拡大できず総資産は8位にとどまった。

18モデルの総資産

 オープンウェイトモデルで最高成績を収めたのは、全体で5位に入ったアリババの「Qwen3.8-Max-Preview」(約4.2倍)。特徴的なのが、長期的な学習能力において全18モデル中トップだったことで、再度仕入れする際に過去の最安値を基準にさらなる値引きを引き出していた。

 一方で、現行のAIモデルが抱える長期運用上の脆さも浮き彫りとなった。全90回(各モデルは5回テストしている)の試行のうち10回が途中で破産に追い込まれており、内訳はGPT-5.5、Claude Opus 4.6、Gemini 3.1 Proが5回中2回の割合で、Qwen3.5-Plusは5回中4回の割合で破産している。

主要6モデルの能力プロファイル

Source and Image Credits: Fan, Wei, et al. “E-Commerce Bench: Evaluating LLM Agents on Long-Horizon Autonomous Business Operation.” arXiv preprint arXiv:2608.30730 (2026).

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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。

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山下(Seamless)
山下(Seamless)

2014年から幅広い分野の研究論文をピックアップして解説しているメディア「Seamless」(シームレス)を主宰している。

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