本山由樹子の新作劇場
アカデミー賞受賞なるか?――「おくりびと」
おくりびと
モントリオール世界映画祭グランプリや報知映画賞作品賞を受賞したほか、アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされた「おくりびと」が、3月18日にDVD化される。特典は撮影風景から大ヒットロングランまでの軌跡をたどったメイキング映像、舞台挨拶、モントリオール受賞会見、未公開映像などを収録している。
チェロ奏者の道を断念し、妻の美香(広末涼子)を連れて故郷の山形へ帰ってきた大悟(本木雅弘)。「高額保証!旅のお手伝い」と書かれた胡散臭い求人広告に飛びついた大悟は、その会社に面接に行く。すると、風変わりな社長(山恕W努)から思わぬ業務内容を告げられる。それは亡きがらを清め、化粧し身づくろいしてひつぎに納め、故人の「旅立ち」をサポートする納棺師という職業だった。最初は戸惑っていた大悟だったが、社長に見込まれ、次第にその世界にのめり込んでいく……。
納棺の儀式を進めるプロ、納棺師に興味を抱いた本木雅弘の企画で、それを自ら演じるという力の入れよう。彼の所作ひとつひとつが美しく、死に装束の着物の衣ずれの音まで心地良く耳に響く。いつまでも、この儀式を見ていたいと思わせる。
脚本を担当したのは、映画は初めてという放送作家の小山薫堂。監督は「バッテリー」「壬生義士伝」の滝田洋二郎。納棺師の仕事や、誰にも避けられない死というものを、ユーモアと涙を交え、じっくり丁寧に描く。
納棺師に対する世間の目は冷たい。妻も納棺師という仕事が理解できず、家を飛び出す始末。だが、主人公はそれに果敢に立ち向かい、さまざまな死と向き合っていく。
印象的なのが、山崎努がフグの白子焼きやローストチキンを何ともおいしそうに食べるシーン。この社長、一見、ひょうひょうとしているが、死を厳粛に受け止め、納棺師という仕事に誇りを持っている。物事の本質を瞬時に見極め、実に侮れない。魅力的な男である。
国内では昨年9月に封切られ250万人動員、興収30億円突破のロングランヒットを記録。日本映画がアカデミー外国語賞にノミネートされたのは「たそがれ清兵衛」以来5年ぶり。受賞すれば1955年の「宮本武蔵」以来となる。余計なセリフやシーンがなく、こんなにも心洗われ、美しいと感じた日本映画は久々。ぜひともアカデミー賞で本木雅弘のスピーチを聞きたい。
関連サイト:http://www.okuribito.jp/(公式サイト)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
なぜ酒蔵の許諾なしに? 「VTuberコラボ日本酒」騒動、主催者が経緯説明 仲介者による調整で「準備進んでいると認識」
-
2
「食事量は1日1200kcal以下、でも肥満」な人を14日間追跡調査 痩せない理由は……米コロンビア大などの研究
-
3
本物そっくり“AI生成レシート“が経費精算の脅威に マネフォ「自力で見破るのは難しい」 企業はどう備える?
-
4
かっぱ寿司「配布前のコラボグッズ、フリマで買わないで」 プリキュアコラボ発表日に注意喚起
-
5
「菜の花がおかしい」――イラストレーター制作うたうマラソン大会ポスターに指摘相次ぐ 事務局がAI使用明かす【訂正あり】
-
6
「ペンギンを返して」→「3匹全部採用して」 批判殺到のSuica新キャラ、ファンアートが空気を変えた? SNSの声
-
7
藤井風のリサイタル、公式サイトがインターネット老人会すぎると話題 公民館のチラシみたいだけど東京ドーム開催
-
8
「ランジェリーパープルじゃない」「買おうと思ってたのに」 iPhone 18 Pro/Pro Maxの色に落胆の声
-
9
「iPhone Duo」純正ケース話題、「面白いけど高い」……1万4800円と2万4800円
-
10
デジタル庁に不正アクセス、個人情報24.6万件漏えいか 各府省庁の職員情報など
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR