「やましくなければプライバシーは要らない」? そんなわけはない
まるで季節行事のように、数カ月おきに有名人――たいていは政府や顧客情報を利用して利益を上げている企業の関係者――がプライバシー権を否定する発言をしている。
こうした発言にはいろいろなパターンがある。よくあるのは、「人々がオンラインでどんなふうに情報を共有しているかを見れば、今や彼らがテクノロジーを恐れていないのは明らかだ」というものだ。たいていはこんな言い方になる。「皆がFaceSpacingやTwitTubingでどんなことをしているか見てみるといい。誰もプライバシーに関心を持っていないことが分かる」
プライバシー権に反対するコメントで、もう1つよくあるパターンは、昔ながらの「隠すようなことが何もなければ、プライバシーを心配する必要はない」という言い方だ。これは最近、Googleのエリック・シュミットCEOがMSNBCのインタビューで使った戦術だ。同氏はその中で、オンラインで自分がやっていることを他人に知られたくないのなら、そんなことはするべきではないというようなことを言った(この件については、詳しくは同僚のクリント・ボールトンの記事を読んでほしい)。
要するにシュミット氏は、プライバシーを求めているのは悪いことをしている人だけで、そうでない人はプライバシーのことなんて心配しなくていいと言っているのだ。わたしのコラムを少しでも読んでいる人なら、わたしがこの手の発言にどれほど腹が立つか分かるだろう。
例えばわたしが今日何を食べたかをTwitterに投稿しているからといって、近所のスーパーに冷蔵庫の中を見られたいと思っているわけではない。Facebookのステータスに「具合が良くない」と書いたからといって、ボスに薬箱の中身を見られたいわけではない。日差しを入れるために窓の日よけを上げているからといって、近所の人や警察に家の中をのぞかれたいと思っているわけではない。たとえ何も悪いことをしておらず、ただ寝間着姿で「宇宙空母ギャラクティカ」を見ているだけだとしてもだ。
そして検索エンジンを使っているからといって、その情報を世界中と共有したいわけではない。シュミット氏はまるで、Google Appsなどのサービスに興味を持っている企業に対して、使わない方がいいと言っているようだ。わたしが企業ユーザーなら、他人に知られたくない機密情報をたくさん持っているからだ。
傷口に塩を塗るかのように、Facebookは最近、プライバシー設定を「改善」した。多くの点でプライバシーを弱体化させるようなやり方で。個々の投稿を管理できるのは確かにいいが、その一方でFacebook APIとプロフィールを共有しない設定など、幾つかのセキュリティオプションがなくなっている。
わたしにとって一番いら立たしいのは、「フレンドリストを友人には見せるが、Google検索でわたしのプロフィールを見つけた人には見せない」オプションをFacebookがなくしたことだ。プライバシー反対派は、「大したことじゃないだろう。たかがフレンドリストじゃないか」と言うだろう。それにはこう答えたい。「誰がわたしの友だちなのか、友だちじゃない人には関係ないだろう」と(Facebookはその後この問題を「修正」したと発表したが、実際には直っていない。フレンドリストを全体に公開するか、誰にも見せないか選ばせるだけだ)。
ほかの記者も指摘している通り、Googleのシュミット氏の発言は、数年前の一件を考えるとちょっとした皮肉だ。CNETがGoogle検索で見つけたシュミット氏の個人情報を記事に載せ、同氏がGoogle社員にCNETの記者と1年間話をしないよう命じたという事件だ。
CNETがシュミット氏の給料や自宅の住所などの個人情報を掲載したとき、同氏はきっとこんなふうに反応したはずだ。「こんな情報を載せるなんて、何をやっているのか分かってるのか? おまえたちには関係ないじゃないか!」
エリック、まさしくそれが、わたしの言いたいことなのだ。
このような有名人のプライバシー不要論で一番憂慮すべきなのは、おそらくは定期的にこういう話が出てくることだろう。「みんなが信じるようになるくらいに、何度も何度も主張する」というのが、特別な利害関係者や政党、扇動家のお気に入りの作戦だということは誰もが知っている。
プライバシーは死んだと何度も言えば、皆がプライバシーを気にしないようになる――そんなふうに期待している人がいるような気がしている。
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