麻倉怜士のデジタル閻魔帳
デジタル分野総ナメ――「2009年デジタルトップ10」(2/4 ページ)
――8位はCEATEC JAPANでお披露目された東芝「CELL REGZA 55X1」です。Cellプロセッサを搭載したテレビであることやその価格はもちろん、画質や音質、豊富な機能と注目点は多くあるように思いますが、どこに注目されますか。
麻倉氏: 画質や多機能ぶりも注目に値しますが、合計14基のデジタルチューナーと合計3Tバイトのストレージによる「全録」に注目したいですね。最近は録画テレビが大きく注目を浴びていますが、それは放送されている番組数に対して、視聴に費やせる時間が少なくなっていることを示しているといえます。
録画の理想は24時間/1週間の地デジ/地上BSの“全録”ですが、CELL REGZAは地デジ番組の8チャンネル26時間録画にとどまっています(TS記録/20Mbps計算)。ですが、今後、圧縮技術を導入すればさらに長時間の録画を行えるはずです。そのほかにも8チャンネル同時録画はできても、8番組の同時再生ができないといった課題もあります。ですが、デジタル放送で全録が始まったことを評価したいのです。
アナログ放送の全録マシンとしてはPTP「SPIDER」が存在します。SPIDERはインターネットを利用して番組にタグを付け、EPGより詳細な検索と快適な視聴体験を提供しています。こうした方向性はCell REGZAも目指すべきでしょう。
CELL REGZAで残念なのは“すごみ”が外見に現れていないことでしょうか。映像も確かに素晴らしいのですが、圧倒されると言うほどではないのも残念ですね。“Cell REGZAはものすごく違う”レベルの映像を見せてほしかったと思ってしまいます。
――7位はスカパーJASTの開始した映像放送「スカパー!HD」です。スタートは2008年ですが、これを2009年のベストテンに選ばれたのはなぜでしょう。
麻倉氏: 地上デジタルとBSデジタルはMPEG-2を使ったハイビジョン放送を行っていますが、スカパー!HDはMPEG-4 AVCを採用しました。その画質はかなり満足のいくものです。チャンネス数はスタート時こそ物足りなかったですが、現在では70チャンネルほどとなり、個人的にもディスカバリーチャンネルとナショナルジオグラフィック、ヒストリーチャンネルの3チャンネルをよく視聴しています。
何が素晴らしいといえば、撮影魂が素晴らしいのです。「こんなところまで入り込むか!」という映像、その作り込みには毎回驚かされます。人文・科学・歴史すべてを網羅する素晴らしいドキュメンタリー群といえます。日本語の吹き替えと字幕も非常に適切ですし、映像のクオリティにかなり高いです。優れた内容をハイビジョンで楽しむという意味では、非常にためになる番組・サービスであると思います。
――6位はクリプトンの高品質音楽配信サービス「KRIPTON HQM データ配信サービス」です。CD以上の音質を実現する24bit/96kHzでの配信サービスが注目されていますね。
麻倉氏: 使い勝手がよくて高音質の配信がいよいよ始まったという感じですね。既存の音楽配信サービスは大半が圧縮されたWMAやAACを採用していますが、LINN「DS」やPS Audio「PerfectWave」など、データ化された楽曲をよい音で聞こうという製品が登場していることが高品質配信を後押ししています。
通常のCDは44.1Hz/16bitサンプリングですが、HQMは96Hz/24bit以上で実に音がよいのです。実際に聴いてみても、会場の空気感というか、雰囲気の表現に優れています。その違いは音の立ち上がりの俊敏さなどに感じられますし、小さな音、つまりは残響の表現も美しいのです。
よい音のマスターをもとにCDを作り、それをパッケージングして販売するのがこれまでの音楽流通の構造でしたが、配信という流通構造ならばHQMのような“マスター配信”が可能になるのです。HQMではマスターデータをDVD-Rにとして配布するサービスも行っており、こうした意味でもこれまでの音楽流通構造を覆す可能性を秘めています。
しかもHQMにはDRMがありませんから、ディスクに焼いてもよいですし、自由にバックアップもとれますから、「CDよりよい音」「使いやすさ」の両方を実現しているのです。PS Audio「PerfectWave」では、ディスクに焼いたデータを再生するというやり方で、配信データといえども、これまでのCDづかいと同じ感覚で演奏できるのが、とてもヒューマンですね。現在はカメラータ・トウキョウが提供する室内楽音源を中心に配信していますが、それ以外のヴォーカルやジャズなどの音楽も聴きたいですね。
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