漫画・アニメの「非実在青少年」も対象に 東京都の青少年育成条例改正案(2/2 ページ)
ネットで広がるアクション
ネットでは改正案に対するアクションが広がっている。谷分章優(himagine_no9)さんは都議会図書館で複写した改正案をネット上に公開した。
AGathoclESさんは、問題の概要やリンク、陳情先などをまとめたまとめサイトを開設。ブログ「3日坊主のメイドさん」では、この問題について議論した集会の様子をリポートしている。兎園さんはブログに、現行の条例と改正案を対比して全文掲載し、「違憲でない項目を探すことの方が難しいくらいの凄まじい規制のオンパレード」と批判している。
掲示板などでは、各都議に対しメールで意見を表明するなどの活動が盛んに報告されている。
「日本の表現が窮屈に」――現場から反対の声
漫画の現場からも反対の声が挙がっている。
「バカバカしくて、そもそもこんな案が出るだけでも大丈夫か?と思う」――漫画家の高河ゆんさんはTwitterで批判。ゾーニングの問題だと指摘している。
漫画評論家の藤本由香里さんはmixi日記で問題をまとめ、反対の声を挙げている。
「キャラクター表現へのはっきりとした蔑視」
漫画編集者出身のノンフィクションライター・堀田純司さんは、ITmediaの依頼に対し、以下のコメントを寄せた。
僕は20代のころ、ある青年漫画誌の編集部に所属していましたが、そこでは漫画について“人間の欲望の全肯定である”と教わったものでした。漫画表現が人間の欲望の反映であるならば、当然そこには性的な表現も含まれます。今回の改正では「非実在青少年」として、キャラクター表現における性描写を規制の対象にしていますが、これには2つの問題があると感じます。
まず1つは、同人活動などでは、非商業ゆえに大胆な描写の漫画表現が存在します。しかしこうしたアマチュアのファン活動こそが、日本のキャラクター表現の豊かな土壌となっており、今回の規制はこの分野を直撃します。もう1つは、何が有害なコンテンツであるのか、その基準があいまいであること。表現とは時に死と愛に踏み込むものであり、読むものの感情にゆらぎを与えるからこそ表現と言えます。
こうした領域で、何が有害で有害ではないのか、本当は誰にも判断することは難しいものです。難しいからこそ、改正案の文面もあいまいになっていることを、この案を考えた人は自覚したほうがいい。あいまいな領域を恣意的に「有害である」と解釈されてしまう風潮が高まれば、日本の表現はずいぶんと窮屈なものになるでしょう。
大手出版社からの刊行物でも、各都道府県で有害図書に指定されることは案外、少なくないものです。それが出版物の大多数が消費される東京都でこうした規制が行われると、表現の活力が大きく奪われかねない。高名な文芸作品とされているものでも、アウトのものが出てくるでしょう。文字はよくてキャラクター表現だとアウトなのでしょうか?
実写による児童ポルノとは違い、キャラクター表現には被害者はいません(前者への規制は必要だと考えます)。また青少年への悪影響も検証されてはいません。こうした検証が行われないままに、かくも感情的な規制が行われるのは、上のような問題があり、あまりにも影響が大きいので賛成できません。
「青少年を性的対象として扱う図書や映画がまん延させることで性的対象として扱う風潮」という内容が改正案には出てきます。この風潮を「助長すべきではないという機運の醸成に努める」とされているのですが、しかし、そもそもそんな風潮は存在するのでしょうか。
アダルトゲームメーカーはどこも経営がかつかつ。5000本売れたら大成功という、ささやかなペイラインでせめぎあっているのが実情です。
逆に一般ユーザーにまで話題になるほど売れている作品は、むしろ性表現はソフトです。漫画作品でも同様です。ハードなものも存在しますが、これらはむしろニッチといってよく、「青少年を性的対象として扱う図書や映画がまん延」という風潮が、本当に存在するかどうか大いに疑問を感じます。それで売れるのなら、むしろ自分も参入したいくらいですが、そんな簡単なものではないでしょう。
世界を白と黒に分け、黒いものを抹消すれば物事がよくなるという思考は非常に危険です。もし青少年によくない影響を与える風潮があるのであれば、それは虚構ではなく、現実そのものでしょう。何の検証も行われないままに不快な虚構を抹殺してしまうのではなく、どんなに回り道であっても、この現実社会そのものをよりよくしていくことが、文化的な国のやり方ではないでしょうか。
今回の改正案については、オタク文化への無理解というよりも、キャラクター表現へのはっきりとした蔑視を感じます。もともと、漫画の神様、手塚治虫さんは、自分が医学博士号を持つことで、漫画への偏見が収まればと考えていたといいます。永井豪さんは、「ハレンチ学園」(1968年連載開始)のときのバッシングは、身の危険すら感じるほどだったと語っています。
バブル崩壊後、失われた10年を経てすっかり実業分野に自信を失った日本社会は、キャラクター表現が海外で評価されているのを知り、それを「クールジャパン」などともてはやすようになった。そして、かつてのような偏見、批判は下火になったかのように見えました。しかし、ある特定のイデオロギーに凝り固まった人や、文化に対して視野の狭い人が集うコミュニティでは、かくも古色蒼然とした偏見が、まだあることを痛感させられます。白昼にネッシーが多摩川をゆうゆうと泳いでいるのを見た気分、といいましょうか。
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