アナログシンセ×ボカロ
ライバル楽器メーカーのiPadアプリ呉越同舟ライブを見てきた@DOMMUNE
Ustreamのクラブイベントとして有名なDOMMUNEで、iPad楽器アプリをリリースしたばかりのコルグとヤマハが激突。その現場「GEEK×PLAY#1」に潜入することができた。
iPadアプリとしてiELECTRIBEに続きiMS-20をヒットさせたコルグから開発者の福田大徳氏が、ヤマハからはVOCALOIDをiOS化したiVOCALOIDを開発した赤澤英治氏がまず登壇。KORG DS-10、M01、iMS-20の企画・開発に関わった佐野電磁氏(DETUNE開発本部長)の絶妙な司会により進められた。
「まさに呉越同舟」と佐野氏が表現したとおり、同じ電子楽器というジャンルで競い合うライバル企業であるコルグとヤマハが同席し、お互いが「すごいアプリケーション」と自負する製品でコラボするのは前代未聞。製品の説明だけではなく、両社の製品になじみのある4組のアーティストが2つのiPadアプリを駆使した楽曲を披露。
福田氏は「iPadにこれだけにつまみがあるアプリはない」というiMS-20のパネルを紹介。1978年に発売されたアナログシンセサイザーの名器MS-20とアナログシーケンサーのSQ-10を駆使したサンプル曲をDOMMUNEの高品質なPAから聴くと、すごい出音。
テンプレートからKAOSS PADを使ってサウンドメイキングをしていく様子を実演。スケールを固定できるので、指をグリグリ動かすだけで音楽になるのだ。できあがった曲は「YouTubeの音版」とも言えるSoundCloudにiMS-20から直接送り込んだり、人が作った曲のセッティングを読み込んで自分が演奏し、また投稿といったことができる。このSoundCloudの担当者とは、Appleの開発者会議WWDCで直接話をして口説いたという。
iPad版、iPhone版両方のiVOCALOID開発を手がけるヤマハ 研究開発センターの赤澤氏は、まずiPad版のiVOCALOID-VY1を使い、即興で入れた歌詞と音程を指定して、VY1の歌声で再生させてみせた。「今夜もスキヤキ」という歌詞の「スキヤキ」を「コルグさん」に入れ替え、VY1のメロディーを変えたり、ビブラートの深さやピッチベンドを手軽に変更できることを実演した。Windows版ではこうした表現の変更はかなり難しいが、iPad版では簡単だと赤澤氏は説明した。別コンセプトのiPhone版iVOCALOID-VY1tの説明も行われた。
佐野氏は「VOCALOID仮歌を許すかどうか」という問題を提起。「作り手が完璧な仮歌として出してきた場合、そのまま使えばいいじゃん、ということにならないか」「サンプラーが出たときにドラマーいらない議論があったときみたい」といった興味深い議論がプロの作り手の中で起きているようだ。
sasakure.UK
sasakure.UK氏は、「カンパネルラ」「ハロー・プラネット」という自身のヒット曲をiMS-20とiVOCALOID-VY1でリメイク。変拍子を多用した複雑な楽曲を、iMS-20のソフトウェアキーボード、KAOSS PADを駆使してバッキングし、さらにリアルタイムでiVOCALOIDのボーカルを適宜歌わせる「ポン出し」という困難なプレイに敢えて挑んだ。
iVOCALOID-VY1で唯一リアルタイムに発音させることができる、ピアノロールの左端にある鍵盤演奏も組み込んでいた。
iMS-20はsasakure.UK独自のチップチューンを見事に再現。KAOSS PADでランダムノイズ風なクライマックスを再現するなど、見せ場もたっぷりだった。
baker
DS-10、VOCALOIDの両方の世界で有名なbaker氏はなんと「きょう作ってきた」という楽曲。わずか半日でこれだけのものを構築できるとは。
VOCALOIDは「歌もの」にするというのが普通の考え方だが、baker氏はあえて効果音的なサウンドを出そうと考えた。iVOCALOIDのBPMを本来の2倍(256BPM)にして解像度を上げ、Dyn(音量)を細かく上下させることによりサイドチェイン風のサウンドを作り、iMS-20をそれに合わせていくというアプローチを取った。
現状のiVOCALOIDはスタートボタンを押しても遅れなしで発音することができないため、リアルタイムで伴奏に合わせるのが難しい。それを回避するクレバーな手法と言える。
サイモンガー・モバイル
あとで「朝からすごく緊張しました」と見かけによらず弱気な告白をしたサイモンガー・モバイル氏。VOCALOID界隈では馴染みがない一人ファンクユニットだが、珍妙な歌詞とファンクの組み合わせは異色のDS-10使いとして知られている。DS-10ではそもそも歌ものが少ないのだが。
今回は、サイモンガー氏自身の歌と、VY1の歌声をハモらせるという、ポン出しが困難なiVOCALOIDではとても危険な技に挑戦し、見事に成功させた。「母親のパンチラ」という曲ではVY1に「パンチラー」と歌わせている。「BABA1960」「あの大物が、できちゃったコン!?」ともに、iTunes Storeで絶賛発売中だ。タイトルのせいか「母親のパンチラ」の売れ行きがよくないそうなので、応援してあげてほしい。
Denkitribe
baker氏と同じくDS-10とVOCALOIDの双方で人気のDenkitribe氏は、iMS-20に深く関わっている。非常の複雑なパッチングを駆使したDenkitribe氏のテンプレートがiMS-20にプリセットされているのだ。今回のメンバーでは唯一、iMS-20 v1.1で導入されたCoreMIDI対応を利用。iPadのCamera Connection Kitを経由してコルグのMIDIコントローラであるnanoKONTROLを接続し、音色コントロールはほぼnanoKONTROL側で行い、iPad側はパターン切り替えとKAOSS PADでのプレイにほぼ専念。途中でnanoKONTROLを切り離し、iPadを客席に持ち込んでKAOSS PADをプレイ。指を適当に動かしていればなんとかなるKAOSS PADの特色をうまく生かして、観客に操作させていた。わたしもグリグリやったうちの一人だ。
iVOCALOID-VY1はKAOSS PAD KP3に接続されており、ループ再生をうまく使ってコーラスの効果を出し、浮遊感のあるDenkitribeワールドを構築。ポン出しのタイミングを合わせるコツとしてDenkitribe氏が教えてくれたのが、あらかじめ目的の楽曲を押しておいて、正しいタイミングで離すこと。離すときのタイミングでシーケンスがスタートするので、そのほうが合わせやすいそうだ。
次回は?
モバイルデバイス向けのアナログシンセサイザーとしてはニンテンドーDS向けのKORG DS-10、M01、ガジェット的ハードウェアとしてはKAOSSILATOR、monotronとヒットを飛ばしてきたコルグ。VOCALOIDのiOS対応でモバイル楽器に注力始めたヤマハ。
この両社が組むことで、iPadを2台持ちしたくなるようなプレイを満喫できた今回のGEEK×PLAY#1だが、関係者によれば、早くも次の回が押さえられたという。#2がどのような布陣になるかは分からないが、3月ごろに何か企画されているようなので、楽しみにしてほしい。
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