山形豪・自然写真撮影紀
アフリカ、サファリの勧め
車によるゲームドライブ
サファリと言えば最も一般的なのが、車で動物たちの暮らすエリアに出向いて行く方法だ。これをゲームドライブと呼ぶ。ランドクルーザーやランドローバーなどの、車高が高くパワーのある四輪駆動車に乗って、日本では想像もできないような悪路や道なき道を進み、ライオンやゾウ、チーターなどを間近で観察する。
何世代にも渡って動物たちが車に慣らされてきた場所では、信じられないほど近くからの撮影が可能だ。東アフリカのセレンゲティ国立公園やマサイマラ動物保護区では、チーターが獲物を探すために車の上に乗ってきたりもする。
サファリカーの仕様は地域によって若干異なっており、通常、東アフリカでは、車の天井が開くようになっている。そこから頭を出して動物たちを観察/撮影する。一方で南部アフリカでは、屋根そのものがないオープンカーを用いる場合が多い。オープンカーの方が視界が広い分、撮影には適しているのだが、吹きさらしであるため、乾季には埃をかぶりまくり、雨期には雨ざらしになったりもするので、撮影機材への負担が大きい。
ウォーキングサファリ
サファリにおける二番目の移動手段、それが徒歩だ。これはウォーキングサファリと呼ばれ、ライフル銃を持ったレンジャー/ガイドと一緒に、歩きながらアフリカの自然を体感するものだ。
通常のウォーキングサファリは早朝や夕方の涼しい時間に宿を出発し、平坦な場所を2時間程度歩いて回る簡単なものだが、中にはキャンプ道具一式をすべて自分で担ぎ、何日もかけて長距離を踏破するハードなものもある。徒歩でライオンやゾウがいる場所を歩いて危険は無いのかと言うと、リスクはゼロではない。それ故に銃を持ったガイドが同行する。彼等は動物の習性や、どこまでなら安全に近寄れるのかと言った専門知識を身につけているのだ。
ウォーキングサファリの最大の魅力は、大地を自らの足で踏みしめ、草木に直接触れられる点にある。また、昆虫などのマクロ撮影を行うなら徒歩しかない。ただし、ウォーキングサファリは鳥類や大型動物の撮影には適さない。地面を歩いている人間を動物たちは極度に警戒するからだ。車でなら容易に接近できるキリンのような種ですら、二本足のヒトを見ると一目散で逃げ去ってしまう場合が多い。また、車からの撮影と違い、大量の機材を持ち運ぶわけにも行かないので、自ずと撮影内容は限定される。
ボートサファリ
大型河川や湖沼のある一部地域では、アルミ製のモーターボートでのサファリが人気を集めている。
代表的なのが、ボツワナのチョベ国立公園だ。ここはアフリカゾウの数がとても多いことで世界的に知られている場所で、チョベ河という、通年水流の途切れない大型河川が流れている。そのため水を求めて多くの野生動物が集まってくるほか、ワニやカバといった水辺の生き物、そして水鳥の種類が非常に豊富だ。日本からの南部アフリカ周遊ツアーには必ずと言って良いほど組み込まれており、サファリのメッカのひとつである。
ボートサファリの利点は様々ある。まず、撮影対象への接近距離の短さ。大型哺乳類や鳥たちは、陸上から接近するものを非常に警戒する。ところが、水に浮いているものに対しては至って寛容なのだ。恐らくその理由は、水上から接近する捕食動物がいない点にあるのだろう。水を飲みに川辺にやってきた哺乳類にとって、最大の脅威はワニであるが、これは水上ではなく水中から接近してくる。ライオンやヒョウなどは当然陸上からだ。
ボートのもうひとつの利点は目線が低いことだ。生き物を撮影する際、できる限り相手と同じ目線で撮ることが望ましい。その方が臨場感が生まれるからだ。サファリで一般的に用いられる大型四輪駆動車からだと、車高の高さ故に、好ましくないアングルになってしまうケースがままあるのだ(もちろん、アフリカゾウやキリンは例外だが)。
撮影にしろ観察にしろ、同じ場所でも移動手段が違うだけで周囲の環境は全然違って見えるし、動物たちの反応も変わってくる。そのことを理解すると、サファリは一層楽しいものになってくるのだ。
著者プロフィール
山形豪(やまがた ごう) 1974年、群馬県生まれ。少年時代を中米グアテマラ、西アフリカのブルキナファソ、トーゴで過ごす。国際基督教大学高校を卒業後、東アフリカのタンザニアに渡り自然写真を撮り始める。イギリス、イーストアングリア大学開発学部卒業。帰国後、フリーの写真家となる。以来、南部アフリカやインドで野生動物、風景、人物など多彩な被写体を追い続けながら、サファリツアーの撮影ガイドとしても活動している。オフィシャルサイトはGoYamagata.comこちら
【お知らせ】山形氏の著作として、地球の歩き方GemStoneシリーズから「南アフリカ自然紀行・野生動物とサファリの魅力」と題したガイドブックが好評発売中です。南アフリカの自然を紹介する、写真中心のビジュアルガイドです(ダイヤモンド社刊)
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