東芝、眩しいほど明るいHDR対応テレビの試作機を公開――消費電力なんと2キロワット
東芝は9月16日、眩しいほど明るいHDR(High Dynamic Range)対応テレビ試作機「7000nit HDRパワーディスプレイシステム」を公開した。現在市場にあるHDR対応(予定)テレビのおよそ10倍にあたる7000nitというピーク輝度を実現し、圧倒的な明るさを実現したモデル。このまま市販する予定はないが、試作機で培った技術は秋冬商戦向けの液晶テレビ“レグザ”ハイエンドモデルに投入する。
「7000nit HDRパワーディスプレイシステム」を開発した目的は、「HDRの効果を最大化するため」。本格的なHDR実現に向け、バックライト技術とパネル技術を磨くためのリファレンスモデルという位置づけだ。同社設計統括センターの近江邦夫氏は、「東芝は、映像を見る感動を最大化すること、リアリティーを追求することに力を入れてきた。しかし、(HDR対応4Kテレビなどの)新しい物を作るとき、“次に求められるレベル”だけを目指すと不十分になる可能性がある。社内会議などではよく“とことん”というキーワードが使われるが、今回はとことん高輝度、とことん高画質のものを作ろうと考えた」と開発の背景を語った。
7000nitsのピーク輝度を用いれば、UHD Blu-rayに収録される1万nitまでのHDR信号をほぼ忠実に再現できる。そのために名称の通りパワーのある直下型LEDバックライトに4K解像度のVA液晶パネルを組み合わせた。またHDRで拡大したダイナミックレンジと情報量、新映像エンジンによって色再現性も大幅にアップ。色域の拡大は、従来よりも“正確な色”を表示できることになる。なお、試作機の色域はUHD TVの標準規格「BT.2020」比で約85%――これは現在のハイビジョンテレビ標準である「BT.709」比では約150%に達する数字だ。
開発にあたり、課題になったのはLEDモジュールからの発熱だった。白熱灯や蛍光灯に比べればはるかに効率の良いLEDでも求められる明るさのレベルがこれまでとは違う。そのぶん発熱も膨大で、試作機の液晶パネルは裏側全体にペルチェ素子と放熱ファンによる冷却システムがずらりと並ぶことになった。さらに背面のファンから放出された熱を素早く取り除くため、本体下部にも大型ファンを設けて上向きに風を送る仕組みになっている。
こうした大がかりな冷却システムを設けた結果、システム全体の消費電力はなんと約2キロワットに達した。一般家庭には絶対に導入できない仕様となったが、そのぶん画質は圧倒的だ。
画面に映し出されたデモ映像はとてもパワフル。日差しの降り注ぐ風景映像では眩しいほどで、画面から伝わってくるはずのない“暑さ”すら想起させた。サングラスをかけてリゾート気分に浸りたくなる。さらに既存のテレビでは出しにくい青空も人の目で見る実際の色に近く、同時に自然な奥行き感を持って広がっていた。試作機は58V型だが、テレビの画面というより、よく掃除された窓から実際の風景を見ているようだ。
「NETFLIX」提供の4Kコンテンツも試聴した。これはHDR製作ではなく、現在配信されているものを擬似的にHDR化したというものだが印象は全く異なる。もともと迫力のあるシーンがよりダイナミックになることに加え、ネット動画の情報量の少なさを感じさせなくなるという副次的なメリットも感じられた。
「現在、映像機器の重要なトピックスはHDR対応だ。東芝は、3年ほど前から構想を持って開発を進めてきたが、ようやく“ほぼ実現”に至った」(近江氏)。
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