交換レンズ百景
ちょっと不思議だが、独特の空気感のある描写――ニコン「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」
ニコンから、焦点距離105mmにおいて世界初となる開放F値1.4を実現した高品位なレンズが登場した。「AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED」である。上品でスムーズなボケ味と奥行き感が魅力な大口径中望遠単焦点レンズの実力は素晴らしいものであった。
85mmよりやや長い105mmという焦点距離は、ニッコールレンズを使ってきたフォトグラファーなら馴染みのある長さだろう。今までも銘レンズが存在したが、開放F値1.4を達成したこのレンズはなかなかの重厚感である。フィルター径82mm、9群14枚でEDレンズ3枚、ナノクリスタルコート、フッ素コートを採用したこのレンズは約985gとズッシリ感がある。ただ今回インプレッションに使用したニコンD810との重量バランスは悪くなく、むしろ安定感が増したような印象を受けた。
写りは極上だ。ニコンが提唱する「三次元ハイファイ」設計思想を受け継ぎ、なだらかで美しいボケ味と際立つ立体感、そして開放でも遠景をシャープに写し出す解像力が魅力だ。
AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gのような、ちょっと不思議だが、独特の空気感のある描写が楽しめるレンズとなっている。オートフォーカスも高速かつ正確で、高画素機のニコンD810とのマッチングも満足のいくものであった。ポートレートから静物、風景まで格調高い絵を提供してくれることだろう。
美瑛の早朝をチョイ絞りで撮影した一枚。手前にある建物のシャープさとクリアさ、畑のディテールの連続感、そして日が昇りつつある山の端まで、リアル感ある描写である。
夜明け前、牧場の白い柵を絞り開放で撮ってみた。アンダー目に露出を設定したが、立体感と空気感、そして背景のスムーズなボケ味とどことなく不思議な写りに仕上がった。周辺光量落ちが雰囲気を増幅してくれた。
デジカメやiPhoneカメラのレビューなどでお馴染みの荻窪圭氏を絞り開放で。ランチ中のヒトコマだが、古道研究家としても著名な同氏の瞳を正確に捉えた。フォーカス面にある髪の毛は実にシャープに、それ以外の部分はなだらかにボケており、人物撮影レンズとしてとても好ましい描写であると感じた。
あまりにも描写が素晴らしいのでF1.4開放ばかりで撮ってしまいがちだが、少し絞ると解像感と立体感がググッと高まってくる。メタルとガラスの冷たく硬質な写りと、見た目そのままの色再現性がいい感じである。
路地裏で出会った美しいノラネコを開放でシューティング。細かな動きを繰り返すネコの瞳に確実に合焦するオートフォーカスが頼もしい。もちろんそのリアル感ある毛並みと、自然で上質な背景ボケも見逃せない。
このレンズは確かに大きく重たいクラスに分類されるが、この明るさ、そしてシャープさとボケ味の両立、高速で正確なオートフォーカスを考えると、ちょっと食指が動いてしまうのではないだろうか。85mmとは違う遠近感も魅力的だ。
札幌の夜景を小高い丘からチョイ絞りで撮影したが、ヌケもよく高い解像感と各種収差補正も良好で、オールジャンルで活躍できる一本になっていると実感した。フードの造りだけがやや心許ないが、それ以外はパーフェクトに近い感触を得た。
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