で、ぼくらはいつ自動運転車に乗れるんですか? 研究歴20年、金沢大学 菅沼准教授に聞く(7/7 ページ)
――最近の自動運転技術に関する報道を見ていて、当時と熱量の違いは感じますか。
それは違いますね。2013年初頭ぐらいまでは、私が知る限りメディアの報道なんてほとんどなかったんです。日本の学術機関で自動運転関係の発表をする人もほとんどいませんでした。誰も実現できると思っていなかったんでしょうね。
海外の国際学会など、本当に自動運転に取り組んでいる研究者が集まるところだと、似たような研究の議論はあったんですが。2012年ごろの国際学会で、自動運転のシステムが世に本当に導入されるのは何年ごろかとアンケートをとったら「50年後」みたいな話をしていました。
でもそれから1~2年で、少なくとも日本国内ではメディアの報道ってものすごく増えましたよね。2013年の夏秋ごろから徐々に増えていって、2015年には爆発的に報道が増えたなという印象があります。
そうなってくると、いままで役に立たないというか、実現性が高いかどうかも分からないものだったのが、なんとなく「もしかしたら実現するかも」と思われ始め、「役に立つかもしれない」という発想が出てきて、いまの盛り上がりにつながっているんでしょうね。
――最近「第3次AIブーム」といわれていますが、それも関係していますか。
それによってスピード感が上がった部分はありますが、なくてもそれなりに動くものはできていたと思います。
ただ、AIのいいところは何かというと、データを大量に集めれば、何らかの結果を導くための方策を自動で出してくれるところです。
われわれ研究者が10年くらいかけて作り上げてきたシステムも、いまなら民間のエンジニアの人たちがデータを大量に収集し、(AIに学習させて)似たようなものを作れるようになった。資金力があったり、人をたくさん雇えたりするような企業が、スピード感を持って勝負できるようになってきたんです。そうやって自動運転の開発のスピードが上がるのは大きいと思っていて。
――クルマに積むAI的な機構そのものというより、そこにいたるまでの道のりが圧縮されるんですね。開発の裾野が広がるというか。
そうですね。
――自動運転車が実用化され始めたときに、世の中は変わりますか?
変わると思いますね。おそらく街づくりが変わるんじゃないかと思います。
例えば昔はあちこちの街を路面電車が走っていましたが、いまではほとんど見かけなくなりましたよね。なぜなくなったかというと、モータリゼーションで路面電車よりも便利なものが社会に入ってきたから、町が一変しちゃったんです。それと同じように、自動運転車が「新しい乗り物」として入ってきた場合、いまの街のスタイルって効率的ではないかもしれない。そのための街づくりが、がらりと変わる可能性があると思うんですよね。
本当にそうなるかは別として、例えばコンビニやスーパーマーケットに駐車場って本当に必要なのかとか。それに交通量の多い道路であれば、そもそも一般のクルマは入れなくしてしまうような街づくりの考え方もできるでしょうし。
地方に目を移すと、人口が減少していって公共サービスを維持するのが難しくなる地域で、ある程度の集約化を図ろうとする「コンパクトシティー」の構想があります。本当に街を凝縮させるとなると100年や200年かかってしまう可能性もありますが、拠点間を自動運転車で結ぶとか、地域内で自動運転車をモビリティサービスとして提供するとか、そういった発想もできます。
――なるほど……。まじめなお話のところ大変恐縮なのですが、駅の近くじゃないところにいい飲み屋さんがあったりするじゃないですか。そうすると、飲んだら帰れないじゃないですか。帰れるようになるかもしれませんね。
ありえるかもしれませんね。私も何を隠そうお酒大好きなんですが(笑)。普段の生活の中で、お酒を飲んだらどこにも行けないっていうのが変わるだけでも確かにうれしいんですが、それをメインで言ってしまうと、なかなか社会に受け入れていただけないというのもあってですね……。
ただ私、夢がありまして。これまで20年ほど研究してきて、定年まであと20年くらい。ちょうど20年後というのが2030年代後半から2040年代前半くらいなんです。そのタイミングで私が定年退職するとき、送別会で飲んだあとに自動運転のクルマで家まで帰れたら、私の仕事はできたと。
――最高ですね。
最高ですよね。というのが私の夢なんです。
――最高ですね。ありがとうございました。
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