行政にもRPA導入の波 「あらゆる業務が対象になり得る」──神奈川県の実証事業で見えてきたもの(3/3 ページ)
業務を「見える化」したことで現場では新たな発見も
導入時の準備段階で苦労した点はあるのか。実際に所管課と共同で準備作業に携わった矢部さん(総務局ICT推進部情報企画課プロジェクトマネジメントグループ主事)によると、「現場では以前から手順書やマニュアルが用意されていたが、それは人間が見て理解できるものであり、RPAの設計を前提としたものではない。ロボット向けに理論化した設計書を新たに作成した」と説明する。
具体的には、業務フローの分析から入り、作業のプロセスを詳細に洗い出し、見える化するところから着手。所管課と何度もミーティングを重ね、「約3週間の時間を要した」(矢部さん)という。
一連の準備を通して、「見える化・理論化」したことで、新たな発見もあった。ロボットの設計という観点だけでなく、所管課の方でも、実際の業務上の改善点が浮き彫りになったという。
RPA的な視点から「見える化」することで、非効率な部分があるにもかかわらず、慣習的に行われていた業務の見直し効果があった。
その一方で、職員の一部にはRPAに懐疑的な見方もあったようだ。
「ロボット」という単語からAIのような万能ツールを連想する人もいて、「100%の結果が得られないことを不安視する声もある」(井上さん)という。つまり、ロボットという単語から、完璧な成果を期待するあまり、現実とのギャップに戸惑ってしまう事例だ。
「われわれICT部門が、部分導入の効果など、RPAの本質を理解してもらえるよう、説明する努力が必要だと感じた」(矢部さん)
今回の2つの業務は、原則的に人事異動のタイミングで多く発生するものだ。頻度という意味では、常態的に行われる業務ではない。とはいえ、そのような一時的な業務にRPAを導入する意義はあったのだろうか。たまにしか発生しない業務なら、ROI(投資利益率)の観点から、従来通り人力のままでも問題はないのでは、という疑問だ。
足立課長は「十分に効果あり」と断ずる。県庁では、年度末や年度初めの繁忙期に業務が集中する傾向がある。その中の単純作業をRPA化することで、時間外勤務の減少や平準化に大いに効果ありという結論だ。職員のワークライフバランスへの取り組みという視点からも、うなずける判断であろう。
ちなみにこの実証事業の予算は、富士通と大崎コンピュータエンヂニアリング(東京都品川区)の協力を得て無償で実現したもので、県の費用負担はないという。
自治体の業務には、PCを使った単純作業が思いの外多いと聞く。投資対効果を考えると、システム化することは困難なものがほとんどかもしれない。
一般市民の感情からすれば、自治体の職員がそのような単純作業に時間を忙殺されるより、付加価値の高い働き方をして欲しいという思いもある。自治体のRPA導入がその一助となるのであれば、税金の使い道として、反対する人はいないのではないだろうか。
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