「昨今まれに見る最悪の意見」──デジタル庁の議論「データ共同利用権」に専門家が異議 “プライバシーフリーク”鈴木教授に論点を聞く(2/3 ページ)
データ活用は、既存法の改正や新たな立法で実現できる
鈴木教授に今回の提案の懸念点を聞いた。
鈴木教授はデータの自由な流通には賛同する立場だ。デジタル庁の設立や、日本政府が進めるデータ国際流通の枠組み「DFFT」(Data Free Flow with Trust、信頼されたデータの自由な流れ)については「日本の国際競争資力を高める最後のチャンス」と見ている。だからこそ現状の議論への懸念を隠さない。
「大事なことは、個人情報の活用に当たって『同意の有無』を問題視する手続き論よりも、人権侵害があるかどうかだ。個人情報が人権侵害に使われた事例には、ヨーロッパではナチスのユダヤ人虐殺がある。日本でも、ハンセン病患者の強制隔離があった。最近では『リクナビ事件』がある」
リクナビ事件では、就活生から得た個人情報を基に推定した「内定辞退率」を、就活生に不利な材料として使われる可能性があるにもかかわらず、企業側に提供したことが問題とされた。問題の本質は手続きを守ったかどうか以前に、そこに人権侵害があったか否か、ということだ。
「今までの個人情報保護法は形式的かつ手続き的な規律にすぎなかった。利用目的を示して同意を取るなら『人権侵害となっても内定辞退率予測をしてもいい』という結論になってしまう」と鈴木教授は指摘する。
このような法律の不備を、立法の努力の積み重ねで解消していくことが本筋であり、その努力をせず「データ利用の同意を得るかどうか」の手続きだけを問題にするのは本末転倒というわけだ。
実際、努力は続いている。2020年6月、個人情報保護法一部改正法案が国会で可決された。「今回の個人情報保護法の改正案では『不適正な利用の禁止』が入った」(鈴木教授)
「必要なことは、個別の領域に応じた、憲法の理念を個別の具体法に落とし込む形の緻密な立法に基づくデータ活用だ」と鈴木教授は言う。今の段階で「ふわっとした」新概念を持ち出すことは、むしろ有害だとするのが鈴木教授の立場だ。
「サービスごとに各論で悩むべきだ。適正な利用目的を法律で根拠付けていくことが必要だ。ふわっとした表現の『公益』があれば良しとする態度は、説明不足を助長する」(鈴木教授)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
資さんうどん、従業員の退職理由などが外部から閲覧可能に 委託先の勤怠システムに設定不備
-
2
NEC、委託先の情報漏えいで謝罪 「セキュリティ事業を手掛ける企業として反省」
-
3
VTuber「兎田ぺこら」グッズにSNSで風評被害→示談成立 「保護者同伴で謝罪などがあったため」
-
4
JALの予約システムに不正アクセス 約9万人分の予約情報が漏えい 一部ではパスポート番号も
-
5
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
6
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
7
「対策を後回しにしたサーバが軒並み狙われている」 相次ぐ不正アクセスにラックCTOが警鐘
-
8
GMO不正アクセスの犯人サイト、ドメイン停止を確認
-
9
Anthropic、独自の“創薬活動”に着手 社員1人のバイオ企業を買収、小児難病の治療薬研究を進める
-
10
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR