Innovative Tech
スマホの“カメラ部品の揺れ”から周囲の音を盗聴する攻撃 マイクは不要 米国の研究者らが実証
Innovative Tech:
このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。Twitter: @shiropen2
米ミシガン大学、米フロリダ大学、米ノースイースタン大学に所属する研究者らが発表した論文「Side Eye: Characterizing the Limits of POV Acoustic Eavesdropping from Smartphone Cameras with Rolling Shutters and Movable Lenses」は、音波によって揺れるスマートフォンのカメラ部品から音声を復元する研究報告である。
スマートフォンのマイクにアクセスできない場合でも、スマートフォンアプリを使用して音声を盗聴できる方法となる。
膜を前後に素早く揺らすと、空気中に音波が発生し、それが音として聞こえる。音波は、1秒間に数千回という非常に速いスピードで物体を前後に揺らすことが分かっている。
この音波は空気中を伝搬し、障害物に接触することで微小な揺れを引き起こす。そのため、スマートフォンにも影響を及ぼし、今回はこの音波をスマートフォンのカメラで検出し、その中から音声信号を抽出することで盗聴する手法を提案する。
具体的には、音波がカメラのコンポーネントに与える影響によってスマートフォンカメラのビデオストリームの変化を観察する。
前提条件として、スマートフォンのマイクはOFFにしておいていいが、カメラをONにしておく必要がある。カメラはどこに向けておいてもよく、何もない天井や床を捉えていても機能する。
音波によってカメラの小さな機械部品が揺れ、それがカメラの映像に小さな変化として現れる。特に、カメラのCMOSセンサーが1フレームずつ撮影している間に音波によって微小に揺れたり、カメラの可動レンズ(手ブレ補正やオートフォーカス機能をサポート)のスプリングやワイヤが揺れたりすることがある。
そして、映像にアーチファクトが発生するので、揺れを引き起こした音の周波数成分の一部を、HuBERT(Hidden-unit Bidirectional Encoder Representation from Transformers)というニューラルネットワーク変換器を使って信号から音声に変換する。
実験では、盗聴するスマートフォンと被盗聴スピーカーを同じ部屋に置いて行われた。数字データセットを用いて評価した結果、Google Pixel 3においては、10桁の数字の分類で80.66%の精度、20人のスピーカーの分類で91.28%の精度、性別分類で99.67%の精度が確認された。
Source and Image Credits: Y. Long, et al., “Side Eye: Characterizing the Limits of POV Acoustic Eavesdropping from Smartphone Cameras with Rolling Shutters and Movable Lenses,” in 2023 2023 IEEE Symposium on Security and Privacy(SP)(SP), San Francisco, CA, US, 2023 pp. 1032-1049. doi: 10.1109/SP46215.2023.00059
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
2
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
3
GMO、不正アクセス実行犯の手がかりに懸賞金 1億5000万円規模
-
4
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
5
GMO、攻撃者の公開情報に「アクセスは絶対に控えて」 悪質な拡散者には法的措置を準備
-
6
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
7
So-net、会員情報約259万件が漏えい 一部メールサービスではパスワードも流出
-
8
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
-
9
IPO目論見書に「AIは人類の存亡リスク」「コードの9割はClaude製」 Anthropicが示した規格外の見立て
-
10
GMO不正アクセス、犯人側は「27日に顧客のPC攻撃」予告 GMOが端末回収、ホワイトハッカーが解析中
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR