“硫化水素”中毒の解毒剤、同志社大と佐賀大が開発 「多くのガス中毒患者の命を救える」
同志社大学と佐賀大学の研究チームは12月10日、硫化水素中毒の解毒剤の開発に成功したと発表した。研究チームが開発した人工ヘモグロビン化合物「hemoCD」で、硫化水素中毒の解毒作用を確認。解毒剤の投与後は、すぐ尿として排せつされるため安全性も高く、救急救命時の利用にも適しているという。
硫化水素は、火山や温泉地などで自然発生している腐卵臭を示すガス。空気よりも比重が重く、地下にたまりやすい性質を持つ。低濃度では独特の臭いを発するが、濃度が上がるにつれ嗅覚がまひして臭いを感じなくなり、毒性も顕著に現れるため死に至る可能性も生じる。
石油・ガス生産工場などでも生じる化学物質だが、その取り扱いにはとても注意が必要。中毒が発生した場合、患者本人だけではく、居合わせた医師や看護師にも2次被害が生じる危険性があるからだ。中国では10月、バイオ工場で硫化水素中毒が起き、7人が死亡している。一方、現在は硫化水素中毒に対し即効性のある治療薬は医療実装されておらず、酸素換気でゆっくりと寛解させるしか方法がないという。
研究チームは2023年、一酸化炭素とシアン中毒の同時解毒剤である「hemoCD-Twins」を開発していた。その構成成分である「hemoCD-I」について検証を進めたところ、硫化水素と反応したhemoCD-Iは空気中の酸素と反応することで、有毒な硫化水素から無毒な硫酸イオン、もしくは亜硫酸イオンへと効率よく変換することを見つけた。
マウス実験では、致死量以上の硫化水素ナトリウムを投与して中毒症状が出た後すぐにhemoCD-Iを投与することで、約8割のマウスが死亡を免れ、迅速に体内パラメーターが回復することを証明。投与したhemoCD-Iは分解されず、そのまま尿中へと排せつされることも確認した。
研究チームは「救急救命の現場ではどのような原因で中毒症状に陥っているのか、医師でも迅速に判断を下すことは難しい。救急救命の現場あるいは救急搬送中に迅速にhemoCD-Twinsを投与できるようになれば、多くのガス中毒患者の命を救えるだろう」と説明。今後も救急救命医薬品として実用化するため、研究を進めていく方針だ。
この研究成果は、国際学術誌「Scientific Reports」に12月10日付で掲載された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「お前たちのクラウドはわれわれのもの」 IDCFクラウドの管理画面に出た攻撃者のメッセージ 内容に運営元は
-
2
山中で遭難の16歳少年、登山計画に生成AI「Claude」利用 救助隊は「ルートの妄信」警鐘
-
3
JR東日本、「えきねっと」「ビューカード」などで漏えいか メルアドなど最大609万件 IDCFへの不正アクセスで【追記あり】
-
4
金融庁、本人確認の「ICチップ一本化」へ早期移行を要請 免許証画像の漏えい相次ぎ
-
5
SBI証券、Google・Appleパスキー乗っ取り被害「確認されていない」 注意喚起は他社事案
-
6
履歴書100通に1通「AIだけが読める文字」 20万件調査でわかった“就活ハック”の手口 米研究
-
7
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
8
ブックオフに不正アクセス、最大約643万件の個人情報流出 氏名、住所、ハッシュ化パスワードなど
-
9
米国防総省にも不正アクセス 個人情報300万人分が平文で漏えいか……発覚までに9カ月
-
10
ChatGPT、無料版を含む全ユーザーに「GPT-6」 回答内に“操作できる画面”を生成する「Intelligent UI」搭載
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR