Innovative Tech
サルはなぜ「同性間の性行為」をするのか? ニホンザルやチンパンジーなどを調査 英国チームが発表
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
X: @shiropen2
英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)に所属する研究者らがNature Ecology & Evolutionで発表した論文「Ecological and social pressures drive same-sex sexual behaviour in non-human primates」は、霊長類における同性間性行動の進化的・生態的要因を解明した研究報告だ。
動物における同性間の性的行動は、現在において1500種以上で報告されている。今回の研究では、491種の非ヒト霊長類を対象に系統的な文献調査を行い、59種において同性間性行動の存在を確認した。
特に詳細なデータが得られたのは23種で、ニホンザルが22件、チンパンジーが17件、アカゲザルが11件と、記録の多くをマカク属が占めていた。研究チームは15の環境・生活史(生物が生まれて死ぬまでの過程)・社会的特性との関連を系統発生回帰分析と構造方程式モデリングによって検証した。
その結果、同性間性行動は乾燥した環境に生息し、食料が乏しく天敵に襲われやすい環境で発生しやすいことが明らかになった。また、オスとメスの体格差が大きい種(性的二型)、寿命の長い種、複雑な社会構造、厳格な階層制を持つ種(群れの中に階級や複雑な人間関係がある)でより多く見られた。
構造方程式モデリングによる分析は、環境や生活史の特性が主に間接的な影響を及ぼしているのに対し、社会的な複雑さは同性間の性的行動の発生を直接的に促進していることを示唆している。
これらの結果は、同性間の性的行動が単なる繁殖の誤りや異常行動ではなく、過酷な環境や複雑な社会関係の中で、生存率や適応度を高めるための機能的な役割を果たしている可能性を支持している。
例えば、ボノボでは衝突後の緊張緩和や同盟形成のために同性間の性的接触が行われ、キンシコウでは寒冷で資源が乏しい環境下において、毛づくろいと共に同性間性行動が親和的な関係維持に役立っているとされる。つまり、同性間の性的行動は社会的な絆を強化し、集団内の競争や対立を管理するための“社会的な潤滑油”として機能していると考えられる。
Source and Image Credits: Coxshall, C., Nesbit, M., Hodge, J. et al. Ecological and social pressures drive same-sex sexual behaviour in non-human primates. Nat Ecol Evol(2026). https://doi.org/10.1038/s41559-025-02945-8
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
2
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
3
GMO、不正アクセス実行犯の手がかりに懸賞金 1億5000万円規模
-
4
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
5
auメールで朝から障害 全国で利用しづらい状況に
-
6
Apple、M6搭載の14インチ「MacBook Pro」発表 AI性能向上、33万9800円から
-
7
IPO目論見書に「AIは人類の存亡リスク」「コードの9割はClaude製」 Anthropicが示した規格外の見立て
-
8
So-net、会員情報約259万件が漏えい 一部メールサービスではパスワードも流出
-
9
GMO、攻撃者の公開情報に「アクセスは絶対に控えて」 悪質な拡散者には法的措置を準備
-
10
メアドを検索→AIで“その人専用フィッシングメール”を生成する手法、クリック率が約2.7倍に 7000人以上で実験
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR