ソニーはなぜ、テレビ事業を「分離」するのか――中国TCLをパートナーに選んだ“必然性”(2/2 ページ)
「100インチオーバー」まで多様化するテレビ市場で求められるもの
現状世界のテレビ市場は、サムスン・LGという2社の韓国勢と、ハイセンス・TCL・シャオミなど中国勢が主力だ。日本メーカーがトップランクに出ていたのはもう10年以上前の話であり、数量面を含め、今はまったく存在感がない。
理由はシンプル。大量かつ幅広いバリエーションの製品を作らねば戦えない市場だからだ。
テレビのコストは大半がディスプレイパネルで構成される。ディスプレイパネルを大量に調達した上でいかに効率よく組み立て流通させるかがビジネスの根幹に来るわけだ。
しかも現在は、テレビのサイズバリエーションがどんどん拡大している。
日本市場だけを見ると、大型テレビといえば50型くらいで、75型を超えるようなものは特別な製品……という印象があるかもしれない。だが世界的に見れば、100インチを超える超大型テレビも数千ドルで買えるような、手が届く製品に変わってきている。
ソニーのようなメーカーは、この10年、高画質・高付加価値のテレビを売ることで差別化を進めてきた。しかし、単純な画質だけでなくサイズでのバリエーションも求められるようになってくると、生産性・調達力の影響はより大きくなってくる。例えば、テレビに求められるサイズが「30インチから70インチ」の時代と、「30インチから120インチ」の時代では、それだけ製品のバリエーションは増えるし、巨大な製品を売る努力も必要になる。
100インチオーバーはあくまで付加価値商品であるし、ある種の「見せ球」に近い。だが、高付加価値製品がどんどん大型領域での勝負になってきていること、大型製品も多数作り、販売できる効率の良い体制であることは、テレビメーカーに必須の条件となってきた。中国大手の生産力・調達力は圧倒的であり、グローバルで戦うには、「差別化された製品を少数市場に売る」形では立ち行かないのだ。
垂直統合型で世界大手のTCLを選んだ必然
では、ソニーはなぜTCLをパートナーに選んだのだろうか?
これは現実的には、TCLしか選択肢がなかったと見ることができる。
韓国系2社は自分たちだけでもやっていける。中国勢の追い上げはすさまじく、今後も予断を許さぬ状況ではあるが、少なくとも、いまさら「ソニー」「BRAVIA」という看板は必要ない。彼らは十分にプレミアムブランドだ。
残る中国系大手の中だと、ハイセンスかTCLか。ハイセンスはすでにブランド認知も上がってきているので、さらに追いかけるTCLの方が有利だ。
また、TCLは傘下に、ディスプレイパネルを製造するTCL華星光電技術(CSOT)を抱えていて、垂直統合型のビジネスを強みとしている。ライバルで張るハイセンスはディスプレイパネル事業を抱えておらず、パネル以外のコンポーネント製造で差別化している状況だ。
そこで違いを打ち出すには、ブランド力・画質を含めた開発力をもつソニーを取り込み、「垂直統合の生産性を生かしたテレビ事業」を目指す必要がある……と判断されたのだろう。
ソニーのテレビ事業がもっと弱っており、ブランドだけを切り売りするしかない状況なら、パートナーも違う選択肢があっただろう。そういう意味では、今回の事業分離は「BRAVIAにまだ価値があるから」実現したことなのだ。能力もブランド価値もあるうちの事業分離なので、大きなパートナーと価値のある統合を目指すのが必然、ということになる。
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