“通信していることを悟られない”は実現可能か? 赤外線での秘匿通信、豪州チームが実験 着目したのは「負の発光」(3/3 ページ)
将来的にはGbps、Tbpsの秘匿通信も可能に?
ニールセン氏らは、負の発光をするのに最適な半導体の開発を行い、通信の実験を行いました。半導体にかける電流の向きを切り替え、赤外線の放射と吸収を切り替えることでバイナリーデータを表せます。
今回の実験では、同じ時間で交互に切り替えるものと、実際の通信を想定した疑似ランダムな切り替えの両方の信号を発し、切り替え速度に対応している受信機と、対応していない一般的なサーマルカメラで受信しました。
結果、受信機では十分なSN比(信号対雑音比)で信号を受信できた一方、一般的なサーマルカメラでは送信しているのかどうかが分からなくなっていました。これは、今回の研究の狙いである通信していること自体を秘匿する状況を実現しています。
今回の実験では、最大で100kbpsの速度でもバイナリーデータを送信できました。従来の研究での同様のアプローチでは数百bpsが限界であったことを考えると、数千倍の速度でデータを送受信できることになります。使用した半導体の性能からすると、原理的には数Gbpsのデータ送信を実現できるとニールセン氏らは見込んでいます。
今回の研究は、負の発光を使った秘匿通信に向けた重要な一歩ですが、課題もあります。今回の実験に使った半導体は水銀カドミウムテルル合金であり、どれも毒性の強い元素です。国際的な規制もあるため、実用化しても特殊な用途にしか使えないでしょう。また、負の発光は赤外線の吸収を使うという性質から、どうしても通常の発光と比べると強度の限界に直面しやすいという弱点があります。
今回の実験結果は興味深いものの、基礎研究的な側面があります。防衛や金融などの用途に広く使われるには、性能の向上が必須でしょう。ニールセン氏らは論文の中で、半導体にグラフェン(1原子の厚さの炭素シート)を使えば、最大で数Tbpsの通信速度も可能ではないかと見込んでいます。
参考文献
Michael P. Nielsen, et al.“Balancing positive and negative luminescence for thermoradiative signatureless communications”. Light: Science & Applications, 2026; 15, 148. DOI: 10.1038/s41377-025-02119-y
Neil Martin. (Mar 9, 2026)“New ‘negative light’ technology hides data transfers in plain sight”.The University of New South Wales, Sydney.
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
Excel、40年続く原則を変更へ 1個のセルで複数の値を扱う新機能
-
2
「タイムズカー」会員情報約660万件漏えい 運転免許画像など 不正アクセスで
-
3
Ankerの回収対象モバイルバッテリーで発火事故 25年度も7件、消費者庁が注意喚起
-
4
クリスタ素材非公開、セルシスに詳しく聞いた 「英国政府とは無関係」……決済事業者は?
-
5
OpenAI、最上位モデルのツール使用を伴う学習・評価・推論を全て停止したと発表
-
6
「スマホ注文なのに客用Wi-Fiがない」のはなぜか? 導入しない飲食店側の事情
-
7
カカクコム、KDDIとの資本提携を解消 TOBで資本構造が変化 業務提携は継続
-
8
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
9
東京メトロ、不正アクセスで会員メアド約5万9000件漏えいのおそれ 海外からか
-
10
タイムズカー、会員の免許情報や本人確認書類が漏えいの可能性 不正アクセスで
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR