ちょっと昔のInnovative Tech
「LoL」はどれくらい脳機能を向上させる? 5カ月遊んだ68人の脳を分析、他ゲームと比較 学術誌に掲載
ちょっと昔のInnovative Tech:
2019年の開始以来、多様な最新論文を取り上げている連載「Innovative Tech」。ここではその番外編として“ちょっと昔”に発表された世界中の個性的な研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
中国の電子科技大学などに所属する研究者らが2025年12月にBrain Sciences誌で発表した論文「Effects of Video Game Type on Cognitive Performance and Brain Functional Connectivity: A Longitudinal EEG Study」は、ビデオゲームのジャンルによって脳にどのような影響を及ぼすのかを分析した研究報告だ。
比較の対象となったのは、性質が大きく異なる2つのゲーム。1つはMOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ)の代表作「League of Legends」(LoL)。複数の標的を同時に追跡し、1~2秒以内に判断を下すといったリアルタイムな判断を必要とするゲームだ。
もう1つはターン制の戦略カードゲーム「三国殺」(TKK)で、論理的推論や確率的思考、長期的な戦略立案といった熟考を必要とする。
実験には過去1年間のゲーム経験が50時間未満の大学生68人が参加し、週5日・1日1時間のゲームを5カ月間続けた。プレイ前、プレイ中、プレイ終了時、さらにプレイ終了10週後のフォローアップまで、認知課題6回と脳波測定5回を実施した。認知課題は以下の3つを行う。
- 視野全体への注意課題:画面の左右に散らばって一瞬だけ表示される複数の記号のうち、赤い点で示された位置の記号を覚えて当てる課題で、広い視野に注意を分散させる能力を測定する。
- Nバック課題:3×3のマス目で次々と光る赤いマスを見ながら「今光ったマスはn回前と同じ位置か」を判断し続ける課題で、直近の情報を頭の中に保持・更新し続ける作業記憶を測定する。
- ストループ型課題:緑の矢印なら矢印の向き通りのキーを、赤の矢印なら逆側のキーを押すという課題で、「思わず向いている方に反応したくなる衝動」を抑えてルールに従う実行機能を測定する。
結果として、両群ともに3つの認知課題すべてで成績向上が確認された。ゲームの種類を問わず、認知的負荷の高い活動を継続することで脳機能が鍛えられるという従来の知見が改めて裏づけられた。
群間比較では、LoL群が1つ目の課題でTKK群を有意に上回り、特にプレイ終了10週後の時点でその差が顕著だった。LoL群の効果がより強く、かつ長く持続することが示された。
脳波データでは、両群ともにゆっくりした脳波であるデルタ帯(1~4Hz)とシータ帯(4~8Hz)のパワーが増加し、やや速いアルファ帯(8~12Hz)における脳領域間の機能的結合性が低下した。
低周波帯域(デルタ帯やシータ帯)の増加は、脳が変化・学習しやすい状態の高まりや覚醒度のベースラインの底上げを示唆する。一方、アルファ帯の結合性低下は、脳内での余計な情報のやり取りが減ったこと、すなわち脳ネットワークが効率化(省エネ化)されたことが考えられる。そしてこれらの変化は、LoL群の方がすべて大きく、長期間にわたって維持された。
さらに、プレイ終了から10週間経過した時点でも、脳波の変化や行動成績の改善は最大だった。ゲームをやめた後も脳の再編成が進行していたことになる。
Source and Image Credits: Lu, J.; Cui, R.; Jiang, L.; Mu, C.; Ma, W.; Gong, D.; Yao, D. Effects of Video Game Type on Cognitive Performance and Brain Functional Connectivity: A Longitudinal EEG Study. Brain Sci. 2026, 16, 24. https://doi.org/10.3390/brainsci16010024
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Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
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