小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
「なるほど、そういう動きか」――Adobe Premiereに追加された「カラーモード」で“カラグレ”を試す(2/2 ページ)
工夫されたUI
カラーシフトのブロックにある彩度シフト、色相シフト、輝度シフトは、ベクタースコープ上に表示される色位相の一部に対して、そこをシフトさせるという機能だ。
例えば色相シフトは、現在選択中のクリップの、彩度成分が多いところが3ポイント程度、自動的に表示される。目的の色位相を選択して、色相シフトの真ん中あたりをクリックすると、今度はベクタースコープが表示される。マウスの左右で選択される位相角度、上下でシフト量が調整できる。特定のカラーだけを違う色にシフトさせるといった使い方ができるわけだ。
同様に彩度シフトは特定範囲の彩度だけ、輝度シフトは輝度だけを増減できる。映像の中の位置を選ぶのではなく、波形から抜き出していくという感覚だ。ここでもやはり同じように、ビデオエンジニアとしてベクタースコープを見慣れている人には抜群に使いやすいが、写真から入った人や、ベクタースコープの見方がわからない人には分かりにくいかもしれない。
色位相のうち、比較的高そうな場所が自動的に表示されるあたりは、かなりわかっている仕様だ。本来なら、位相の選択自体もユーザーに投げるところを、自動化することで効率化を図っている。彩度の低いところを一生懸命いじっても効果が薄いだけでなく、S/Nを下げる一因にもなる。
ディテールブロックでは、テクスチャとシャープネスが調整できる。これらをクリックすると、エンボス画像のような画面が出てきて、テクスチャの状態が確認できるようになっている。これもマウスを上下に動かすことで、それぞれのパラメーターを調整できる。
またその下にある調整アイコンをクリックすると、バンドごとのスライダが出てくる。こちらのほうが慣れている…人はそんなにいないだろうが、単に全体の上下だけでなく、特定周波数のディテールだけに絞り込みたい場合に使うということだろう。これはディテールを出すというより、肌質のような特定のディテールを消すといった方向で使うといいように思われる。
こうした色調補正の結果は、コピー&ペーストで他のクリップにも持っていける。
補正追加と一括補正
DaVinci Resolveのカラーページを特徴づけているのは、「ノード」という構造だ。これはさまざまな補正を水道管ゲームのように繋げていけるという機能で、直列に繋いだり並列に繋いだり、あるいはバイパスしたりすることができる。これがカラーグレーディングの試行錯誤に大きく役立っている。
一方Premiereのカラーモードも、複数の補正を重ねることができる。クリップにしろシーケンスにしろ(これは後述)、横のプラスボタンを押すと補正やLUTを追加できるのだ。
補正1で標準的なカラーに補正しておき、補正2でエフェクティブなLUTを当てるといった使い方ができる。ただ、ノードと違って直列に繋ぐだけのように見える。このあたりは、UI的にまだかなり隙間が空いているので、今後何らかの追加が行われるかもしれない。
Premiere独自の強みという点では、カラーモードでも簡単にオブジェクトマスクが使える。例えば色や輝度だけでは絞り込めない場合は、直接オブジェクトを指定してそこだけ別の補正をかけたりできる。背景と人物を分けてグレーディングできれば、かなり強力なツールとなるはずだ。
ここまではクリップごとの機能としてカラー調整機能を見てきたが、「シーケンス」でも補正の追加など、同じことができる。シーケンスで設定した補正は、そのシーケンス全体に同じものがかかるので、同じカメラで撮影したLogファイルはシーケンスで標準的な色に戻しておき、クリップで個別に微調整するといった方法が考えられる。
とはいえ、シーケンスとは1つのタイムラインなので、シーケンス内でカメラが混在する場合も当然考えられる。シーケンス全体で一括ではなく、メタデータから同じカメラのクリップを拾ってグルーピングし、それに対して一括で補正できるようなまとめ機能も欲しいところだ。
加えて、補正機能も今回提供されたツールだけで対応できるかという課題もある。例えばいちいちコントラストでやるより、ガンマカーブを書いたほうが早いんじゃないかとか、RGBごとのバランスで決められたほうがいいんじゃないかとか、減法混色で処理したほうがフィルム処理に近いんじゃないかとか、多くの課題がある。
また全てをマウス操作で行うのでは、スピードが出ない。素早く目的地点へ到達できるハードウェアコントローラーも欲しいところだ。
機能的に足りないところはあるにしても、β版にもかかわらずかなりちゃんと動いている。今のところAIによる自動化は行われていないようだが、Adobeの特性からするとここにもAIを入れて、プロンプトによる自然言語のグレーディング指示ができるぐらいのことはやってくれそうだ。
カラリストに対して手動補正を使いやすくするのか、それともAIでの自動化の方向に振るのか。現時点ではまだどちらとも言えない作りだが、正式版となって現場のユーザーが使い出せば、方向性が見えてくるだろう。
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