避難所でAI使ってサービス開発「イマココナビ」 ニッチな生活情報も被災者主導で共有
熊本地震の発生直後、AIを活用し、被災者どうしが生活情報をリアルタイムで共有するサイトが生まれ、好評を呼んでいる。子供が遊べる公園、爬虫(はちゅう)類のペットフードの売り場──行政では担えないニッチな内容を共有できることも強みで、すでに16万人以上がサイトに足を運んだ。「情報」が欠かせぬ一つのライフラインとなる中、被災者主導で悩みや提案を共有できるこの仕組みは、災害時の新たなモデルケースといえる。
サイトを立ち上げたのはWebマーケティング会社代表の加悦美里さん(38)。御船町の自宅で揺れを感じた直後、近所のスーパーなどを巡って十分な買い物ができなかった。その後身を寄せた避難所でSNSを開くと「ミルクが底をつくが買えない」「ガソリンが入れられない」という切実な投稿と、返信欄で「ここで買えた」と教え合うやりとりを目にした。
ただSNSは情報の更新にタイムラグが生じやすく、投稿も乱立しやすい。「即時性の高い情報を確認できる場所が必要だ」と痛感した。
地震発生から約5時間半後の午後10時過ぎ、避難所でサイト作成を決意した加悦さん。仕事柄、AIを使ってサイトを作った経験はあった。スマホを使ってAIに「地震発生時に価値ある情報をまとめられるサイトを作りたい。みんなが書き込め、見られるようにしたい」と打ち込んだ。その後、指示を約20回繰り返し、開始からわずか3時間半でサイトは完成した。
被災地の店舗の営業状況や炊き出しの場所などを被災者自らが投稿、共有するサイトの名前は「イマココナビ」。「今、この瞬間が伝わるように」との願いからそう名付けた。
開設後の運用には10年前の被災経験も生きた。時間の経過とともに被災者のニーズは変化していく。ジャンルを柔軟に拡充し、発災1週間後には託児所や子供が遊べる公園の情報欄を新たに追加した。こうした取り組みもあり、今では16万人以上がサイトを訪問。4000件超のスポットに5万件以上の書き込みがあり、「熊本の人たちの目に見えない支え合いが形になった結果だ」と手応えを口にする。
情報を巡っては、物資配布や給水所の場所など行政が発信するものもあるが、イマココナビの強みは「ニッチな需要に対応できること」(加悦さん)。高齢者でも運べる小容量のペットボトル水の配布場所や爬虫類のペットフードを販売する店の情報など「行政では拾いきれない細かな情報を共有できる」という。
もっともこうしたサイトの可能性を発見できた半面、平時から準備していく必要性も感じた加悦さん。「国や自治体が情報インフラとして運用してくれるのが理想だ」と語り、次の災害に備える必要性を説いた。(木下倫太朗)
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