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人に注射を打てる「サイボーグゴキブリ」の群れが、がれき下の被災者を救助? 実験成功率72%
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2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
オーストラリアのクイーンズランド大学とニューサウスウェールズ大学に所属する研究者らがAdvanced Scienceで発表した論文「Paraborg: Paramedic Cyborg Insects for In Situ Emergency Drug‐Delivery」は、遠隔操作で被災者に薬液を投与することを目的としたサイボーグ昆虫を開発した研究報告だ。
地震などの大規模な自然災害において、瓦礫の下に取り残された被災者の捜索・救助は困難を極める。従来のドローンや脚付きロボットでは入り込めない狭所へのアクセス手段として、生きた昆虫の身体能力を活用するサイボーグ昆虫が注目を集めてきた。
関連記事:数時間潜水できる”サイボーグゴキブリ”実現 人命救助で活躍期待 早大などが専用の潜水スーツ共同開発
しかし、これまでの研究は主に自律制御やカメラによる捜索機能に留まっていた。今回は、捜索だけでなく現場での救命医療処置(薬液投与)を可能にするパラメディック(救急救命)サイボーグ昆虫「Paraborg」(パラボーグ)が開発された。
研究では、大型のヨロイモグラゴキブリ(Macropanesthia rhinoceros)をベースに、小型の自動注射機構もしくは超小型カメラを搭載したシステムが構築された。
昆虫の触角や尾角に対する電気刺激を通じて、人間のオペレーターが遠隔操作でゴキブリの歩行や旋回を制御し、薬剤投与のために最適な位置で静止させる。
自動注射機構は、「射出」と「注入」の2段階で薬液投与を自動実行する。まず、遠隔操作の電気信号でニクロム線を加熱して釣り糸を焼き切り、圧縮されたバネを解放して注射器を標的へ射出する。注射器が飛び出すと同時に、内部の隔離膜が破れてクエン酸と炭酸水素カリウムが混合される。この化学反応によって発生した二酸化炭素の圧力がゴム栓を押し出し、注射針から自動的に薬液が注入される。
今回の研究では、複数のサイボーグ昆虫が連携して任務を遂行する運用を前提としている。例えば、カメラを搭載したオブザーバー役のサイボーグ昆虫が先行して被災者を発見し、そのリアルタイム映像を頼りに、人間のオペレーターが自動注射機構を搭載した薬剤投与役の昆虫を標的へと誘導する。
関連記事:“サイボーグゴキブリの群れ”をコンピュータで操作 阪大らがナビシステム提案
実験では、指定されたチェックポイントを通過して標的(人肌を模したシリコーン)に到達するナビゲーションから薬液注入までの全工程の成功率は72%(25回中18回)だった。成功18回のうち12回はサイボーグゴキブリの頭が標的に接触した状態での射出だった。
失敗5回は標的から約15〜25cmからの射出で注射器が刺さらず、残りの失敗2回は射出時にゴキブリが急旋回して注射器が壁に当たったことが原因だった。
Source and Image Credits: Le HN, Phan PT, Fitzgerald L, McAree PR, Do TN, Vo-Doan TT. Paraborg: Paramedic Cyborg Insects for In Situ Emergency Drug-Delivery. Adv Sci (Weinh). 2026 Sep;13(53):e76973. doi: 10.1002/advs.76973. Epub 2026 Aug 5. PMID: 42555186; PMCID: PMC13440206.
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