カシオ計算機のスマートウォッチ“PRO TREK Smart”「WSD-F30」が発売される。先代に比べて小型軽量化を果たし、有機ELディスプレイの採用など機能性も向上した注目機だ。
いよいよカシオ計算機から「Wear OS by Google」を搭載したスマートウォッチ“PRO TREK Smart”「WSD-F30」が発売される。カシオが誇る技術で大幅な小型&軽量化、低消費電力&長時間駆動を実現した注目のモデルだ。今回は「WSD-F30」の商品企画やハードウェア、ソフトウェアの技術開発など関連する部署から担当者を集め、それぞれの視点から最新モデルへのこだわりを語ってもらった。
最初にカシオの第3弾のスマートウォッチとなる「WSD-F30」を開発した背景を商品企画担当の岡田佳代氏に聞いた。岡田氏は2016年にカシオが発売した初代スマートウォッチ「WSD-F10」、2017年春に“PRO TREK Smart”というブランドで新たに登場した「WSD-F20」も担当している。
カシオのスマートウォッチはアウトドア向けリストデバイスに求められるタフネスさを特長としている。本体は5気圧防水とMILスペック準拠の高耐久設計。それでいて腕時計としての完成度も高い。
カシオは、Wear OS by Google(以下:Wear OS)の前身であるAndroid Wearの頃からGoogleのスマートウォッチ向けOSを採用し、スマートフォンと連携したり、アプリを追加したりとスマートデバイスとしての使い勝手を実現してきた。また「WSD-F20」からは内蔵GPSとオフライン地図機能が追加され、あらかじめデータをダウンロードしておけば、スマートフォンとつながっていなくてもMapboxのカラー地図で自分の位置を確認できる。地図データ上に移動の軌跡を取り込めるアプリ「ロケーションメモリー」は、旅行の時にも気軽に楽しめる機能だ。
岡田氏は「F20のユーザーからいただいたフィードバックを肥やしにして、PRO TREK Smartシリーズのレベルアップに挑戦することがF30の開発を始める際に掲げたミッションだった」と振り返る。
「アウトドアスポーツを趣味にしている女性を含め、腕の細い方にもフィットしやすいように、F20の機能性を保ちつつも小型化・軽量化することを目標にしてきました。カシオ独自の二層ディスプレイには初めて高精細なカラー有機ELを採用し、もう一つのモノクロ液晶には時刻の他に内蔵センサーで計測した高度・気圧・方位などの情報も表示できます。アウトドアで使う時のバッテリー持ちが心配という声に応えるために、駆動時間を長くするためのモードを回路とソフトウェアの工夫によって実装しています」(岡田氏)
カラーバリエーションには、F20から継承したオレンジとブラックにブルーを追加。ユーザーがバンド交換を自分の手で簡単にできるようになったところも新しい。バンドの幅は23ミリで、カシオから純正のオプションとしてアウトドアウェアの上から巻いて装着しやすいクロスバンドが発売される。
F30のサイズをF20と比べると、本体横で3.9ミリも小さくなった。質量も9グラム減らし(92グラムから83グラムへ)、長時間身に着けていても負担になりにくいレベルを実現している。ハードウェアの設計を担当した大坪宏彰氏はサイズダウンできた経緯をこう話す。
「F30の場合、最初にデザイナーから『このサイズとデザインを実現したい』という提案があり、それを受けて私たち技術センターのハードウェア設計部門とキャッチボールを繰り返しながら少しずつ詰めていきました。サイズダウンのためにはボディを削る必要がありましたが、耐久性は犠牲にできません。このバランスを最適化することがとても難しかったです」
小型化したデザインを実現するため、一体どうやって支えれば良いのか。F20の経験から課題となるポイントを絞り込み、強度計算と実試験を合わせて補強形状を決定していったという。「例えばバンドを支える“かん足”と呼ばれる部分です。見た目通りに細いままですと衝撃を受けると壊れてしまいます。しかし強度を高くするために太くしてしまうと、デザインコンセプトに反するものになってしまいます。ルックスをスマートにしながら、強度を与えるため、シミュレーションと強度試験を反復し、“肉付け”のバランスに腐心してきました」(大坪氏)
腕時計は本体が手首にゴツゴツと当たるとストレスを感じてしまうものだ。これを避けるために、付属するバンドの裏側を肉抜きして薄さと軽さ、強さと柔らかさを徹底的に追い込んだ。バンドを理想的な肉厚にするため、大坪氏は材料の選定から硬度の調整まで、持っていたノウハウのすべてを注ぎ込んでいる。例えば“かん足”に近いバンドの部分は手もとが障害物にぶつかった時に、ボディよりも先にバンドが当たって衝撃を吸収するようにデザインされている。このデザインを生かしながら、手首にフィットする形状に肉抜きしている。
F20と同様、側面に並んでいる3つのボタンは操作性を見直した。ボタンを押し込んだ際の感触を滑らかにした他、フレームの外側に張り出さないように設計している。いずれもボタンを壊れにくくするため、カシオが培ってきた設計のノウハウを生かしたという。ディスプレイを保護するベゼルには、樹脂にメタルのような光沢感を持たせるため細かな溝を付けるナノ加工を施した。なるほど、高級感が漂う面構えだ。
F30のディスプレイが有機ELになったことで精細感が高まり、例えばマップの細かな道筋やメッセージのテキスト表示も切れ味を増したようだ。回路設計を担当した南剛氏の説明によると、有機ELディスプレイを搭載した狙いは表示を鮮やかにすること以外にもあるという。
「本体をサイズダウンすると、内蔵可能なバッテリーパックのサイズも小さくなります。そこでF20よりも、省電力設計という意味では一歩踏み込まなければなりません。そこで低消費電力のデバイスという観点からも有機ELディスプレイに着目しました」(南氏)。本体を構成する中のパーツは見直しをかけて、ほとんど一新しているのだという。
有機ELは自発光型であり、素子の発光を止めることで黒色を再現できる。ソフトウェアの開発を担当する田中芳朗氏のチームと連携しながらメニュー画面やウォッチフェイスを表示する際にも色数を減らして“黒色の比率”を高め、有機ELディスプレイの特性を生かした消費電力のセーブを実現している。
F30は、「常に画面表示をオン」に設定した時がF20と比べて低消費電力化に大きく貢献している。長く画面を操作しないと画面は暗くなり、待機状態になる。この時にF30の有機ELのほうがF20のLCD(液晶)より低消費電力になっている。
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提供:カシオ計算機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2019年2月20日