G-SHOCKのデザインを変えた大変革 「カーボンコアガード構造」とは?(2/3 ページ)

» 2019年03月27日 10時00分 公開
[山本敦PR/ITmedia]
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 一般的に「カーボン」と呼ばれるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)は、樹脂に炭素繊維を混ぜて成形し、高い強度を実現している。そして組み合わせる樹脂によって成形品の性質は大きく変わる。

 「カーボンケース自体は、以前にG-SHOCKのGULFMASTER(ガルフマスター)シリーズで挑戦したこともありましたが、当時は私たちの中にカーボンという素材に対する知見が十分に蓄えられていませんでした。次世代モデルにカーボンを使うのであれば、多種多様なカーボン素材を集めて十分に比較検討すべきという意見がチームの中から出てきたのです」と井口氏は振り返る。デザイナーのチームとともに自動車や航空機、宇宙産業などに使われている高剛性のカーボン素材を片っ端から集めてきて、評価検討が行われた。

 試験のために専用の金型まで作った。素材メーカーから持ち込まれたさまざまなカーボン素材を同じ形状、同じ条件のケースにして比較検討するためだ。テスト項目は、耐衝撃性の他、気温や湿度、紫外線などの影響、さらに人の肌に触れたときの汗や薬品による変化への耐性など多岐にわたる。

 「カーボンと合わせる樹脂素材の選定は困難を極めました」と井口氏。気がつくと、テストしたサンプルは40種類を超えていた。

裏ぶたと一体化し、バスタブのような形状になったカーボンモノコックケース。後ろにずらりと並んでいるのは、各素材メーカーから集めたサンプルで作った試作ケース
繰り返される耐久性試験によってボロボロになった試作機

 最終的に採用したのは、硬さと柔らかさの絶妙なバランスを実現したPEEK樹脂だ。カシオが独自に吟味を重ね、素材メーカーの最適グレードを採用した。

 カーボン素材は構造のみならず外観にも大きな影響を与えた。「カーボンベゼル」もその一つ。“時計の顔”ともいえる文字盤を囲む重要なパーツにカーボン素材独特の格子状の美しいパターンが映える。これは積層したカーボンに樹脂を含浸させ、削り出すことで見えてくるカーボンの証だ。

ベゼルにもカーボン独特の模様

「ボタンガードをなくす」という挑戦

 従来のG-SHOCKシリーズは、ボタンの周囲を分厚く頑強なフレームで囲み、外部からの衝撃を伝えない構造になっている。これはG-SHOCKのタフネスを象徴するデザインであり、多くのファンを生んできた個性ともいえるが、あえてそこでも新たな取り組みに挑戦した。

G-SHOCKの新境地を切り拓く「ボタンガードレスデザイン」

 ガードを取り払うと、当然ボタンはむき出しになるが、井口氏の外装設計チームは、ボタンに直接外部からの衝撃が加わっても吸収できる機構設計にたどり着く。それは基板を支える部品を従来の一体成型のものから分割構造に変えたことで、外から衝撃を受けたとき、基板に伝わる手前で力を“そらす”ことができる画期的な構造だった。井口氏は「外装設計チームと時計内部のモジュール設計のチームによる会心のチームワークによるものだ」と満足そうに笑みを浮かべた。

 GWR-B1000では高い剛性と軽さ、防錆効果などカーボン樹脂素材の特性をさらに際立たせるために、本体のボタンやバックル、組み立てに使われているビスやピンなどあらゆる金属にチタンを使っている。高価な金属でもあるが、異種素材がそれぞれの特長を“かけ算”で高め合い、価格以上の価値を生む。G-SHOCKシリーズの歴史に新しい一歩を刻むデザインができた。

 カーボンは、今後のG-SHOCKに大きな進化をもたらす新たな素材だ。腕時計の小型・軽量化と、それに伴う操作性の向上は誰もがメリットを感じられるイノベーション。しかもG-SHOCKの魂であるタフネスも犠牲にならない。ユーザーが腕時計を身に着けて活躍できるフィールドは無限に広がる。

カーボンコアガード構造の概要。(1)カーボンベゼル、(2)カーボンモノコックケース (3)ボタンガードレスデザイン

 井口氏も「今までできなかったフルカーボン素材のダイバーモデルも実現できるかもしれない」と可能性を語る。ただし、「G-SHOCKシリーズを愛するファンも納得できるデザイン、イメージや装着感を大事に守り続けることも開発者の使命」であるとも話しており、従来のボタンガードのあるデザインのG-SHOCKもさらに進化させていく考えを示した。

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提供:カシオ計算機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2019年4月26日

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