腕時計のデザインを変える「小さくて大きな革命」 カシオの薄型モジュール開発に迫る

2019年夏発売のプレミアムライン「OCEANUS Manta」(オシアナス マンタ)と高機能アナログウォッチ「EDIFICE」(エディフィス)は、“薄さ”にこだわって作られ、実際に腕に装着するとぴったりと張り付くような一体感が特徴だ。その秘密は、腕時計のコア「モジュール」の薄型化にあった。

» 2019年07月16日 10時00分 公開
[山本敦PR/ITmedia]
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 カシオのアナログ腕時計がまた進化を遂げた。2019年夏発売のプレミアムライン「OCEANUS Manta」(オシアナス マンタ)と高機能アナログウォッチ「EDIFICE」(エディフィス)は、一見して薄さへの徹底的なこだわりが分かるデザインになった。しかも実際に腕に装着するとぴったりと張り付くような一体感が得られる。その理由は、腕時計のコア「モジュール」の薄型化だった。カシオ計算機の羽村技術センターを訪ね、4人のキーパーソンに話を聞いた。

カシオ計算機 羽村技術センターでモジュール開発に取り組む4人に話を聞いた。上段左から実装開発室の國見遼一氏、Bluetoothの無線通信システムを担当した第一開発室の麻生信晴氏、下段左から実装開発室の内林沙衣氏、モジュール企画室の黒羽晃洋氏

 カシオの腕時計におけるモジュールとは、針を駆動するムーブメントとそのムーブメントを制御する電子回路で構成される部品のことで、腕時計の機能や性能を決める、まさに時計の心臓部だ。

 今回カシオが新たに開発したモジュールは、1世代前のオシアナス マンタ「OCW-S4000」に比べて約71%まで薄型化している。また、マンタの中で最もスリムな「OCW-S3400」(2015年発売)のモジュールと比べても、径を小さくした上で、約83%までの薄型化に成功した。

左がOCW-S5000に搭載された薄型モジュール。右はOCW-S4000のもの

 モジュールの企画開発を担当する黒羽晃洋氏(モジュール開発部 モジュール開発室)によると、今回はケース(モジュールやムーブメントを収めた外装)の厚みが、“大台”である10ミリを切ることを企画段階で目標としていたという。オシアナス マンタの新製品「OCW-S5000」は、風防になだらかなカーブを描く「デュアルカーブサファイアガラス」を採用しながら厚さは約9.5ミリ。風防に「フラットガラス」を使ったエディフィス「EQB-1000YD」は約8.9ミリだ。

「OCEANUS Manta」(オシアナス マンタ)シリーズの新製品「OCW-S5000」。同シリーズは限定モデルを含む3製品に新しい薄型モジュールを搭載する

 「モジュール部品の薄型化・小型化は、アナログ腕時計の装着性向上と密接に関わってくるため、カシオでは継続的に改良を続けています」と黒羽氏。今回の薄型モジュールも部分的な試作が始まったのは今から4年前の2015年ごろで、きっかけは「オシアナスシリーズが2019年に15周年を迎えるに当たり、“エレガンス&テクノロジー”というオシアナスのコンセプトが最もアピールできるモデルを、フラグシップであるマンタから出そうと考えたこと」(黒羽氏)だったという。

「EDIFICE」(エディフィス)の新製品「EQB-1000YD」

 一方、立体的で力強い「ボールドデザイン」を多く発表してきたエディフィスは、「ボールドデザインと差別化された、スリムとフラットを特徴としたシリーズにより、新しいエディフィスファンを増やしたい」というデザインチームからの要望を受け、オシアナスと同時に開発を開始した。

部品の集積化により電子部品の片面実装を実現

OCEANUSの従来機「S4000」シリーズ(左)と新しい「S5000」シリーズ(右)を並べると厚さの違いは一目瞭然(いちもくりょうぜん)

 モジュールを薄くできた理由は大きく2つある。1つは、これまで基板の表裏両面に配置していた電子部品を片面に寄せる「片面実装」。基板には多数の電子部品が所狭しと配置されており、これらを片面のみに配置するためには、部品自体の省スペース化が必須だった。初めに着手したのは、りゅうずシステムの新規設計。これに長い開発期間をかけ、部品点数がより少ない構成にすることで、部品の総面積で約81%まで省スペース化することに成功した。

部品点数の削減により可能となった「片面実装」

 そこでブレイクスルーとなったのが、部品の集積度を高めたBluetooth Low Energy(BLE)システムの刷新であった。チップの選択や周辺の設計を担当した麻生信晴氏(モジュール開発部 第一開発室)は、「これまでは電力を効率的に供給する回路やノイズ抑制を担う回路・部品が大きなスペースを占めていました。その機能を統合したICチップにより、周辺に配置する部品数を従来の半分に絞り込めました」と話す。アンテナを除いた部品の総面積で比較すると、従来の約57%まで省スペース化した計算になるという。

 BLEは、オシアナス、エディフィスともに専用スマートフォンアプリとのリンク機能「スマートフォンリンク機能」の時刻修正システムに活用している。1日4回、スマートフォンに自動接続して正確な時刻を取得する仕組みのため、新しいICチップは集積度とともに電力消費の効率も重視して選択。IC動作/待機時の平均消費電力は従来品と同レベルだが、通信時の消費電力ピークが約20%抑えられるという。

打ち合わせは100分の1ミリ単位

 薄型化のもう一つの大きな理由は、各部品の100分の1ミリ単位での薄型化のチャレンジだ。新製品では、モジュールの中でも「アナログブロック」と呼ばれる内部の歯車構成に及んで薄型化を追求している。例えば「日車」(ひぐるま/カレンダーディスク)と、それを固定する「日車おさえ」というパーツ。実装開発を担当した内林沙衣氏(モジュール開発部 実装開発室)は、「この2つを薄くできれば、プロダクトデザインの自由度が上がります。そのため、今回は大掛かりな技術開発にチャレンジしました」と話す。

日車(手前)と日車おさえ(奥)。それぞれ左側が薄くなった新規開発の部品

 従来の日車は成形により作られていたが、新しいオシアナスとエディフィスの日車はシートを打ち抜く作成方法を採用することで約71%も薄型化。日車おさえは、素材を樹脂からメタルへと大胆に変更し、強度を維持しながらも薄型化を実現した。

主に新しいオシアナスの実装開発を担当した内林氏

 文字通り「小さなことの積み重ねが大事だった」と振り返る内林氏。黒羽氏も「デザイナーや外装設計部門との打ち合わせは、単位が100分の1ミリでした」と笑う。

 もちろん円形基板の径を広げたり、機能を削ったりすれば楽になることは分かっていた。しかしモジュール開発部では妥協を許さず開発をした。例えばモータースポーツファンに支持されているエディフィスは、チームのクルーが求める機能として「ラストラップインジケーター」を搭載している。前周タイムの5秒前からインダイヤルでカウントダウンし、ゼロになるとブザーが鳴る仕組み。これを実現するために、基板のスペースを大きく占めるブザーをあえて搭載し、EDIFCEの世界観をしっかりと表現している。このこだわりはモータースポーツファンの心も掴むに違いない。

 「一般的に薄型の時計はストレスフリーな着け心地が利点ですが、カシオはさらにソーラー発電やスマートフォンリンク機能をはじめとした“実用上のストレスフリー”を兼ね備えた薄型時計を提供します。今後の開発においてもサイズとスペックへの追求は続けていきたいです」(黒羽氏)

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提供:カシオ計算機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2019年8月15日

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