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» 2019年10月16日 10時00分 公開

キウイ農家の“収穫予測AI”、実は「1週間程度」で構築 スピード開発の秘訣は

[PR/ITmedia]
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 農作物の育成状況などのデータを学習したAI(人工知能)が、天候データなども考慮しながら、ベストな収穫時期やサイズごとの収穫量を予測する──そんな「アグリコンシェルジュ」の構築を、キウイフルーツ生産者の末澤克彦氏(Orchard&Technology代表)が進めている。(提供:日本マイクロソフト株式会社)

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 収穫時期や収穫量を早い段階で予測できれば、あらかじめ収穫作業に必要な人員をそろえたり、流通先を確保したりできる。「このままだと品質が良くない、あるいは小玉が多い」などの予測結果が早めに出れば、対策も立てやすい。収穫してみないと分からない“出たとこ勝負”だった日本の農業の在り方を変えようと、末澤氏は意気込む。

 ゆくゆくは、末澤氏の農園だけでなく、アライアンスを組む農家からもデータを得て、農家ごとに収穫予測を配信する計画だ。アグリコンシェルジュという情報共有基盤を核として、各地の農家が連携し合うことで世界の農業に挑もうとしている。

(前編)キウイの収穫量・時期、AIがピタリと当てます──日本の農業をデータで改革、ある農家の野望

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 末澤氏は1981年、香川県庁に入庁。以来、農業関係部署で技術の開発と現場指導を積み上げてきたが、県の職員として行動することに限界を感じ、自問することもあったという。

 末澤氏は、直視してきた日本の農業の構造的な課題を解消するため、第一歩として「ICTによる情報の共有」を挙げ、アグリコンシェルジュの構築を進めている。


機械学習の導入は「初挑戦」でも、1週間程度で構築

 末澤氏は当初、こうしたシステムを本当に構築できるのか、本当に有用性はあるのか、判断が難しかったという。限られた予算と少数精鋭の体制でビジネスを回している以上、技術的実現性、効果・効用などの検証は、できるだけ短時間で実施する必要があった。

photo キーウェアソリューションズの久保康太郎氏(サービス企画部シニアエキスパート)

 末澤氏のチャレンジをシステム構築の面で支援した、キーウェアソリューションズの久保康太郎氏(サービス企画部シニアエキスパート)は、「AIの導入効果を短期間で見極めたい」という末澤氏の要望に応えることが重要だったと明かす。

 だが、キーウェアソリューションズにとって「本格的な機械学習を導入したシステムを構築するのは初めての試みだった」という。官公庁や通信、運輸、流通などさまざまな分野の企業を顧客に抱え、情報システムを構築してきた同社だが、当時はそこまでAIの知見があったわけではなかった。「時間やリソースが限られている中で、新たな技術について学んだり、スペシャリストを増強したりするようなことは避けなければならなかった」(久保氏)

 このような状況で、久保氏が選んだのが、Microsoftが提供するクラウドサービス「Microsoft Azure」の機械学習ツール「Azure Machine Learning Studio」だった。久保氏は「コードを書くことなくGUI(Graphical User Interface)ベースで機械学習モデルを作ることができた」とメリットを話す。専門的なプログラミングの知識がなくても、直観的に操作できたという。

photo Azure Machine Learning Studioは、GUIで機械学習モデルを直感的に構築できる

 ただ、いくらコードレスでGUIベースとはいえ、目的別にたくさん提供されているアルゴリズムの中から最適なものを選ぶ必要があり、機械学習に関してある程度の知識が求められるはずだ。そんな懸念に対し、久保氏は「分かりやすいチートシートが提供されているので、短時間で選ぶことが可能だった」と話す。

 チートシートでは「Predicting values」→「Accuracy,long training time」というように、どのような目的で機械学習モデルを構築しようとしているか、質問に答えていくと、利用すべき予測モデルにたどり着く──という仕組みだ。久保氏は、今回の予測モデルのテンプレートになるアルゴリズムを選択する際、2〜3のアルゴリズムを試しただけで、最も精度の高いものを選ぶことができたという。

 こうしたサービスを活用し、1週間程度で機械学習モデルを構築。プロジェクトを実現させる道筋が見えたことから、次のステップに進むことができた。

photo チートシートでは、機械学習モデルを構築する目的別に、利用すべき予測モデルを案内している

 だが、ここで1つの疑問が湧く。機械学習モデルの構築は、Azure Machine Learning Studioでスムーズに実現できたとしても、データベース連携やサービスを構築する部分で、連携や後処理の作り込みに時間とリソースが割かれるようであれば、満足度は下がるのではないだろうか。

 この点について、久保氏は「今回のプロジェクトでは、Azure上のSQL Databaseからデータを読み込んでいる。Azure Machine Learning Studioのデータインポート機能を利用すれば、インタフェースのことなど考える必要はなく、ただ、SQL文を記述するだけでデータ連携が可能だった」と目を細める。

 また、Webサービスとして落とし込むためには、Azure Machine Learning Studioがアウトプットした予測モデルのデータをWebサービスと連携させなければならない。こうしたAPI連携についても、久保氏は「Machine Learning Studio Webサービスという機能を利用すれば、予測モデルを自動的にWebサービスとして公開することができ、さらに自動生成されたコードをそのままコピー&ペーストするだけで、Webサービスを利用するプログラムを作成することが可能」と手軽さを力説する。

 久保氏は「機械学習を提供しているクラウドサービスは他にも検討したが、今回のようにデータベースやサービスとの連携のしやすさを考慮すると選択肢から落ちた。その点、Azure Machine Learning Studioは、Azureというプラットフォーム上で提供されている機械学習なので、周辺処理との連携がスムーズでスピーディーに構築が可能だった」と付け加える。

 期間も予算も限られ、なおかつ「手探り状態」の中でPoC(Proof of Concept、概念実証)を行うとなると、短期間で一定の方向性を打ち出すことが求められる。「農業へのICTの導入を検証する場合、ゴールが見えない状態で、いくつもの手段を試す必要がある」と久保氏。検証のスピードを早めるツールとして、今回のプロジェクトでは、Azure Machine Learning Studioが最も適していたというのだ。

 今後は、機械学習そのものの精度を上げる努力を続けていく。毎年、新しいデータを追加することで精度向上を図ったり、データの取得方法を模索したりする必要があるという。このために、今年8月には新たなデータを投入してさらに精度を高めるべくモデルをチューンアップしており、必要なデータの取得を継続的に拡大していく。「取得する項目や方法を確定して初めて、各農家からのデータ収集の道が開けることになる」(久保氏)

 機械学習の精度を高めていく中で、適切なモデルを選び直したり、パラメータを再調整したりする必要も出てくるだろう。Azure Machine Learning Studioには、そうしたチューニングを示唆、自動で選択してくれる機能もあるため、今後もスピーディーに開発を進められそうだ。

将来はHoloLensを活用? 万人が高度な農業技術をリモートOJTとして身につける

 アグリコンシェルジュの今後の発展性について、末澤氏は、農作業中のデータ入力の手段として「音声インタフェース」を開発していると話す。「農作業の現場では両手がふさがっている。作業をしながらスマートフォンを使って果実の育成状況などをいちいち画面から入力するというのでは、作業がストップし、農家は使ってくれない。音声によるデータ入力が最も現実的な解だ」(末澤氏)

 具体的には、音声によるQ&Aスタイルの入力を開発中だという。システム側から「果実の個数は?」「果実の大きさは?」などの定型の質問を行い、ユーザー側が事前に準備された応答例や数値を声に出して解答することで、誤認識を避け、品質の高いデータ入力を行うというものだ。

 久保氏は、「Azureは、AIとの自然なコミュニケーションを可能にするCognitive Servicesを提供している。音声認識や音声を自動生成するSpeech Servicesや、チャットbotを可能にするAzure Bot Serviceなどを組み合わせれば、音声インタフェースによるデータ入力も実現可能」と意気込む。

photo Orchard&Technology代表取締役の末澤克彦氏

 末澤氏の夢はさらに大きく広がる。将来的にはMicrosoft HoloLensとAzureを連携。HoloLensを装着したユーザーが農作物に視線を向けただけで、HoloLensのディスプレイ上に、病害虫による被害の度合いなどが表示される仕組みを考えている。経験が浅い農家でも、生育状況を視覚的に把握しやすくするという。「それらの情報をアグリコンシェルジュを通じて全国の農家と共有できるようにすれば、農業の生産性と付加価値の向上が実現できる」(末澤氏)

 末澤氏は「各農家が連携してしぶとく生きることがこの国の農業の在り方。農業のICT化で、集積した各種データをいかに共有できるかが鍵になる。アグリコンシェルジュの取り組みを早期に成功させることで、賛同の輪を広げていきたい」と力強く語る。

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