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» 2020年01月29日 10時00分 公開

「恐怖心があった」 住友生命のデータ基盤構築、“PaaS初チャレンジ”を乗り越えた担当者たち

[PR/ITmedia]
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 「今後構築するITシステムのプラットフォームは、クラウドを基本にする」──国内生保の大手、住友生命保険(以下、住友生命)が「クラウドファースト」の方針を大胆に打ち出したのは、2018年のことだった。それまで他の金融機関と同じくオンプレミス環境上に業務システムを構築・運用してきた同社だが、金融業界に突如巻き起こったクラウド旋風(せんぷう)にいち早く乗ることにしたのだった。

 クラウドファーストを打ち出して以降、社内システムが更改時期を迎えた際は、次期インフラとして真っ先にクラウドの利用を検討することにした。そして、この方針を適用したのが「情報分析システム」だった。販売情報や顧客情報など各種業務データを、データウェアハウス(DWH)で一元管理するものだ。

 これまで同システムは、オンプレミス環境に高性能・大容量のDWHアプライアンス製品を導入して構築していた。しかし製品の保守期間満了を間近に控え、クラウド上に構築する方針に切り替えた。このプロジェクトの実際の設計・開発作業を任されたのが、住友生命の情報子会社であるスミセイ情報システムだった。

 「オンプレミスの場合と比べて、性能面など含め使い勝手を損ねてはならない」「PaaSを取り扱うのは初めて」──そんな課題に挑んだ、担当者たちの成長物語を追った。

photo 左からスミセイ情報システムの上田大智氏、大東正和氏、西垣加奈子氏

(前編)経験・勘に依存しない「データドリブンの会社」に──住友生命の社内で“意識改革”を仕掛ける男たち

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 経験や勘に依存せず、データをより有効に活用し、導き出された知見を基に意思決定を行えるような仕組みを実現していく──住友生命 情報システム部の中川氏、辻本氏らは、そんな構想を描いている。同社がトップダウンで打ち出した「クラウドファースト」という方針も追い風となり、データ活用の基礎となる「情報分析システム」のクラウド移行を進めている段階だ。

 しかしクラウドへ移行するには技術面の課題だけでなく、ビジネス面でも越えなければいけないハードルがあった。


クラウドへの大量データ転送、オンプレ並みの速度で行うには?

photo スミセイ情報システムの西垣加奈子氏(基盤システム第1部 上席エンジニア)

 最初に課せられたミッションは、情報分析システムの次期プラットフォームにふさわしいクラウドサービスを選定すること。よって、複数のクラウドサービスをオンプレミスのアプライアンス製品と共に比較検討することになった。この検討に当たったスミセイ情報システムの西垣加奈子氏(基盤システム第1部 上席エンジニア)は、当時の状況を次のように振り返る。

 「クラウドはオンプレミスと比べて明らかに柔軟性や拡張性に優れており、この点では住友生命の要件を十分満たせるだろうと考えていました。一方、クラウド移行に当たり最も懸念していたのは性能面でした。果たしてクラウドに移行した後も、オンプレミスと同等以上の性能を担保できるのか。この点にフォーカスを絞り、技術検証を行いました」

 クラウドサービスを利用できるか評価するに当たり、最大のポイントとなったのがオンプレミスからクラウドへの大量のデータ転送だった。

 今回クラウド移行の対象となった情報分析システムは、毎日メインフレームの基幹システムから300GBにも及ぶ大量のデータをDWHに取り込んでいる。情報分析システムをクラウド環境に移行した場合、オンプレミスとクラウドの間で毎日300GBのデータ転送を行わなくてはならない。

 「オンプレミス環境内でのデータ転送でさえかなりの時間がかかっていたのに、これをオンプレミスとクラウドの間で行うとなるとさらに時間がかかることが予想されました。そうなると、業務への悪影響も懸念されます」(西垣氏)

 基幹システムから情報分析システムへの最新データの転送は、毎晩のバッチ処理で行われていた。この処理が長引いてしまうと、翌朝の業務開始時間までにDWHのデータ更新を終えることができない。住友生命の営業現場では、毎朝このシステムを使い、前日までの最新データを基にレポートを作成し、それを参考にしてその日の営業計画を立てていた。そのためデータ転送が長引いてしまうと朝一番のレポート作成も遅れてしまい、その後の営業活動全体が遅延してしまう。こうした事態に陥ることだけは、絶対に避けなければならなかった。

 そのためには、オンプレミスとクラウドの間は、高速にデータを転送できる広帯域の専用線で結ぶことが必須だった。Microsoft Azureであれば、専用線サービス「ExpressRoute」の利用が前提となる。ただしそれだけでは、時間内にデータ転送を終えられるかどうかなお不安が残った。

 「何か妙案はないものか……」。皆で知恵を絞る中、日本マイクロソフトの技術者からの提案を受け、起死回生の一案として持ち上がったのがレプリケーションソフトウェア製品「Attunity Replicate」の起用だった。

 このソフトウェアを利用することで、データ容量を大幅に圧縮した上で効率的に転送できることが分かった。早速、スミセイ情報システムと日本マイクロソフト、そしてAttunity Replicateの提供元ベンダーの3社でタッグを組み、入念な検証作業を実施。その結果、当初は困難と思われていたクラウドへの大量データ転送に、何とかめどを立てることができた。

photo システム構成の概念図

「恐怖心があった」 PaaSへの初チャレンジ

photo スミセイ情報システムの大東正和氏(基盤システム第1部 上席エンジニア)

 この最大の難関を突破した後も、ハードルは幾つも待ち構えていた。例えば、データベースシステムの違いもその1つだった。もともとオンプレミスで運用していたデータベースはPostgreSQLベースのものだったが、Microsoft Azureのクラウド環境ではPaaSのデータベースサービス「Azure Synapse Analytics」に切り替えることになる。

 スミセイ情報システムの大東正和氏(基盤システム第1部 上席エンジニア)によると、そのための検証やSQLチューニングにある程度の手間が掛かったという。

 大東氏は「PostgreSQLもAzure Synapse Analyticsも同じリレーショナルデータベースですから、大きな違いはありません。しかし100%の互換性があるわけではないので、仕様のギャップを埋めるためにSQLを修正したり、性能要件を満たすためにSQLをチューニングする必要がありました」と話す。これに対し、日本マイクロソフトの技術支援サービスを活用することで、着実にチューニングを進められたという。

 苦労はそれだけではない。大東氏によれば、最大の苦労は「細かな技術仕様面の違い」よりも、むしろオンプレミスとクラウドの「根本的な考え方の違い」を理解するところにあったという。

 「私たちも住友生命のクラウドファーストの意義を十分に理解しているつもりでしたが、それでもこれまで長年に渡りオンプレミスでシステムを構築・運用してきたため、クラウドの知見やノウハウがまだまだ不足しています。そのため日本マイクロソフトに教えを請いながら、オンプレ文化からクラウド文化へのマインドシフトを少しずつ進めました」

 これまで住友生命やスミセイ情報システムは、IaaS上にサーバ環境を構築したり、Office 365をはじめとするSaaSアプリケーションを利用した経験はあった。しかし今回のクラウド移行では、Azure Synapse Analyticsをはじめとする各種PaaSを利用する。この「PaaSへの初チャレンジ」が、さまざまな戸惑いを生んだという。大東氏は「恐怖心がありました」と振り返る。

 西垣氏も「IaaS環境ではオンプレミスとかなり近い形できめ細かく運用できるのですが、PaaSでは運用の大部分をサービス側に委ねるため、PaaS環境に適した運用を新たに設計し直す必要があります。これを行うにはPaaSの仕様を正確に理解する必要があるため、当初はかなり手間が掛かりました」と話す。

photo 日本マイクロソフトの中川一馬氏(デジタルトランスフォーメーション事業本部 エンタープライズクラウドアーキテクト統括本部 クラウドアーキテクト第三技術本部 クラウドソリューションアーキテクト)

 ここで救いの手を差し伸べたのが、日本マイクロソフトの技術陣だった。実際に検証作業の支援に当たった、日本マイクロソフトの中川一馬氏(デジタルトランスフォーメーション事業本部)は、次のように述べる。

 「オンプレミスからクラウドへ移行するに当たり、多くのお客さまがPaaSの理解で苦労されます。この壁を乗り越えるために最も適した方法は、とにかく実際にPaaSに触れていただき、その価値を肌で感じていただく方法です。日本マイクロソフトからはさまざまなマニュアル類を提供していますが、マニュアルは既にある程度理解している人向けの内容が中心なので、最初の一歩を踏み出してもらうためには、やはり私たち(日本マイクロソフト)が直接向き合ってサポートする必要があります」

 今回のプロジェクトでも、実際に中川氏をはじめ、日本マイクロソフトの技術陣がスミセイ情報システムのプロジェクトメンバーに寄り添い、二人三脚でPaaSへの理解を深めていった結果、最終的にはオンプレミスからクラウドへのマインドシフトをスムーズに進められたという。

クラウドなら「負荷テストに掛かるプレッシャーも軽い」

photo スミセイ情報システムの上田大智氏(基盤システム第1部)

 こうして日本マイクロソフトの手厚いサポートの下、Microsoft Azureの検証作業を進めていった結果、住友生命とスミセイ情報システムは最終的に、情報分析システムの移行先クラウドサービスとしてMicrosoft Azureを正式に採用することにした。

 その後も日本マイクロソフトの支援を受けながら本番開発を進め、現時点では既にカットオーバー目前のところまでたどり着いている。後は最終的な負荷テストを行うだけの段階まで来ているが、スミセイ情報システムの上田大智氏(基盤システム第1部)は「まだまだ油断はできない」と気を引き締める。

 「やはり、オンプレミスとクラウドの間のデータ転送路であるExpressRouteに掛かる通信負荷は、慎重に検証する必要があると考えています」

 一方、クラウドならではのメリットも感じているという。「オンプレミスの場合はもし負荷テストの結果が思わしくないと、最悪の場合はハードウェア構成を根本から見直さなければいけないのですが、クラウドならリソースを増強するだけで対応できます。そのため、負荷テスト作業に掛かる心理的なプレッシャーもオンプレミスと比べればかなり軽いです」

 いよいよ大詰めを迎えている本プロジェクトだが、無事完遂できた暁には住友生命のクラウドファースト戦略、ひいてはその先にあるDX戦略にも大きな弾みがつくだけに、プロジェクトメンバーが背負うプレッシャーも大きい。しかし大東氏は、「だからこそチャレンジしがいがあります」と意気込みを語る。

 「今回のプロジェクトは『大量データをクラウド越しに転送する』という技術的なチャレンジとともに、ビジネス面でも『クラウドシフトによりDXを加速させる』という重大なミッションを負っています。私たち技術陣も、こうしたビジネス面の意義や価値を十分に理解した上で、本番まで残り少ない期間を全力で駆け抜けたいです」

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2020年2月10日