G-SHOCK「フロッグマン」、初のアナログモデルがいま登場した理由

ダイバーなど海のプロフェッショナルが支持するG-SHOCK「FROGMAN」(フロッグマン)。27年の歴史の中で初めてのアナログモデル「GWF-A1000」が登場した。

» 2020年06月26日 10時00分 公開
[山本敦PR/ITmedia]
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 カシオ計算機の耐衝撃ウォッチ「G-SHOCK」の中でも防水性能に優れ、ダイバーなど海のプロフェッショナルにも支持されている「FROGMAN」(フロッグマン)にアナログモデル「GWF-A1000」が登場した。27年の歴史でアナログ表示は初だ。背景には複数の技術的ブレークスルーがあった。

FROGMAN初のアナログモデル「GWF-A1000」。価格は9万円(税別)

 FROGMANは、G-SHOCKの中でもプロフェッショナル用途を想定した「MASTER OF G」シリーズのダイバーズウォッチ。1993年の初代機発売以来、チタン外装の採用やソーラー発電機能の追加など進化を続けてきたが、アナログモデルは存在しなかった。

 商品企画の牛山氏によると、時計にはアナログ表示とデジタル表示それぞれのニーズが必ず存在するという。「アナログ表示のメリットは視認性の高さ。潜水時間なども感覚的に把握できます。2018年に海上保安庁とコラボしたときもアナログがほしいという話はありました」

取材はビデオ会議で行った。上段左からアプリ開発を担当した東別府聡氏、商品企画の牛山和人氏、下段左からモジュール開発の及川宗飛氏、モジュール企画の黒羽晃洋氏

  FROGMANにアナログモデルがなかった理由の一つは、G-SHOCKのコンセプトである耐衝撃性を維持しながらダイバーが求める性能や機能を網羅することが難しかったことだ。しかし2019年に実用化した「カーボンコアガード構造」が状況を変えた。

新素材と新構造でデジタルモデルより軽量に

 GWF-A1000では、ケースと裏ぶたを一体化した「カーボンモノコックケース」を採用している。カーボン繊維を練り込んだ強化プラスチックによる器型のケースは吸水率が低く加水分解を起こしにくい。ダイバーズウォッチに高い防水性能と耐久性、そして軽さを与えられる素材だ。結果としてGWF-A1000はデジタル表示モデルの「GWF-D1000」(141g)より軽い約119gとなった。

 気密性を確保するため、ケースと風防ガラスの間にガラスを圧入したメタルリングを挟み、6本のビスで固定した。この構造は船の窓や潜水艦のハッチに着想を得たもの。操作ボタンのシャフトにも素材が異なる3つのガスケット(パッキン)を装着して水の浸入を防ぐ。

FROGMANシリーズを象徴するカエルのキャラクター。今回はシリーズ史上初のアナログモデルということで、カエルが時計の針を抱えている。よく見ると目玉はフロントビスと同じ形をしている

 もう一つ、アナログモデルがなかった大きな理由が、潜水時間を計測する機能が作りにくいことだった。ダイバーズウォッチをうたうアナログ腕時計の中には、「回転ベゼル」を備えたものがある。潜水前にベゼルを回転させ、目印を分針の位置に合わせておくと、潜水中でも分針と目印の位置で経過時間が分かる。

 しかし、G-SHOCKの場合は衝撃に弱い可動部は作れない。潜水時間を計測する新しい仕組みを検討する必要があった。

ベゼルではなく針を動かす「ダイブモード」

 モジュール(時計のコアになる駆動制御部)の企画を担当する黒羽氏によると、モジュールとソフトウェアの設計チームがアイデアを出し合い、考案したのが新しい潜水時間計測機能「ダイブモード」だという。

 ダイブモードはベゼルではなく針を動かす。左下のボタンを2秒間長押しすると起動し、まず時針と分針が素早く動いて0時のポジションで重なり合う。右下のボタンを押すと時分針が1本の針として経過時間を刻み始める。時計全体が潜水時間のタイマーになるイメージだ。さらに普段はワールドタイムを表示しているインダイアル(8時方向にある小さな時計)は現在時刻表示に切り替わる。

ボタン操作でダイブモードにスイッチすると、時針と分針が素早く0時のポジションに移動。2つの針が一体になって動く。針には暗い水中でも見やすいように蓄光処理を施した

 針のみで多数の情報を表示するダイブモードにおいて、スムーズで高速な針の動作を実現するため、時針と分針、8時側のインダイアルの針はそれぞれ2つのコイルを持つデュアルコイルモーターで動かすことにした。「1つの時計に3つのデュアルコイルモーターを使用するのはカシオとしても初めて。これまでのアナログ時計に比べ、運針速度は最大約2.8倍になりました」

 複数のモーターを高速かつ精確に制御するため、GWF-A1000には新しいカスタムLSIを採用した。「消費電力も抑えながら、運針にかかわるデバイスの実力を最高に発揮するためには、できる限りプログラムの計算量を減らさなければいけませんでした」。

時計とスマホはBLE常時接続に

 「スマートフォンリンク」もGWF-A1000の新しい機能だ。例えばタイムゾーンを越えて目的のダイビングスポットに向かう際、空港に降り立ったら時計が自動的にスマートフォンと連携し、現地時刻に修正する。ユーザーは操作する必要がなく、タイムラグもない。

 従来のモデルも自動でスマートフォンと接続するが、1日に4回、6時間ごとの決まったタイミングだ。そのため任意のタイミングで時刻を合わせる場合は、ボタン操作による手動での時刻合わせを推奨していた。GWF-A1000はより消費電力の少ないBluetooth Low Energyのシステムを採用することでスマートフォンと常時接続できるようになり、スマホ側の時刻が修正されると時計の表示もすぐに切り替わる。

 ソフトウェア設計を担当した及川氏によると、常時接続を可能にするために通信モジュールのサイズを小型化し、さらに消費電力を従来の約63%にまで減らしたという。ISO規格に準拠するダイバーズウォッチは必ずJIS1種の耐磁性能(磁気に5cmまで近づけてもほとんどの場合で性能を維持できるレベル)が求められるが、GWF-A1000は5つのモーターを搭載しながらプレート(耐磁板)の配置を工夫して優れた耐磁性能と通信感度を実現している。これも開発陣のこだわりの一つだ。

ダイビングを記録する「G-SHOCK Connected」アプリ

 ワールドタイムやアラームにタイマーなど各種機能設定は、スマホの「G-SHOCK Connected」アプリを直感的に操作できる。アプリ開発を担当した東別府氏は、「新しいFROGMANはアナログ表示の腕時計なので、スマホからでも簡単に操作できるようにしたいと考えました。そのためにアプリのユーザーインタフェースを分かりやすく、繰り返し使いたくなるスタイリッシュなデザインを目指しました」という。ユーザーが旅先でも操作方法がすぐに調べられるように「ガイド」メニューもていねいに作り込んだ。「UIデザインチームに、FROGMANの世界観に相応しい、深海に挑んでいく様を背景やアニメーションで表現にこだわって作りこんでもらいました」。

 ダイビングモードにスイッチした時刻や場所といったログ情報は時計内部のメモリに一時的に記録され、スマホに接続した時にデータ転送を行う。アプリの「ダイビングログ」メニューでは、時系列に沿って潜水の様子を記録。風の強さや波の様子、水温の状態、装備の内容など、ダイビングログブックのように詳細なメモを残せる点も特徴だ。

コンパニオンアプリ「G-SHOCK Connected」(iOS/Android)のホーム表示画面

アナログ表示も「FROGMAN」

 GWF-A1000を手に取り、「アナログ表示を求める声にようやく応えることができました」と話す牛山氏。「これからは『FROGMANにはデジタルとアナログ、両方あります』と胸を張れます」という。

 ただ、G-SHOCKファンの中には違和感を覚えた人もいるかもしれない。実はG-SHOCKのMASTER OF Gシリーズには、デジタル表示の時計は名称の末尾を「MAN」、アナログ表示の時計は「MASTER」でそろえるネーミングルールがある。例えば“陸G”のデジタルは「MUDMAN」、アナログは「MUDMASTER」。GWF-A1000は「FROGMASTER」になるはずの製品だった。

 「名称についてはカシオ社内でも議論を繰り返した」という牛山氏。「米軍潜水士の愛称に由来するFROGMANは、長年にわたって大勢のファンに愛されてきた名称です。それを大事にしたい。そう考えてアナログ表示でもあえてFROGMANという名称にしました」

 あくまでもユーザー目線で生み出された初のアナログFROGMANは、ファンの目にどう映るだろうか。

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提供:カシオ計算機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2020年7月25日

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