企業は日々ビジネスを続ける中で膨大なデータを生み出している。商品の売れ行きや営業状況、顧客の情報などはもちろん、今ではセンサーや監視カメラなどのIoT機器からも多種多様なデータを取得できる。
現在ではDX(デジタルトランスフォーメーション)に注力する企業も増え、そのようなデータをビジネスに活用する事例も増えている。営業データを分析して売り上げ向上につなげる、工場のデータを製品の品質改善に使う、顧客データを基に商品開発するなど使い方はさまざまだ。コスト削減や業務効率化を狙うこともできる。
データ活用はビジネスの付加価値向上につながる施策の一つだが、それを阻む“壁”もある。活用したいデータが複数の部署や異なるシステムにバラバラに置かれてしまい、自社の内部に眠る“金脈”をビジネスに生かしきれないという悩みを持つ企業は多い。
NTTデータ先端技術もそのうちの一つだ。レガシーシステムにデータが分散してしまっている、データ分析を手作業でするしかないといった課題を抱え、分析業務に多くの手間と時間を取られていた。
そこで同社は、Microsoftのデータ分析プラットフォーム「Azure Synapse Analytics」とデータ可視化ツールの「Power BI」でデータ分析基盤を構築。活用が進んでいなかった各種データを一気通貫で可視化・分析する環境を構築した。
これにより、データを1カ所に集められた上、丸1日掛けていたデータ分析を数十分ほどできるようになるなど、大幅な業務効率改善が実現できた。
NTTデータ先端技術は効率的な営業活動や経営判断をするために、過去の営業データなどの分析をしていた。しかし、以前はデータ分析自体が担当者にとって大きな業務負担になっていた上、作業が属人化し、安定した分析をスピーディーに行うことができなかった。
そこで同社はクラウド型のデータ分析基盤を整備。短時間で詳細な分析結果を導けるようになり、分析担当者の負担軽減に加え、的確な営業活動が可能になった。
NTTデータ先端技術の煤田弘法氏(プラットフォーム事業部)は以前のデータ分析体制について「データを分析しようにも、20年近く受け継がれてきたレガシーシステムにデータが分散しています。それぞれが独自開発のシステムでデータ連携機能もなく、システムごとにデータを取得して回らないと分析が始められませんでした」と顔を曇らせる。
プラットフォーム事業部で実際にデータを取り扱う加藤迪子氏は「よく使うデータだけでも3万件以上、しかも1件につき400もの項目が含まれます。その中から必要なデータを探し回って集め、Excelを使って手作業で分析していました」と、システム導入前の非効率さを嘆く。
分析の方法論も担当者の属人的な勘に頼っている状態だったと明かす。誰でもデータ分析ができるという状態では到底なく、人によってもデータの捉え方が違うという問題にもつながっていた。
プラットフォーム事業部は情報システム部門にその惨状を訴え、データ分析基盤の整備を依頼したが、対応はなかなか進まなかった。
「会社が急成長しているため、人員増や組織改編に伴う全社的なシステム改変の対応に追われ、われわれが依頼するような小さな案件は後回しになっていました」──そう話すのはプラットフォーム事業部長の高岡将氏だ。結局、独自にAzure Synapse Analyticsを導入し、自力でデータ分析基盤を構築することになった。
そこで同事業部は、以前から交流があった日本マイクロソフトにデータ分析基盤について相談を持ちかけ、今回の導入が決まった。2021年の初頭のことだ。その後3月末までにシステムの構築を済ませ、4月から検証運用に入った。
今回のシステムの概要は次の通り。まず、さまざまなツールからデータを抽出して加工するデータ統合サービスのAzure Data Factoryに、顧客管理ツールや社内のレガシーシステムから必要なデータを集める。データの重複や表記揺れ、ノイズなどをAzure Data Factoryの機能で排除。ユーザーはAzure Synapse AnalyticsやPower BIを通してデータ分析を行う。
分散していたデータを1カ所に集めて活用できるようにし、Power BIで分析結果を見やすくする構成だ。
プラットフォーム事業部がAzure Synapse Analyticsを選んだのは、同製品に散在するデータを一つにまとめる機能「Azure Data Factory」があるからだ。
「コネクターの種別が他社比較で飛び抜けてそろっている点が気に入りました」(煤田氏)
データを集約するAzure Data Factoryには、Microsoft 365はもちろん、他社製IaaSやSaaS、顧客管理ツール、基幹業務システムなどからデータを取得するための「コネクター」が90種類以上ある。多くのツールから少ない手間でコストを掛けずにデータを集められるのがAzure Data Factoryの武器といえる。
プラットフォーム事業部は今後もデータ分析基盤を強化していく予定で、他社製IaaS上に展開している別のシステムやオンプレミスサーバに保存したデータとの連携を考えている。コネクターが多ければそのような拡張にも素早く対応できる。
実際、導入後の運用について煤田氏は、その使い勝手の良さに自らの選択の正しさを実感したそうだ。
「Azure Data Factoryにデータを集める際、各種ツールと連携させるにはどうしてもコーディングが必要だろうと思っていました。しかし、実際にはノーコードで設計できました。操作画面上に表示されるパーツをドラッグアンドドロップするだけで連携作業が終わって驚きました」(煤田氏)
Azure Data Factoryには、基礎的なデータ連携をノーコードで設定できる機能がある。煤田氏は「データベースの知識はありますが、データの抽出や加工については新たに学ぶ必要があると考えていたため、学習のコストと時間を最小限に抑えられて驚きました」と話す。
Azureのツールを選んだのには他にも理由がある。決定打はMicrosoftの製品であるという点だった。
NTTデータ先端技術ではさまざまな場面でMicrosoft製のツールを使っている。データ分析基盤のユーザーにとって、使い慣れたMicrosoftファミリーの製品であることの定性的なメリットは無視できないレベルだという。
開発者目線でもMicrosoft製品なら既存のシステムと連携させやすいという強みもある。
煤田氏は「データ分析基盤を構築する際には導入時に取り組まなければならない各種の技術要件があります。Microsoft製品なら導入済みのシステムとの親和性も高く、新たに定義しないで進められる部分も多い。アクセス権限の設定についても余計な作業が不要です」と話す。
分析基盤の導入効果は絶大だ。「Excelの手作業で、丸1日を要していた案件がAzureツールの導入で瞬時に結果を出せるようになりました。生産性の向上効果は計り知れません」(加藤氏)と手放しで喜ぶ。
NTTデータ先端技術では、経営陣などからの要請を受けて必要なデータを集めて分析し、結果を伝えることがある。しかしこれまでは手作業でデータの収集と整理、分析を行っていたため時間も手間もかかってしまう上、スピード感のある経営判断が難しくなるデメリットもあった。データ分析基盤の整備で分析にかかる時間を短くできれば、素早い意思決定につながる可能性がある。手作業時代では考えられない、精緻な分析が可能な点も評価している。
属人化を防ぐことで、データ分析のノウハウがない人でも勘に頼らない明確な分析ができるようになったこともメリットだ。例えば、過去のデータを分析して得られた結果を基に効果的な営業活動につなげることもできる。
現在は、一週間に一回の頻度で社内の各種データを抽出しているというが、将来的にはリアルタイムに抽出することで分析精度を上げていきたいという。
また「今後は現場でベストな形の分析やレポートを作成できるよう、セルフBIの仕組みも提供したい」(煤田氏)と、さらなる意気込み聞かせてくれた。
日々生まれるデータは今後の営業活動や製品開発などに役立つ宝になる。それを活用できない状態のまま放置するのはまさに宝の持ち腐れだ。プラットフォーム事業部がやったのは、散らばったデータを1カ所にまとめて分析できるツールを用意したというシンプルな基盤整備だが、それが現場の業務負担軽減だけでなく、データから営業や経営陣の判断に役立つ情報を導き出す力になった。これを見れば、データを活用する意義も一目瞭然だろう。
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